【R18】二回目の異世界では見た目で勇者判定くらいました。ところで私は女です。親友がTS転移でイケメンチートのサイコパスになってた話。

吉瀬

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新しい生活スタイル √

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 原石と判断されたと言うわけで、私は養子になる事になったらしい。義父母はそこそこに強い権力を持つ貴族だそうで、すでに何名もの原石、帰還人を養子にしているらしい。

 らしい、らしい、としか言えないのは、実際には会ってもいないからだ。義父母の実子は娘一人で魔力が低く、次の子供も望めない。そういう例は多く無く、結局養子を受け入れる家は限られている。その養子の中で出来の良い者に家督が譲られる訳だが、私の義兄達は優秀で、実際にすでに家に対して権限ある。

 私の義理の兄弟をさらっと紹介すると、

 長兄リオネット、白魔道士であり全魔法最高顧問。二十一歳成人済み。
 次兄アッサム、最年少剣豪取得者、現在の勇者格付一位。十九歳でこちらの世界では成人済み。

 そういう事です。

 私が養子に入ったマンチェスター家の自治領は王都より幾分か離れており、義父母は自治領で魔力の低い義妹と穏やかに過ごされているそうで、王都内の屋敷にて政治的な事を含めた全ては義兄様達がされてる、と。

 やりたい放題な義兄様達は書類上のやり取りで私を義理の弟にしてしまいました。
 私に実感はほぼ無くて、右耳に金の様な埋め込み型のピアスを付けられた程度。これでお貴族様の仲間入りだそうだ。

「屋敷の者には箝口令を敷いてありますので、そこまで気になさらなくて結構です。しかし、対外的にはそうは参りませんから、人目のある場所での服装等は制限させていただきます」

 そう言いながら通された私の自室は、華美でなく、しかし丁寧に作られたであろう白木の家具に、ふかふかベッド。屋敷がロココ調に近いのに、自室はアースカラーでまとめられていて私の心を鷲掴み。

 こ、こんなので釣られたりしない!

 衣装部屋の服も中性的で動きやすく、かつ緩すぎない衣装や、勇者として必要となる衣装も私の体型を隠しつつ軽くて実用性もある物ばかり。

 ぐいぐい心が揺れてるのは気のせいだ!

「こちらの部屋にある物はこちらの部屋のみでご使用ください」

 自室から繋がる小部屋には、もふもふのぬいぐるみ達と大量の絵本……。

 なんでこの人、私の隠れた趣味まで知ってんのー?!

 「本日はおくつろぎくださいね」の言葉と微笑みと共にリオネット様は去って行った。恐るべし。
 もふもふぬいぐるみ達と素敵挿絵の入った絵本に囲まれて、頬が緩む私はちょろいかもと少し自分を軽蔑した。

 翻訳機能のおかげか、絵本は読む事ができる。童話かと思ったがどちらかと言うと神話や歴史物語、図鑑や教育に関する物らしく意外と実用的。召喚についての本もある。割とありがたい。

 兄様を止めるのが目的というのは嘘では無いけど、有希がこの世界にいるなら有希も探したい。前回来た時、兄様は多分見つからないだろうと言っていた。この本によると私が1回目に飛ばされた頃に召喚は行われていない。召喚された異世界人としてカウントされてないなら、有希もこの世界のどこかに落ちて来ていたはずだ。
 前回は兄様の意向で森からは出る事も許されなかったけど、今回は探せるかもしれない。かと言って派手には探せない。女性の異世界人って分かったら聖女とやらにさせられかねない。

 とりあえず、この状況を利用して、早く独り立ちしなくては。
 決意も新たに他の絵本もめくる。以前こちらに飛ばされた時に学んだ魔法の知識の復習にもなったが、試し打ちはやめておこう。コントロールが以前と同じだけできる保証は無く、勇者見習いの修行っぽい事もするはずなので、急ぎすぎるのも良くない。

 地図を見ると大森林までは歩きで数日はかかりそうだった。道も平坦では無いだろうし、やはり今は義兄様達に従うのが良策。

 私付きのメイドさんは何人かいて、うち一人ファイという人にこちらの生活面のお世話をしてもらう事になった。
 もちろん、ファイさんは私の性別もご存知である。

 食事は基本的に食堂で、義兄様達と摂るがお仕事で不在の事も多いのだとか。

「その内食事会等もございますので、テーブルマナー等も身につけてまいりましょう」

 と壁に計画表が貼り付けられて、私はもふもふ部屋に逃げ込みたくなった。みっちりの日は少ないけど、毎日何かしらのお勉強がある……。

 翌日。

 朝からアッサム様がご登場。

「お、ちゃんと支度すんでんだな。結構結構」

 朝食前に連れてこられた場所で素振り百。先ずは変なクセがつかない様に形を叩き込むそうです。初日十回より後は手が上がらない。

 朝ごはんの後はリオネット様に渡された本を読み、午後から魔法の実習。夕方素振りで、夕食後に武術の座学。ぐるっと回って一日が終了。

「魔法能力はまずまず。召喚されただけあって、コントロール能力も良さそうですね。ただ、やはり加護が勇者用ですので、黒魔道士としてパーティーに入るのは難しいでしょう。マルチ的な能力を磨いて、記録係あたりを目指しますか」

 今日の成績をまとめたノートを閉じながら、リオネット様はこう評価した。

「とりあえず、勇者の格付を決める試合で他の奴らにボコられない程度には強くならねーと。俺が当たる時は上手く転がしてやるが、他の奴らは本気だ。勇者候補叩きのめしたいだけの阿呆もいるし」

 アッサム様も何か書き付けている。

 というか、結構ハードなんですけど。いろんな筋肉プルプルなんですけど。

「あの、この生活はいつまで……?」

「聖女の召喚のマナが貯まるのは空気中のマナの濃度に依存しますので、いつとは申し上げられません。ただ、くだんの格付を決める試合は三ヶ月後にあります。当面は二位を目標にプログラムを組みましょう」
「だな」

 マナー予定表の横に貼られた更なる予定表。義兄様達の予定がある日にマナー講座が上手く詰め込まれている。左右の表を見ると休憩を示す隙間同士は見事なシンデレラフィット。

 わぁ、お休みナッシング。思わず引きつる私にリオネット様は言った。

「素敵な笑顔です。流石カリン」

 これ笑顔じゃないです。
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