同級生の異世界転移に巻き込まれた直後に前世を思い出した結果、乙女ゲームの世界だと判明しました

80-2 謎解きの前2

おっと、きゅんきゅんしてる場合じゃない。
「えっと、それで私が今話した推測の話ですけれど、いかが思われましたか？」
「そうですね。こちらの方が私には自然だと思いますし、キュラス様の欲しかった答えに近いと思います。」

そう。正しいかどうかなんて分からない。すでに退場した人達には聞けない。けれど、人々の証言を纏めるとそうなるし、それは皆が求めてる答えでもある。しかし、甘言を囁くなんて、なんて精霊らしい。

まったくこんなんで凹んでてどうする、私。もうすぐ一つ目のパンドラの箱を開けるのに。

翌日は手紙を一通出した。それからディナさんを連れて神殿に行った。昨日のアレがあったから、私達がやってた事を直接見てもらいたいってのもあるけど、実験についても生粋の闇の国の人も一人は知っておくべきだと思っていた。可否はともかく今日は実験の結果は出ていると思う。ソフィさんは部屋でお留守番だ。部屋には結界が張ってあるし、ディナさんから与えられた特別訓練メニューをこなしているはず。

で、結果たった1日でエーレクトロン実験は成功を収めていた。
「お肉が傷む前にキュラス様にまとめて報告しようかな。」
魔法をかけちゃうと実験に影響が出そうだから、検体には間接的だが冷気を当ててはいる。しかし何日も持つものではない。
「私の名でキュラス様をお呼びしましょうか？」
「うん、頼んでいい？王妃様の部屋の件とあの日の件両方目処が立ちましたって伝えて欲しいの。」
「承知致しました。直接私が参れば、程なくしてこちらにいらっしゃるでしょう。我が君はこちらでお待ちください。」

そう言ってすぐに向かうカナトの背中に声をかける。
「私がしようとしている事、何も聞かないけどカナトは本当に良いと思ってるの？」
光の国を護る次期神官としてでも、ただのカナトとしてでも、何も感じない訳無い。

振り向いたカナトはそのまま跪いた。
「御心のままに。」
「…行っていいよ。」
女心が分からん奴だ。せめて、報告するのは気が重いなーっていう気持ちを汲んで共感してくれれば、今日から君もモテモテテルラ様になれるのに。まぁ、止められても止まらないんですけど。
ちっと思って振り返ったら、ディナさんがあんぐり口を開けていた。

「え、えいこ様……カナト様と一体何が……？」

　説明！説明また忘れてた！この実験の説明しかしてなかった！


そして、やって来ました。キュラス、ヒノト、ゾイ将軍にアニーさんまで。
「僕以外にも、あの日のことに思う事がある人もいたから。」
キュラスはにっこり笑ってそう言うけど、私の話聞く前に連れてくるとか冒険だな。それとも、私に対してのプレッシャーかしら？
「これは？」
ゾイ将軍は模型に驚いているし、アニーさんは安定の無反応。ヒノトは怒ってる。
「兄上！このような神聖な場所でなんと言うことを！」
絶えぬ一族からすれば当然な反応ですね。お大事な神殿に謎の箱物しかもデカイ。一方、そのお兄さんは極めて冷たい反応です。
「神殿の実質権限は既に私が受けている。口は慎め。」
いつもとキャラ違う。怖いよー。いや、こっちが普通か。
「この模型は後ほどお話致しますが、先ずはベッドの上の白い袋を感知していただけますか？」
四人は一様に怪訝な顔になった。ん？感知してくれたか分からん。
「光と闇の結晶？一つの袋に入れて置くと、両方中和されちゃうよ？」
キュラスの言葉とみんなの反応から、感知してもらえた事が分かった。
「後ほどご説明いたしますが、光と闇の各々の強さを覚えておいて下さい。」

そして私は四人に向かって話をする。
「今から私がお話する事には何も証拠がありません。そして、あの日確かにクリウス様とドラン様が亡くなられた事も変わることはありません。けれど、あの日の記録には明らかにおかしな所があります。それに説明をつけることができます。ただそれだけのために、隠されていた事が暴かれる事にもなっても、よろしいですか？」
キャラスとヒノトの頷きは軽く、ゾイ将軍とアニーさんの頷きは微かだが重かった。