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80-1 謎解きの前1

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聞くことは全て聞いたし、私の中であの日の出来事の納得できそうなストーリーも出来上がった事だし、と退席しようとして振り返り、壁に貼ってある首都の地図を見て固まった。

「将軍、これ、は?」

「これ?ああ、遺跡の調査地図だ。発掘で判明した物をまとめてあるのだが、何か?」
「あちこちに、マークが、ありますね。魔法文字とは違う。」
「ああ、何のシンボルか知らないが、おそらくこの全てで保護魔法になると考えられている。この首都は以前世界が滅んでなお建物のいくつかが残っておった場所だからな。それで、遺跡の修復も進められておる。皮肉な事だが、王妃の間はこのモチーフをそのまま床に写して加護を願っているらしい。何か知っておるのか?」
「私がいた世界で見たことのあるマークだったので、つい驚いてしまいました。」

私は彼には、にぱっと笑ってみせた。

その日の夜、ソフィーさんが寝た後ディナさんに初めて事件についてキュラスから依頼されている事を伝えた。
それまでは単に関係者を調べるようにとしか言ってなかった。先入観無く調べて欲しかったのと、先入観無く私の推測を聞いてくれる人がいて欲しかったからだ。証拠が見つからないのは予想の範囲だったし。

私の推測の話を聞いたディナさんは涙目になった。確かに悲劇だとは思うけれど。
「よかった、です。」
んん?
「えいこ様が何かされているのは存じておりましたし、極秘の任務もなされると判ってはおりましたが、ぽっと出のカナト様達と何かなされているのを見聞きするのは、やはり少し寂しくて。」

恐らくカナトにとって生まれて初めての評価、ぽっと出。

「ええ?!そうだったんですね。ごめんなさい。ちゃんと始めにお話しすれば良かったですね。この依頼は証拠が見つからない可能性が高かったので、先入観無く判断する目が欲しかったんです。ディナさんなら信頼できるし、もしおかしな所があれば指摘してもらえるからって。ディナさんはいつも私の抜けをフォローしてくださるから、つい甘えていたみたいです。」

「そんな、私なんて…」

「私、何かに集中していると周りがちゃんと見えてない事多いんですよ。いつもフォローしてもらってから、ああすれば良かったなって思っています。でもきっとまだ気づいていない事もあるんでしょうけど。」

「えいこ様…」

「ディナさん、いつもありがとうございます。いつも心配かけてすみません。優しく見守ってくださってるディナさんを頼ってばかりですが、もうしばらく甘えさせてください。」

本当は『嫌な事は嫌と言ってください』とか言いたいけれど、彼女が見ないフリをしてくれるから助かる事が正直多い。だから、今は格好良さに構ってられない。
私の黒い考え方と対照的に、ディナさんは少し頬を赤らめて涙目のまま頷いた。

マリアンヌ!清らか!可憐!マリちゃんと方向が違う可愛さだ!うひょー!

「本当にディナさんは可愛いらしいですね。」
本心を20分の1位薄めて伝えた。いや、だって頬染めあって無言で向かい合うのも変だし。

「え、あの、私は今魔法で姿を変えておりますしっ!」
「でも、筋肉落としたらその姿なんでしょう?私はいつものディナさんも好きですけど、見た目の可愛らしさより主命のための機能美を選ぶっていうのは、それはそれで美しいですね。」

ディナさんが真っ赤になって押し黙った。あれ?百合フラグった?なんで?ウランさんから何か飛ばされてる?
親しくない間での発言ならキモい、仲良し女子の間じゃ軽口だと思うんだけど、こちらではアウトなの?それとも丁寧語のせいかしら?

「あ、ありがとうございます。」

真っ赤になって答えたディナさんを見て、何となく理由が分かった。容姿褒められ慣れてない&シャルさん以外の女友達のやりとりに慣れてないんだ。つまり、単純に、照れてる。やっぱり可愛い!謙遜されるより、照れながらお礼っていいね!
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