上 下
112 / 192

76-2 β版ですけどね

しおりを挟む
「ゾイ将軍。少し宜しいですか?」
「おお、えいこ殿!」

将軍は私が呼び止めたのに、一方的にまくし立てた。曰く、ディナさんにぴったりの誠実イケメンを紹介したのに取りつく島もない。このままではディナさんが不幸になってしまう云々。
「将軍。手紙、ご覧になっているのですね?検閲のために目を通されるのは結構ですが、それを話題に出される事はおやめください。本来は貴方が知るところの事ではありません。」
ピシャッと冷たく言うと、ええ歳の男がもごもごと言い訳した。
「いや、しかし、えいこ殿も手紙を読んでおられるのであろう?でしたら、あのような、、」
「私は見ていません。」
「え?」
「初めは目を通しておりましたが、内容が個人的かつディナさんも書いてはいけない事を充分弁えてると分かりましたので読んでいません。」
嘘です。本当は読んでます。でも、シャルさんとの手紙は読んでません。
「そう、なのですな。。」
ちょっと小さくなったゾイ将軍に本題を誘導する。
「私は読んでいませんが、将軍はディナさんの事を心配されて良かれと思ってされてるんですよね?私としてもディナさんが不幸せなのは本望ではありません。けれど、手紙の内容を知っている素ぶりはなさらないようお願いいたします。」
「いや、儂も一応『ディナ殿に憧れを抱いておる者がいるのだが』としたぞ。嘘でも無いしな。」
くだけると一人称は儂らしい。
「それでしたら難しいでしょう。ディナさんよりお強い方でディナさんと歳近い方はいらっしゃないと思うのですが。」
だってディナさん、ウランさんより年上だし。聖人って寿命100位?ただの人間よりは長かったけど、相手は傘寿超えじゃなかろう。
「確かに若輩者であるし、本来のディナ殿には遠く及ばぬ者ばかり、か。うむぅ。やはり漢は強くなければ?」
「彼女より何か自信を持っていられるものが無いのに、卑屈にならず横に並べるほど図太い神経の方なのですか?因みに礼儀作法に家事全て完璧、加えてあの容姿、ついでに頭脳も明晰ですよ?彼女。」
時々天然マシマシになるけど。

ゾイ将軍の顔に困った、と書いてあった。そこでおもむろに大地君からの書類を取り出す。
「宜しければ、こちらをお使いください。」
あの日サタナさんから渡された、大地君がまとめたタイプ別能力強化法β版だ。
「これは、もしやあちらの国での、、、訓練法?」
ゾイ将軍が白くなったり赤くなったりしている。どやされる前に説明だ。
「これはあちらの国で使われている最新の魔力の訓練法ですが、こちらでも使っていただくよう預かってきたものです。信頼の置けそうな方に、と。」
「そんな、このようなものは手順を踏んで正式にお受けすべきもので、このように扱って良いはずがありませんぞ!」
「特使を派遣して、正式にお渡しするまでにも手順が必要です!けれど、世界に力が満ちて魔獣聖獣が牙を剥くまで時間がありません。これはあちらで最適化された訓練法です。こちらでも通用するかは分からない。それに、コレ自体が罠の可能性も精査してからでないと使えないでしょう?闇の国の王は、だから信頼できる相手にと言われました。将軍なら判断する事も、実行する事も出来ませんか?」
光の国の軍のトップは国家機密級であるこの情報を軽んじている扱いに怒りを感じている。かと言って正式な長ーい手続きをしたところで、頑固な彼は取り入れるどころか一顧だにしないだろう。直接やりあったら人の話は聞ける人なのに。

「しかし、やはりこれは受け取れぬ。」
しばらく無言で書類を眺めていたが、パサリと閉じられ、丁寧に返されてしまった。ダメか。
「正式に特使は出して頂きたい。拙者が今えいこ殿が『雑談として話した訓練法』は一部試して実績は作って置くゆえ、届けられた訓練法はすぐに運用されるだろう。」
それって。
「そちらの国には手間を掛けさせて済まぬが、その方法が一番早いでな。それと、こう見えて5センチほどの厚さの紙切れは記憶することが出来る特技もある。…闇の国の王の懐の深さには感嘆した。」
「ありがとうございます。」
とりあえずこれで、こちらの国のレベルアップも目処が立ったようだ。

大地君の手紙には、見所のある人を訓練でレベルアップさせて欲しいとあった。国と国を分けるために強い人が一人は必要だからだ。でも、私は破壊神を呼び覚ますつもりだ。破壊神を倒すのにも、民を一人でも死なせないためにも、使える人はもっと必要。カナトは私を女神と呼ぶけど、私がしようとしている事で何人死ぬのか。私はは紛うことなき悪の精霊だ。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。 結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。 転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。 しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……! 「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」 農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。 「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」 ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

異世界召喚されたけどヤバい国だったので逃げ出したら、イケメン騎士様に溺愛されました

平山和人
恋愛
平凡なOLの清水恭子は異世界に集団召喚されたが、見るからに怪しい匂いがプンプンしていた。 騎士団長のカイトの出引きで国を脱出することになったが、追っ手に追われる逃亡生活が始まった。 そうした生活を続けていくうちに二人は相思相愛の関係となり、やがて結婚を誓い合うのであった。

公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。

木山楽斗
恋愛
弱小貴族で、平民同然の暮らしをしていたルリアは、両親の死によって、遠縁の公爵家であるフォリシス家に引き取られることになった。位の高い貴族に引き取られることになり、怯えるルリアだったが、フォリシス家の人々はとても良くしてくれ、そんな家族をルリアは深く愛し、尊敬するようになっていた。その中でも、義兄であるリクルド・フォリシスには、特別である。気高く強い彼に、ルリアは強い憧れを抱いていくようになっていたのだ。 時は流れ、ルリアは十六歳になっていた。彼女の暮らす国では、その年で魔法学校に通うようになっている。そこで、ルリアは、兄の学園に通いたいと願っていた。しかし、リクルドはそれを認めてくれないのだ。なんとか理由を聞き、納得したルリアだったが、そこで義妹のレティが口を挟んできた。 「お兄様は、お姉様を共学の学園に通わせたくないだけです!」 「ほう?」 これは、ルリアと義理の家族の物語。 ※基本的に主人公の視点で進みますが、時々視点が変わります。視点が変わる話には、()で誰視点かを記しています。 ※同じ話を別視点でしている場合があります。

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

処理中です...