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70-2 意味がわからない

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魔法で本を戻すと痛むらしいので、なんてマナー違反なんだと振り返ったら、本は魔法でなくて人の手によって戻されていた。
「カナト様。」
「何かお困りのようですが、私ではお力にはなりませんか?」
美形が手を胸に置いて微笑むと絵になる。。。って、違う。
もしかしてカナトなら、聞けば教えてくれるだろうか?
「伺いたい事があるのですが、その、内密に。」
「承知致しました。では、神殿の方へお連れしましょう。」
ぱあああぁっ。て効果音がつきそうな笑顔になった。
いやいやいやいや、そんな大喜びですってお面付けて歩かれては困る。あなた神官一族のお世継ぎでしょうが。
「あの、出来れば自然に!自然に連れ出して頂けませんか?」
「心得ております。」
ホントがどうか疑わしかったけれど、るんるんとか、尻尾パタパタとか聞こえそうな足取りは階段を降りると同時に消えた。
「室長。教本を一部借りて行く。」
カナトは淡々とした声で事務所に声をかけた。
「カナト様!お知らせいただき恐縮にございます!」
ガン室長は腰が90度に曲がっている。これぞ最敬礼という美しさ。

「…殿下に侍るにあたり、最低限の神への礼儀は弁えてもらいたい。えいこと言ったか?神殿にて神の慈悲の雫に触れよ。ついて参れ。」
室長を無視して、出て行くカナトを追いかける。

カナト!やるね!

でも、私女神じゃ無いのよね。先に話を聞き出して、後からバレると八つ裂きか。先に誤解を解いたら話してくれなくなりそうだし。
ん?そもそもどうやって誤解を解くの?感知してもらう以外には…

神殿はゲームで見たイメージよりも神々しい場所だった。人払いをしてありますのでお寛ぎください、とか言われても無理だ。そこに、雰囲気を壊さない程度に豪華なカウチがあってどうぞと座るように勧められる。いや、どう見ても女神様用でしょう。祭壇ぽいよ?
「あの、誠に申し訳ないのですが、私女神様では無いのです。」
誤解を解くのが先決になりました。女神様用に触れてから違いましたはダメ、絶対。命大事。
「今はまだ覚醒前なのでしょう。時が来れば自覚なされるはずです。」
なんて頑なな男だ。違うったら違うの。
「そもそも何故私を女神様だと思われたのですか?」

「…聖女も魔女も圧倒的な器を持っております。来訪者が聖女でなく、魔女でもなければ女神様に違いまりません。」
穏やかにけれどきっぱりとカナトは言い切った。
「私の器が発展途上だとは思われないと?」
「あなた様に、器はありません。」
あれれ?
「えいこ様には器がございません。来訪者でありながら聖女でも魔女でも無いのです。だから、貴女様が女神様だと確信しております。」
確信されても、女神になり得るのは月子ちゃんだけだ。困った。
「女神は、女神になり得る聖女はいるよ。まだこの世界に来てないけど。私はその人の手伝いのためにいるだけだよ。」
女神にさせないようにって話は事態を余計にややこしくするから省略。
「でしたら、その方がいらっしゃるまで女神様の代理人をなさるのですね?私が女神様としてお仕えしても問題はございますまい。」
引かないらしい。彼は伝承を信じる男だ。私が嘘を言っていると思っているか、私が覚醒していないから分かってないと判断されたか、とりあえず彼の中で私が女神は確定らしい。私自身の言葉は信じてはもらえない。

「後から、違うなんて知らなかったって怒らないでね。」
カナトはにっこり笑ってまたまたカウチにかけるよう勧める。今度は座らせてもらった。抜群の触り心地だ。もう知らない。
「ちなみになんで器無しだと分かったの?皆の前で見せた時は魔力、あったでしょう?」
もし荒地ですでに感知されていても、デモンストレーションでやった時には魔力が見えたはずだ。けれど器無しと確信したのだから、その理由は知っておく必要がある。
「私の感知の仕方では、あなた様の魔力は感じられれませんでした。」
「見えなかったの?」
「あの時は、私にはマリス特有の土の香りがしたのと、あなた様の胸元に光り輝くマリスの姿が浮かび上がって見えたのですよ。」
うわぁ。そんな見え方の人までいるの?それじゃ、この方法じゃ誤魔化しようなく無い?
「私のように感知する者は他に聞いたことがありませんので、多くの場合その方法で問題ないかと。」
私の心の声が聞こえたのか、カナトは優しく慰めるように囁いた。

全体の何%が本体の形通りに光って見えるんだろう。大地君すでに調べてたりしないかな。
「お聞きになりたかったこととはその事でございましたか?」
白いフードを被った者達が現れてお茶の準備をし始めた。この人達は忠誠を誓った部下なのか、もしかしたら使令かも。
「この者達ならお気になさらず。他言は致しません。」
紹介する気はないらしい。
気を取り直して、知りたいことを尋ねる。
「王族の人間関係を知りたいの。近代の歴史で隠そうとしている事あるよね?」
「そのような事ですか?」
「ダメかな?」
「私が貴女の望みを拒否することはあり得ません。」
「嫌な事は嫌って言って欲しいんだけど。」
「では、お側に侍ることを「それはダメ。」」
しょんぼりして見せられてもダメなものはダメだ。
カナトは諦めて、壁際の扉を開いた。何やら手を動かしているから魔法の鍵がかかってるみたい。かなり厳重に。そして、そこにあった一冊の本のページをめくりながら、王家の秘密を話し始めた。
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