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68-2 怯える犯人

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「今日は暑いのでどなたかが気を利かせて下さったみたいです。ところでそのタオルをお借りしても良いですか?」
「…お使いください。」
家政婦長が中庭で理由もなくタオルを持っているはずが無い。どこかで見ていて、駆けつけて来てくれたのだろう。ディナさんに昨日の彼女の印象を聞いたところクレバーだと言っていた。だから、この稚拙なイタズラが彼女の指示とは考えにくい。
とは言え私の反応には関心はあるらしい。私の出方を待っているように見える。
「昨日は本をありがとうございました。」体を拭きながら、お礼を言う。
「いえ、私は頼まれて選んだだけですので。彼女は私からだと?」
「ディアナさんはとても優秀ですけれど、つてもなくあのような物は用意できません。だから、アニーさんにお願いしたのだな、と思いまして。」
タオルは適度な温かさかありフワッフワだ。シャルさんやディナさんも時々やってくれていたけど、これはメイドさん特有の家事魔法。マリちゃんが何度かトライしたけれど、中々力加減が難しいそうだ。

返答が無かったので不思議に思ってアニーさんを見ると、ただ黙ってこちらを見ている。あ、もしかして、
「すみません。お引止めしていましたね。タオルはディナさん経由でお返ししてもよろしいですか?」
メイドさんの方から去るのは失礼だからダメなのかも。
「お気遣いありがとうございます。」
びしっと頭を下げられて困ってしまう。
「すみません。では部屋に戻りますので失礼致します。」
ぺこりと曖昧に頭を下げて脱出してしまった。これこそ失礼だっただろう。


えいこが去った後、アニーは溜息を漏らした。
「侍女どころかメイドのイロハも知らない。けれど使用人には敬称をつけて呼ぶなんて。キュラス様も血は争えぬか。」
感慨にふけるほど暇ではない。すぐにアニーは中庭にも警備兵を回すよう進言に向かった。


その日の夕食時に犯人がまた現れた。
と言うか、私に配膳するメイドさんだった。濃緑色の長い髪が決めてになった訳ではない。確かに他にかな髪色の人はいなさそうだったし、長さも十分だし。けれど、私を見て子鹿のようにプルプル震えながら涙目で配膳してきたその態度が犯人だと自白していた。スープが出された時なんて、ちらっと見ただけで手がブルブル震えていてこぼすかと思ったくらい。

まぁ、そのスープにも毛束が入ってた訳ですが。
パンは相変わらずガチガチで、メイン料理は待たされて待たされて、冷めて出てきた。そしてデザートはアイスクリームだった液体。ほんと勿体ない。

念のためメイドさんに変装出来るようにしておきたいから、またまたサタナさんに連絡だ。ディナさんにお願いして手紙を書いてもらう。そうそう、パンに合うジャムも追加で記入。

次の日の昼食後にキュラスに手紙を渡す。スッと壁際に控えていたボブカットのメイドさんが部屋を出て行き、ちょっとしてからゾイ将軍が現れた。

「昨日、今日と連日男と手紙のやり取りとは感心致しかねる。拙者も中を確認させてもらおう。」


そんな、、、


リアルで拙者って初めて聞いたよ!
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