85 / 192
62-2 ある意味横領
しおりを挟む
「ちなみになんでサタナさんが一番大荷物だったの?」
「師匠、じゃんけんで負けたんだよ。」
「おまえなぁ、普通俺が負けても『俺やりますよ。』ちゅうやろ?」
「でも、勝負持ちかけたのもサタナ様ですし、散々真剣勝負!手加減無用!って仰ってましたよ?」
「せやからそこは、『俺がやりますよ。』『ええねん、俺が言い出しっぺやしな。』、までが様式美やんけ。」
「『俺がやりますよ。』」
「遅いっちゅうねん。」
「でも、サタナさん今のジェードのツッコミ、ナイスって思っただろ?」
「解説せんといてやー。」
仲良き事は美しきかな。しかし、ジェード君の行く末が不安だ。
夕方、大地君は討伐に出て行った。「じゃあ明日」と言う大地君をにこやかに見送ると、ディナさんが恐る恐る聞いてきた。
「明日、王都に戻りますよね?」
私が一言も『明日王都に戻る』事に同意していない事に気付いたらしい。それでも大地君が行くまで黙ってくれているディナさんが好き。
「いえ、このまま光の国に行きます。」
ええっ!と驚いたのはジェード君で、ディナさんはやっぱりとうな垂れた。
「だって、急ぎみたいだし、個人的って書いてあるのにNo.2引き連れて行くのも無粋でしょう。それに、あちらは侍女えいこを感知したい、こちらはえいことシーマを同時に連れて行けない。シーマ様が手紙一枚でホイホイ行ったりしない代わりに、侍女がご機嫌伺いにすぐさま馳せ参じるって事で、解決。ね?」
「こんだけ路銀があれば十分やしな。」
大地君が持ってきた金貨の袋をサタナさんは揺らした。
「ディナさんは、、、一緒に来ていただけたら大変嬉しく思いますけど、いかがですか?」
一週間に満たない旅行の予定が急に変わるのだ。彼女自身の仕事やウランさんからの仕事もあるだろうし、過剰な期待をしてはいけない。
「こちらをどうぞ。」
渡されたのはウランさんからの手紙だった。
『必ずディナを側に置くように。』
「えいこ様が光の国に直接向かわれる場合はお渡しするように、と私への手紙に同封されていました。」
ウランさんに死角なし。
夕食はまたダイニングで皆で食べる事にして、それまでは各々で過ごした。ディナさんはアンケートを終わらせたかったし、サタナさんは明日からの旅程を組んで宿を手配、ジェード君が夕食の買い出しだ。お邪魔をしないように私は宿のお土産物売り場で買ったハガキをシャルさんしたためた。
その日の夜は人混みが酷かったので花火は見に行かなかった。魔法が使えるようになって色々自衛できるまでの我慢。王都の祭りまでには習得するんだ。
皆には見にいってもいいよと勧めたけど、ディナさんは「花火は好きな人達と一緒に見るのが好きなので。」と私の手を握って気遣ってくれた。ジェード君がその言葉にちょっと気を落としていて可愛かった。頑張れ若者。心だけは応援しておくよ。
「師匠、じゃんけんで負けたんだよ。」
「おまえなぁ、普通俺が負けても『俺やりますよ。』ちゅうやろ?」
「でも、勝負持ちかけたのもサタナ様ですし、散々真剣勝負!手加減無用!って仰ってましたよ?」
「せやからそこは、『俺がやりますよ。』『ええねん、俺が言い出しっぺやしな。』、までが様式美やんけ。」
「『俺がやりますよ。』」
「遅いっちゅうねん。」
「でも、サタナさん今のジェードのツッコミ、ナイスって思っただろ?」
「解説せんといてやー。」
仲良き事は美しきかな。しかし、ジェード君の行く末が不安だ。
夕方、大地君は討伐に出て行った。「じゃあ明日」と言う大地君をにこやかに見送ると、ディナさんが恐る恐る聞いてきた。
「明日、王都に戻りますよね?」
私が一言も『明日王都に戻る』事に同意していない事に気付いたらしい。それでも大地君が行くまで黙ってくれているディナさんが好き。
「いえ、このまま光の国に行きます。」
ええっ!と驚いたのはジェード君で、ディナさんはやっぱりとうな垂れた。
「だって、急ぎみたいだし、個人的って書いてあるのにNo.2引き連れて行くのも無粋でしょう。それに、あちらは侍女えいこを感知したい、こちらはえいことシーマを同時に連れて行けない。シーマ様が手紙一枚でホイホイ行ったりしない代わりに、侍女がご機嫌伺いにすぐさま馳せ参じるって事で、解決。ね?」
「こんだけ路銀があれば十分やしな。」
大地君が持ってきた金貨の袋をサタナさんは揺らした。
「ディナさんは、、、一緒に来ていただけたら大変嬉しく思いますけど、いかがですか?」
一週間に満たない旅行の予定が急に変わるのだ。彼女自身の仕事やウランさんからの仕事もあるだろうし、過剰な期待をしてはいけない。
「こちらをどうぞ。」
渡されたのはウランさんからの手紙だった。
『必ずディナを側に置くように。』
「えいこ様が光の国に直接向かわれる場合はお渡しするように、と私への手紙に同封されていました。」
ウランさんに死角なし。
夕食はまたダイニングで皆で食べる事にして、それまでは各々で過ごした。ディナさんはアンケートを終わらせたかったし、サタナさんは明日からの旅程を組んで宿を手配、ジェード君が夕食の買い出しだ。お邪魔をしないように私は宿のお土産物売り場で買ったハガキをシャルさんしたためた。
その日の夜は人混みが酷かったので花火は見に行かなかった。魔法が使えるようになって色々自衛できるまでの我慢。王都の祭りまでには習得するんだ。
皆には見にいってもいいよと勧めたけど、ディナさんは「花火は好きな人達と一緒に見るのが好きなので。」と私の手を握って気遣ってくれた。ジェード君がその言葉にちょっと気を落としていて可愛かった。頑張れ若者。心だけは応援しておくよ。
0
お気に入りに追加
1,000
あなたにおすすめの小説
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
異世界召喚されたけどヤバい国だったので逃げ出したら、イケメン騎士様に溺愛されました
平山和人
恋愛
平凡なOLの清水恭子は異世界に集団召喚されたが、見るからに怪しい匂いがプンプンしていた。
騎士団長のカイトの出引きで国を脱出することになったが、追っ手に追われる逃亡生活が始まった。
そうした生活を続けていくうちに二人は相思相愛の関係となり、やがて結婚を誓い合うのであった。
異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。
木山楽斗
恋愛
弱小貴族で、平民同然の暮らしをしていたルリアは、両親の死によって、遠縁の公爵家であるフォリシス家に引き取られることになった。位の高い貴族に引き取られることになり、怯えるルリアだったが、フォリシス家の人々はとても良くしてくれ、そんな家族をルリアは深く愛し、尊敬するようになっていた。その中でも、義兄であるリクルド・フォリシスには、特別である。気高く強い彼に、ルリアは強い憧れを抱いていくようになっていたのだ。
時は流れ、ルリアは十六歳になっていた。彼女の暮らす国では、その年で魔法学校に通うようになっている。そこで、ルリアは、兄の学園に通いたいと願っていた。しかし、リクルドはそれを認めてくれないのだ。なんとか理由を聞き、納得したルリアだったが、そこで義妹のレティが口を挟んできた。
「お兄様は、お姉様を共学の学園に通わせたくないだけです!」
「ほう?」
これは、ルリアと義理の家族の物語。
※基本的に主人公の視点で進みますが、時々視点が変わります。視点が変わる話には、()で誰視点かを記しています。
※同じ話を別視点でしている場合があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる