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52-1 流行りの小説1
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今晩泊まる村は村の中心近くにあった。一階は食事やお酒が飲めて旅人が情報交換し合うという、ゲームによくあるタイプの宿らしい。
「サタ!久しいねぇ!」
宿に入るとすぐ、宿の女将さんか、恰幅の良い女性から声がかかった。
「マッジはん、相変わらずべっぴんさんやなぁ!ハトで知らせた通り世話になりますー。」
サタナさんの横で被ってた布を取って頭を下げるディナさんに取り敢えず倣っておく。私はこちらの常識が無いからね。
「あっはっは、相変わらずだねぇ。二部屋4人と、夕食だね。準備出来てるよ。あら?」
マッジさんはなぜか、私を見つめる。
「あらら、まあ!黒髪の乙女じゃ無いか!サタの恋人かい?あんたやるねぇ。」
「あほ言わんといてや、おっさんにこんな若い子が当たるかいな。せやけど、黒髪の乙女の話、こんなとこまで広がっとんの?」
「流行ってる流行ってる。あの小説、騎士目指してる若い魔人の男の子が熱狂してるよ。」
小説?
「王都でも最近流行り始めた恋愛小説です。私は一巻だけ読んだことありますが、ヒロインが黒髪の乙女でした。」
不思議そうな顔をしていたからか、ディナさんが教えてくれる。
「あんた、読んだこと無いのかい?あそこに置いてあるから、良かったら読んでみな。サタ、今日の部屋は二階の…」
部屋の壁際には本棚があった。
サタナさんが先にお風呂を勧めてくれたので、食事の前にお風呂に入る。今晩泊まる部屋に荷物を置いて、貴重品は貴重品ボックスに入れた。貴重品ボックスには魔法をかけて開かないようにするけれど、部屋の鍵は普通の鍵だそうだ。火事などがあった時に外から壊して入れるようにする為らしい。お風呂は魔力の結晶でも使えるコインシャワーみたいだった。女性使用中と札を立てて、ディナさんと一緒に入る。中はシャワーの個室がちょうど二つあったので、使い方を教えてもらってから別々に入れて良かった。「困ったら声かけてください。」と言われたけれど、特に問題なく使いこなせて一安心。マリちゃんとディナさんと私がさっぱりして一階に降りたら、マッジさんが話しているのが聞こえた。
「あの子、サタのイロかなんかって事にしないかい?あんたは色んな街で顔が知られてるから、ちょっかいかけられないだろう?お祭りだからねぇ。バカな子が湧くかもしれないし。後、スカーフで隠すとか。」
「イロて、えらい演技力いるで。スカーフ頭に巻く案は採用や。」
苦笑いのサタナさんの隣では、ジェード君が小説を黙々と読んでいる。
「お風呂お先でした。」
「お、ほんなら俺らも入るわ。ジェード、行くで。先風呂出ても、二巻以降は読むなよ。」
「わかってますよ。はい、えいこサン、どうぞ。」
本を私に渡すと、2人は上に上がって行った。ジェード君が「師匠、あらすじは教えてくださいー。」と言っているのが聞こえる。
「読んでみたら分かるよ。あの子はハマりそうなタイプだしね。若い男の子には毒だよ。」
笑いながらマッジさんが飲み物を二つ出してくれた。私が一巻を読んで、隣でディナさんが二巻を読む。一巻は二巻以降に比べて驚くべき薄さだ。ライトノベル風だったのを、さらに斜め読みしたのであっという間に読み終わる。ヒロインは黒髪以外はあまり容姿の記述はないけれど、まんま月子ちゃんだった。女子が好きな女の子。可愛くって優しくて頑張り屋で、って感じ。月子ちゃんはゲーム通りならこちらに来た時に金髪になっちゃうけどね。
で、ざっくり言うとヒロインに一目惚れしたヒーローが、悪の精霊に捕らわれたヒロインを助け出すっていう話だ。捕らわれちゃったヒロイン目線気味だからか、ファタジーというより恋愛小説っぽくなっている。突然ポエム調になったり。
そして、ヒーローはヒロイン以上に浮世離れしていた。
頭良くって、強くって、イケメンで爽やか。女慣れしていなくて、ヒロイン以外今まで恋愛経験無かったのに突如として現れるヒロイン限定で女心をくすぐるテクニック爆発、みたいな。
いないよ、そんな奴。イケメンで遊んでもないのに、そんなピンポイントで器用な人間。しかも、ヒロインは絶世の美女と言うより、私なんて系だ。無い無い。
と思ったけど、いたわ。心当たりいた。
この人、大地君だ。美化130%テルラさん。
隣でディナさんが、そっと本を置く。読むの早いなと思って顔を見たら、すっごい微妙な表情だ。眉間に皺が寄ってて口はニンマリしている。
「このヒロインの恋人ってテルラ様に似ていましたよね?」
ディナさんが、聞くので相槌をうつと、そっと二巻が手渡された。
「サタ!久しいねぇ!」
宿に入るとすぐ、宿の女将さんか、恰幅の良い女性から声がかかった。
「マッジはん、相変わらずべっぴんさんやなぁ!ハトで知らせた通り世話になりますー。」
サタナさんの横で被ってた布を取って頭を下げるディナさんに取り敢えず倣っておく。私はこちらの常識が無いからね。
「あっはっは、相変わらずだねぇ。二部屋4人と、夕食だね。準備出来てるよ。あら?」
マッジさんはなぜか、私を見つめる。
「あらら、まあ!黒髪の乙女じゃ無いか!サタの恋人かい?あんたやるねぇ。」
「あほ言わんといてや、おっさんにこんな若い子が当たるかいな。せやけど、黒髪の乙女の話、こんなとこまで広がっとんの?」
「流行ってる流行ってる。あの小説、騎士目指してる若い魔人の男の子が熱狂してるよ。」
小説?
「王都でも最近流行り始めた恋愛小説です。私は一巻だけ読んだことありますが、ヒロインが黒髪の乙女でした。」
不思議そうな顔をしていたからか、ディナさんが教えてくれる。
「あんた、読んだこと無いのかい?あそこに置いてあるから、良かったら読んでみな。サタ、今日の部屋は二階の…」
部屋の壁際には本棚があった。
サタナさんが先にお風呂を勧めてくれたので、食事の前にお風呂に入る。今晩泊まる部屋に荷物を置いて、貴重品は貴重品ボックスに入れた。貴重品ボックスには魔法をかけて開かないようにするけれど、部屋の鍵は普通の鍵だそうだ。火事などがあった時に外から壊して入れるようにする為らしい。お風呂は魔力の結晶でも使えるコインシャワーみたいだった。女性使用中と札を立てて、ディナさんと一緒に入る。中はシャワーの個室がちょうど二つあったので、使い方を教えてもらってから別々に入れて良かった。「困ったら声かけてください。」と言われたけれど、特に問題なく使いこなせて一安心。マリちゃんとディナさんと私がさっぱりして一階に降りたら、マッジさんが話しているのが聞こえた。
「あの子、サタのイロかなんかって事にしないかい?あんたは色んな街で顔が知られてるから、ちょっかいかけられないだろう?お祭りだからねぇ。バカな子が湧くかもしれないし。後、スカーフで隠すとか。」
「イロて、えらい演技力いるで。スカーフ頭に巻く案は採用や。」
苦笑いのサタナさんの隣では、ジェード君が小説を黙々と読んでいる。
「お風呂お先でした。」
「お、ほんなら俺らも入るわ。ジェード、行くで。先風呂出ても、二巻以降は読むなよ。」
「わかってますよ。はい、えいこサン、どうぞ。」
本を私に渡すと、2人は上に上がって行った。ジェード君が「師匠、あらすじは教えてくださいー。」と言っているのが聞こえる。
「読んでみたら分かるよ。あの子はハマりそうなタイプだしね。若い男の子には毒だよ。」
笑いながらマッジさんが飲み物を二つ出してくれた。私が一巻を読んで、隣でディナさんが二巻を読む。一巻は二巻以降に比べて驚くべき薄さだ。ライトノベル風だったのを、さらに斜め読みしたのであっという間に読み終わる。ヒロインは黒髪以外はあまり容姿の記述はないけれど、まんま月子ちゃんだった。女子が好きな女の子。可愛くって優しくて頑張り屋で、って感じ。月子ちゃんはゲーム通りならこちらに来た時に金髪になっちゃうけどね。
で、ざっくり言うとヒロインに一目惚れしたヒーローが、悪の精霊に捕らわれたヒロインを助け出すっていう話だ。捕らわれちゃったヒロイン目線気味だからか、ファタジーというより恋愛小説っぽくなっている。突然ポエム調になったり。
そして、ヒーローはヒロイン以上に浮世離れしていた。
頭良くって、強くって、イケメンで爽やか。女慣れしていなくて、ヒロイン以外今まで恋愛経験無かったのに突如として現れるヒロイン限定で女心をくすぐるテクニック爆発、みたいな。
いないよ、そんな奴。イケメンで遊んでもないのに、そんなピンポイントで器用な人間。しかも、ヒロインは絶世の美女と言うより、私なんて系だ。無い無い。
と思ったけど、いたわ。心当たりいた。
この人、大地君だ。美化130%テルラさん。
隣でディナさんが、そっと本を置く。読むの早いなと思って顔を見たら、すっごい微妙な表情だ。眉間に皺が寄ってて口はニンマリしている。
「このヒロインの恋人ってテルラ様に似ていましたよね?」
ディナさんが、聞くので相槌をうつと、そっと二巻が手渡された。
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