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51 古文書の有りし所

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ディナさんに魔力の結晶を拾いに寄り道する事を伝えたけど、特に反対されなかった。

道中は順調で、意外なくらい魔獣には全然エンカウントしない。

「魔力が多くなりすぎると魔獣が増えたりしないのですか?」
「もうちょい魔力が余ってきたら、ここら辺も危ないやろなぁ。今は暴れるような魔獣出るところは決まっとるで。谷と山の間の魔力の吹き溜まりんとこはヤバイ。」

ゲーム中でも、始めに訪れる古文書のある場所は弱い魔獣しかいない。そういう場所はどうやら今はまだ魔獣すら出没しないらしい。

世界の力は予定より少ないはずだ。サンサンが天寿を全うして、内なる力が世界に戻った時に一気に悪化するだろうけれど。

日差しを遮るために、ディナさんから無垢の布をもらって被っている。日陰状態だから結構涼しいし、2人乗り用の鞍なのか、サタナさんの前に座っていてもお尻は痛くない。でもこのポジション、馬とサタナさんが大きくて私が小さいから成立してるけど普通子供乗せる時のやつよね。
荷物はジェード君とディナさんの馬にそれぞれ分担していて、結晶も分けて積む予定だ。

朝ごはんと昼ごはんはサタナさん御用達の場所でお弁当を食べた。食事と休憩に最適な場所だった。もちろん馬にとって。

牧草も川もあって、人間にとっても心地良い場所だった。馬は賢くて気持ちが分かるらしいので、良く良く感謝と労りを伝える。

のんびりと夕方前にニアメに着いた、らしい。魔力を感じる人からすると、その場所ははっきり他の場所と違うと感じるのだろうけれど、私には丘の一部にしか見えない。魔力がもっと溜まってくると、植生とか変わってくるのかもしれない。

「ほな、えいこサン、頼むわ!」
という事で、せっせと魔力の結晶を拾っては詰め、拾っては詰めする。ガラス繊維の袋に入れて、しっかり口を閉じて二重に包む。これで魔力はほぼ漏れないらしい。

「あんまり小さいのは採ったらあかんで!育つまで置いとくし。」
へいへい。

私が拾ってる間、サタナさん達は魔力の結晶を作る魔法陣を構築している。次回来た時上手くいけば上物ができているはずだ。

「でも、次私達が来るまでに誰か他の人が採りに来るんじゃないかな?」
ジェード君にきいてみる。
「採った人も魔法陣描いていくルールなんだよ。おあいこだね。でも、大きな結晶採っても平気な人はそんなにいないんだけど。」
なるほど。

粗方終わったな、と思ったらサタナさんに呼ばれた。
「お疲れさん!ここ見てみぃ。」
指された先に下へ降りる石段がある。
「これは。」
「この先に古文書が現れるて言われとる。」
言われてる?
「魔女様や聖女様が近づくと文字が現れるのですね!」
ディナさんは少し興奮気味だ。


しまったぁぁあ!私魔女じゃないじゃん!
主人公気取りで勇んで来たけど、今の私はただのモブ。文字現れなくない?!


「条件合えば来訪者でも見れるはずやで、あんまり意味あらへんけど。」
私の表情で察したのか、サタナさんが答えた。

意味が無い?どゆこと?そして私でも出来るの?

不思議に思ってサタナさんを見ると下に促される。

階段を降りると、くらくてじめっとした6畳くらいのスペースがあり、超小さいけど『あの祠』があった。
「中、どうなっとる?」
一緒に入ったサタナさんが目を細めている。
「6畳くらいの真四角で何もないスペースがあって、一番奥の壁際に祠がありますね。」

「すみません!一回出ます!」
「私も上がります!」
後ろから付いてきたジェード君とディナさんが出て行った。

『ママ、僕もあんまりここに居たくないよ。』
取り敢えず、祠に触れると投影機のように文字が現れた。

"いつか世界に女神が1人降りられるだろう"

んん?ゲームで見た古文書ってこんなアッサリしたものだったっけ?図書館で見た内容まんまだけど、あれって意訳じゃなかったんだ。でも、これって先代の聖女が光の国で最初に見た古文書の内容だったはずよね?まさか。。。

『ママ!出よう!魔力いっぱいになっちゃう!』

マリちゃんに促されて慌てて外に出る。
服から飛び出たマリちゃんとディナさん、ジェード君は両手を広げた感じで同じポーズになっている。

「魔力を放出しとんねん。」
サタナさんが、私の後ろから現れた。
「俺は魔力減らしてったから平気へっきやけどな。」
ウインクしてみせられた。

魔獣が跋扈ばっこしていないレベルの魔力でこれなのか。かといって、
「魔力減らして入って、もし中に魔獣がいたらヤバイですね。」
「せやろ。ココは今魔法陣張って来たから、次来た時は多少マシになっとるはずやけどな。」

色々先に言って欲しいけど、多分私試されてるのよね。
「さっきの答え合わせ、いいですか?」
「ウェルカムや。」
モートンさんみたいにワクワクした目をされた。まったく、狸の弟子はなんだろう?イタチ?

「私には見えましたけど、中って魔力が充満していて視界が効かないんですね?中には小さな祠がありました。それに触れると文字が浮かび上がりましたが、来訪者は視界ゼロでも祠が見えるんでしょう。あちらの世界でもそうでしたし。文字自体は誰でも見えるかも知れません。サタナさんはそれを確認されてたんですか?」

「大正解や。文字は霧の中でも見えたで。えいこサンが出てったら消えたわ。」

顎に手を当てて、嬉しそうだ。そこに髭があれば撫で付けていたんでしょう。

「それから、文字は先代の聖女様が『初めて古文書を見た時』と同じ内容でした。つまり、現れる文字はその人が触れた祠の個数によって変わると考えられます。全ての祠に触れるのが先か、世界を癒して帰るのが先か、はたまた、強い力の祠にいる魔獣や聖獣を倒せないうちに破壊神が出現するか、となって全ての古文書の内容は未だ知られていないんですね?」

古文書の場所を知っている一族がいるのに未だに全制覇されていない理由はこのへんか。

「せや。男の来訪者が役に立たん理由は分かるか?」

「んーと。魔女ほどブレーキ力が強くなるのは難しいと聞いていますので、世界に魔力が満ちている時は祠にいる魔獣にやられちゃうから、かな。逆に世界に魔力が満ちていない時は、祠から魔力が出てなくて入り口が分からないんじゃないでしょうか。」

さっきの祠の入り口を見る。少し離れただけで、もうどこが入り口か私にはわからない。

「惚れた。」

「は?」
「えいこサン、あんたカッコ良すぎやわ。どこまでも付いていくで!よ!社長!あんた漢や!」

いや、女子です。

「…、突っ込んでくれへんの?いけず。」

この関西人っ。めんどくさいっ。

少しあの人の動きが気になったけど、取り敢えずサタナさんからは合格をもらったみたいで一安心。

日が沈む前に今晩泊まる宿ごある村に着いた。
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