同級生の異世界転移に巻き込まれた直後に前世を思い出した結果、乙女ゲームの世界だと判明しました

吉瀬

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48-1 休暇の過ごし方1

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髪を切ろうと思う。
こちらに来て3ヶ月ちょっと。前髪が目にかかって鬱陶しい。こちらには黒のスタンダードなヘアピンは無いのよねー。
多分言ったら作ってくれそうだけど、いく先々で「それなぁに?」と目立っては困る。
と言うわけで、シャルさんに手伝ってもらいつつ髪型を整える。ハサミに魔力をまとわせるくらいならマリちゃんでも良いんだけど、後ろとかもやってもらえるし。
こちらの人は髪色も髪型も様々だけれど、一応身分が高い女性や女性性を重視する仕事の人とかはそれなりに長いようだ。
短くしてても耳は隠してるから、あちらの世界の基準で言うとおかしな髪型だけど、目立ちたくないからそんな雰囲気に合わせる。

切った髪を少しずつ小瓶に分ける。分けた小瓶にそれぞれお茶を入れて蓋を閉める。小瓶にマーキングも忘れない。よしよし、これでいい。

「何してんだ?」

大地くんが横から覗き込んだ。
だーかーらー、なんで君は乙女の私室に勝手に入ってくるのかなぁ?

「テルラ様!えいこ様の私室です!勝手に入られては困ります!」
「わりぃ。ノックしたんだけど、返事無かったから。」
「返事無かったら、普通開けないの。」
「中で倒れてたら大変だろ?」
むぅ。
「じゃあ、私も勝手に入っちゃうよ?」
「え。」

一瞬何を想像したのかは分からないが、大地くんの顔が赤く染まった。
「あー、そりゃまずいな。悪かった。気ぃつける。」
大地くんの気ぃつけるは全く当てにならない。
『テルラ様の『気ぃつける』は全く当てにならないです。』
マリちゃんと以心伝心。一心同体。

「それで部屋に来たってことは、何か用事があったの?」
「用事っつうか、久しぶりに今日暇が出来たから街行くんだが、付き合わねぇか?」
「行く!」
何だかんだで、王都にいながらすぐ隣の研究所とその裏の学校や公官庁しか行ったことがない。
研究所からお給金も頂いたし、使い方を覚えるついでに旅グッズも揃えたい。それに、

「シャルさん!動きやすくて、街で目立たない格好したいです!」
普通の服を着るチャーンス。
「ございません。」
「え。」
「私の服をお貸しする訳にも行きませんしー。」
頰に手を当て、困ったわーと言うシャルさんは棒読みだ。
あれだな、ウランさん以外の殿方と以下略。ってやつだな。

「後、ウランさんがお好きなもので私のお小遣いで買えそうなものってありますか?」
「トトカカのNo.8と言う紅茶がおススメです!そう言えばサタナ様ならご衣裳に当てがおありかも知れませんね。」
ふふふ、ちょろこいわ。

サタナさんの私室に行く途中で念のために覗いた食堂で、お目当の人は遅めの朝食を摂っていた。
「服?ディナはんに聞いてへん?今度出かける時用にとりあえず数着渡しといたでー。今日買い出しやったら、ディナはんも誘たらどうや?一緒に行くんディナはんやろ?」
「出かける?サタナさんとどっか行くのか?」
何故か大地くんも付いて来てます。いや、部屋で待っててって一応言ったんだよ。

「それはおいおい説明するよ。」
てか、シャルさんめ。どちらが行くか決まったって聞いてないよ。置いて行かれるのに拗ねてるな。

結局スレ違いで私の部屋にディナさんが服を待って来てくれていた。出立の準備やいない間の仕事の割振りやらで今朝は私の部屋に来なかったららしい。
2人とも私付きのメイドをしてくれているが、元々ウランさんのメイドなので必要な時はウランさんの方にも行っている。だから、今日もそうなのかと勝手に思ってた。

大地くんも、私に合わせた服に着替えると言うので、後で中庭集合にする。
こちらの普通の服はちょっとカントリー風味な森ガール的で可愛く普通だった。着やすい、脱ぎやすい、動きやすい。ディナさんによると、明後日以降準備が出来次第出発したいとの話らしい。
望むところだ。月子ちゃんが現れるまで後一年は無いのだ。今日明日で準備して明後日は朝から行きたいくらいだ。

ディナさんも服を着替えて3人で街に行く。ちなみに仕事のため買い出しにも置いて行かれたシャルさんだが、私と大地くんの2人きりで無いことを知ってご機嫌さんになった。シャルさんにもお土産買ってこよう。

城から街まで少し歩く。道すがら、買い物の仕方やお金の説明、注意事項等の説明を受けた。言葉が通じる海外旅行のようだ。
大地くんに数日後にナイロの街のお祭りに行くつもりだと話した。昨年大地くんも行ったらしい。

「今年は仕事があるから一緒にいけないが、ディナやサタナさんがいるなら大丈夫だろ。楽しんでこいよ。」

別に彼の許可がいるものでも無いけど、笑顔で送り出されるのは嬉しい。

官庁街を歩いている時は自分達が浮いている気がしたが、そこを抜けると歩いていた人達の衣装や周りの雰囲気がかなり変わった。

前世て唯一行ったことがある海外旅行で見た街に似ている。ヨーロッパ最古の薬局がある街だ。石畳が整然と並び、カラフルな建物が可愛い。

「あれ?大地くんの馬って蹄鉄してなかったよね?」
「石畳じゃ、乗り手や馬自身が魔法で補強すんだよ。」
「馬自体も魔法使うんだ。」
「マリだって使ってるだろ?」

そうなんだけど、この世界は知れば知るほど都合が良い魔法が沢山ある。こんなんじゃ、例えばサンサンが電気やガスを開発しても、世界を分断した後の魔力の無い生活は立ち行かないだろう。

研究所からのお給金は結構な価値があった。ディナさんや大地くんと相談しながら必要な物を揃えて行く。あんまり悩む方じゃ無いからサクサク進める。
トトカカと言うお店では一人で入りお土産を買った。

髪の色が多少目立つ気がするけど、やっぱり気分は言葉の通じる海外。


お目当のものをゲットして外に出ると、待たせていたディナさんは困ったような笑顔のような妙な表情だった。

「私ウラン様のしもべでなければ、テルラ様の応援をしていましたわ。」
「気持ちだけ受け取っとくわ。さんきゅ。」
何となく二人の友好度が上がったようだ。良きかな。
来たるべき時には、攻略対象者以外だって当てにしてるもんね。
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