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20 大地くんと再会

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 ゲームの世界観を最もややこしくしているのが、
猪突猛進源野弟、海里君だ。
 海里君のグッドエンディングを攻略すれば分かるのだが、実はゲーム開始前に一つ物語がある。

 本来は海里君が闇の国に降りたち、その後光の国にヒロイン月子ちゃんと大地君が現れる。二人が降りた時点で海里君は魔王であり、月子ちゃんと協力して世界を分断しようとする。が、その前に破壊神が現れ月子ちゃんを殺してしまう。激昂した海里君は破壊神含む全てを破壊し尽くし、世界のエネルギーのほぼ全てを用いて、自分と大地の立場を入れ替えてのニューゲームしてしまうのだ。

 なので本編では
大地君が闇の国に現れる
↓2年後
魔王が倒れ、大地君が新魔王になる
↓1年後
月子ちゃんが光の国に現れる
↓数週間~1ヶ月後
海里君が光の国内にいることが分かる
↓1年後くらい
破壊神誕生

 という流れだったと思う。最初の方はイベントの中で大地君が明言していたから確実だが、後の方はプレイしている時にあまり気にしなかったので概算だけど。

 とりあえず、海里君はこっそり月子ちゃんが世界を救うのを邪魔して、安全に帰れるように画策するキャラとなる。

 サタナさんの話では現在、闇の国には大地君がいて、かつ魔王ではないという事なので、今は大地君が現れてから2年以内のどこかの筈だ。

 私が、モブキャラがなにができるだろう?
 精々邪魔にならないように自分のレベル上げるのと、闇の国にいる人たちと仲良くなってレベル上げを誘導する事、後は情報収集かな。出来るなら闇の国以外の人とも信頼関係が築ければ、月子ちゃんの絆上げの協力はできるかもしれない。

 うん。頑張れる。やるべき事があるうちは大丈夫。

 今の私に、十六歳の高校生に二十九歳の記憶は正直重いけど、秋穂……さんのゲームの記憶があるのはラッキーだと思おう。
 全部済んで、秋穂さんにほんの少し戻っても大丈夫になったら、好きな人を思って泣こう。

 簡易地図をざっと見渡した後、飾り棚に置物を戻していると、扉がノックされた。

「入るぞ」

 返事をする間も無く、彼が顔を出す。

「大地君」

 私にとっては一日も経っていないのに、もう何年も会ってない気がするのは今の彼の風貌のせいだけじゃ無いだろう。

「久しぶり。じゃ、無いんだろうなぁ、えいこサンにとっては」

 暖かな目でじっと見つめられて、思わず見惚れてしまった。騎士風の衣装と伸びた髪、それから元々良かった体格が更に出来上がっている。
 っは?!てゆうか、数年経った今がむしろメインの立ち絵だよね!そりゃかっこいいわ。やばい、溶ける。

「……なに、があったの?怪我とかしてない?」

 恥ずかしさで涙目になりながら何とか冷静さを保とうとして失敗した。かみかみだ。
 大地君の顔が辛そうに歪む。
 瞬間、私はとんでも無いことをしてしまっていた事を思い出した。

「それ、から、ごめんなさい。後を頼まれたのに月子ちゃんも……」

 そうだった、この世界は私達がいた所より危険な世界だ。約束を破った上、月子ちゃんと海里君が無事である事を私は知っているが教える事も出来ない。彼が彼女達の事をどれだけ心配しているかを私は知っているのに。

 どうにかして知らせる方法はないかと頭をフル稼働させていると、近づいてきた大地君にそのままぐいっと引き寄せられた。

「海里も、月子も多分大丈夫だ。大丈夫。えいこサンが一番ヤバかった。無事でいてくれて良かった」

 気がつくと抱きしめられて、ぽんぽんとあやされている。

 ……今なんと仰いました?

 抱き寄せられたのも中々衝撃的だったけど、その後の言葉が気になる。
 自分の身に起きた事をを脳内リプレイ。
 私は荷馬車に揺られ、転移円で移動し、メイド(仮)さんにガッチリ掴まれて、丁寧に閉じ込められています。
 うん、メイド(仮)さんは確かにヤバかった。

 バカな事を考えている私を大地君はすぐに離し、椅子に促した。
 テーブルに飲み物とサンドイッチが置かれる。

「食べながら聞いてくれ」

 促されて座ると、大地君は向かいに座わった。妙な緊張があって流石に飲み物にすら手は出せない。
 大地君は一つ深呼吸した後、目を見据えて言った。

「まずは、先に結論から言う。えいこサンはもうここから出さない」
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