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√ナルニッサ63

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 リオネット様達はすぐに施設の人を出した。いつの間に作ったのか、怨嗟が発露しない様に魔力を得るのを阻害するピアスをつけさせている。

「心がまだ戻らない者もいますが、施設ここにいるより、外の方が良いでしょう」

 ふらふらと歩いているのはソフィアさんだ。こんな事まで計画通りなのか、義両親と思われる二人が再会を喜んでいる。リオネット様が準備していたとしか……。

「カリン」

 代わりに施設へと連れて行かれるクラリスはすれ違いざまに私に声をかけた。

「貴女、これで本当に終わりだと思ってる?」
「え?どういうこと?」

 驚いて振り返ったが、彼女の入った檻の扉が閉まる音で私の問いはかき消された。

「カリン様?」
「ナルさん」
「どうかされましたか?」

 もう一度、扉を見る。彼女の気配はもう無い。

「ううん、なんでも無い」

 私はナルさんの手を取った。

――――――――――――――――――――――――――

 王が居なくなるというのは大変な事だった。私やリオネット様にはある民主主義のイメージは上から下まで誰も理解ができない。

 それぞれの領地が守るべき約束事をつくり、各領地が国としてそれぞれでやる事に落ち着きそうだ。
 ただ、怨嗟の問題など共通の問題はあるため、集まって話をまとめる機関も作る。

 ほとんどはリオネット様に丸投げだ。人間的にはどうよ?と思う事もある人だけど、合理的なルールづくりなどには向いているタイプで、雨情やアッシャーが突っ込みを入れて直していっている様だ。有能という理由で、サンダーランドの兄弟達も巻き込まれているらしい。清く正しく美しく、そこに東や西からの意見も含ませていき、とりあえず、すごく大変そう。

 索冥はいつの間にか消えていた。ナルさんは予想していた様だった。もうずっと彼女が側にいない事が多くて、それは彼女なりの配慮だったんだと思うと話した。アンズは大号泣。どさくさに紛れて兄様と仲直りしていて、その辺りは慌ただしい。

 私とナルさんは皆が国のことでてんやわんやしている間、サンダーランドとマンチェスターを守る係となっていた。こちらは以前からあまり変わってないので、やる事はもっぱら大森林を禁足地にする方法などだ。現実的に全てを禁足地にしてしまうと資材が取れないし、ある程度の幅が必要。ついでに植林して人が使いたい部分を、増やせばなんとか?

 時々考える。こんないろんなことを一人で考えて決めていけば、絶対どこかで歪みができる。それを一人で抱えたクラリスは果たして罰せられるべきだったのだろか?と。

「カリン様?」
「あれ、ナルさんどうしたの?」
「どうしたの?ではありません。サンダーランドの仕事を終わらせて、馳せ参じました。久しく貴女の顔を見られず、私は枯れ果てるかと」
「昨日一晩あっちに泊まっただけだよね?」

 仕事をしましょう。

「……そろそろ、私たちの結婚式についても話を進めたいのですが?」
「え、や、あー、それはちょっとまだ早く無いですか?今、みんな忙しいですし?」

 そこにリオネット様から使令が、一匹。

『二人の新婚旅行は全国津々浦々でお願いします。国同士をまとめるにも一仕事買っていただきますからよろしく。今はそれまでの準備期間ですのでお忘れ無く』

 カーと一言鳴いて使令は飛び去っていった。

「だ、そうですが?」

 ナルさんは私を後ろから抱きすくめてくるので、私は逃げ場を失った。



――――――――――――――――――――――――――
後書き

お目通しありがとうございました
途中省略しました18禁展開や、この後のあれこれは別枠でR18でまとめてあります

アッサム、リオネット、アンズとのエンディングは別作品として掲載しております
ご興味ある方はよろしくお願いいたします
詳細は活動報告にて
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