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√ナルニッサ60
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森の奥、私が昔生活していた場所はそのままだった。柔らかな苔と葉っぱの布団。朝露が貯まる石の桶。妖精が住む家だと思ったそのままの姿。
その近くに同じようにいくつか人が過ごせる生活の区画が新たに作られていた。
「我がナルニッサの元を離れて、何をして参ったか分かるであろ」
「凄いね。アンズが人型になるのも、兄様に聞いたの?」
「是」
皆がこれからの話を話し合う間、私は索冥に連れられて部屋で休むことになった。女王の影響はやはり私の中にあるので、無駄に体力気力を消耗しない様に、決定事項未満は教えてもらえない。
森は安全とは言え、ナルさんの希望により索冥が私の側についていてくれた。
……ちなみに、アンズは地蔵の如く黙っています。気配を消して誤魔化して、兄様に叱られ無い様にしている家出息子だ。
「……、カリン様の耳に入れておきたい事がある」
「私に知らせたいこと?」
「我は遠く、ルシファーが僕であった。我が主人は森の奥にいながら、森に捨てられたダイリをも育てた。ダイリは獣を救うべく力を望み、その体は魔力に適合していた。奴は不老で、今は亡きルシファーを知る数少ない者」
兄様、実はすごい長生きだったんだね。
「ルシファーは人間に興味を持ち、里に近い森で人の子を愛した。森の王は神に近い。我とダイリはルシファーが神を降りる手伝いをした。森を守るため、大地より借り受けし力は返し、不老を捨て、獣の姿を捨て、人として生きた。森を守る役割はダイリと我で分けて受け持ち、我は外の見る事、そして、ルシファーの子が人の世界で馴染める手伝いを受け持った」
「そこで、前のサンダーランドの領主が保護したんだね」
「是、志高く、その志が正しい限り仕えるとルシファーの子は誓った。……その誓いは違える事なく潰えた。誇らしい事だ。それすらも潰えて少し経つ」
索冥は目を細めた。
「此度の戦い、終われば我は消える」
「え?どうして?」
「我の、我としての命はとうに尽きておる。ルシファーが生まれでた日に我も生まれた。長く生きすぎている。女王を打ち破れば、我の契約は終わる。ナルニッサとカリンの子も、我の力が必要なほどの者はもう生まれまい」
「そんな……」
「死は悲しみではない。ただ、夜眠るが如く。すべき事を終えた日の眠りは格別であろ?」
「そう、だけど。私は寂しい」
「知っておる。我はずっと置いてけぼりで寂しかった」
ルシファーが降りたのさえ数百年前、それは確かに長い。
「そも、加護のあるおもとやリオネットならいざ知らず、我の言葉はすでに古く、まるで異界の言葉となれば、この先……、加護のある者も出ず、言葉の分かる者も居なくなる。我は新たなる言葉のスキルは最早身につかぬ。時の流れよ」
変わった話し方には聴こえていたけれど、へっぽこ翻訳ですらそれなのだから、昔の言葉は相当癖のある言語になってしまったのだろう。
「ナルさんも悲しむかな」
「恐らくせぬな。その様に躾けた。喪失はあろうが、それは成長。親から子の巣立ちの様なもの。しかし、立ち上がるには少し時間がかかるやも知れぬ。立ち上がったと、おもとが判ずれば、一つ伝言を頼まれたい」
「何?」
「瑞獣はやはり人とは離れたほうが良い。アンズ殿のみならず、ナルニッサも本来は森に在るべき者。他の瑞獣を森深く、それを守る森にナルニッサやおもとは在るが良いと思う。瑞獣は羨望と畏怖を生み、それは人には良くない」
「そう、だね」
アンズが私と仲良くなったのは例外だ。瑞獣が住む森に人が気軽に入れてしまうと、争いとなるのは明白。ナルさんの色香の様なスキルも人の世界に溢れるとそれは危険だと思う。棲み分けをするなら、それを調整できるのもまた、ナルさんや私しかいない。
「分かった。どうすれば良いかはまだ分からないけど、ナルさんに伝える。それで、二人で考えてみるよ」
「ありがたい」
索冥はホッと息をついた。索冥が人の世界を永く見てきて出した結論なのだから、ちゃんと受け取る。
「後は礼を。私は麒では無く麟だ」
「えっと、ごめん、その違いって何?」
「麒が雌雄の雄、麟が雌雄の雌。瑞獣にとって子孫繁栄としての性別は無いが、違いはある」
「つまり、索冥は一応女の人って事だね」
「是。……、僕からの慕情が主人に通ずるのを見せてもらったのは、愉快。もはや心残りも無いと思うておったが、長く蟠ってはいたらしい。ナルニッサを受け入れてくれた礼をおもとに」
「……、私の方がありがとうだよ」
ルシファーを愛して、彼の応援をして、その後何百年以上も彼の子達を見守った、彼女に私はもう他に何も言うことは無かった。
作戦会議の結果、兄様と雨情、索冥が南の結界を破壊しに行く事に決まった。兄様は森の王の代理としての力が強く、その力は王女に匹敵するが森の外の世界を知らず、索冥はナルさんの側に侍るまでのほぼ百年国中を調べ回っていたので南の地理に詳しい。結界自体は高度に隠されているので、それを見つけ出すために雨情が同行するという事だ。
アッシャーとリオネット様は街に放った使令から情報を集め、時が満ちればすぐに打って出るのだそう。それまでに、リオネット様は自分の魔力の強化を図る。そして、私とナルさんはリオネット様の手伝いと兄様が不在の森を守る役割。
「女王クラリスを王の座から下ろすため、人や獣、森を傷つける事を目的とせず、女王が降りるその日まで契約を結ぶ……」
リオネット様は兄様達と話を詰めて、瑞獣の雛達と次々に血の契約を結んでいった。
血の契約は条件の契約。両者の目的に達するまで、主に遂行する側に属して補助をするという契約だ。
兄様達は早々に出立したので、雛達に説明するのは私の仕事。
「見開」
「うぴゃ?」
この仔はまだ赤ちゃんすぎて、参加させられないっと。亀の様な狸の様な赤ちゃんはナルさんに渡して、ミルクをあげてもらう。
「見開」
「おねーちゃん、だぁれ?遊ぶ?」
この仔もまだ早い。もう少し仲良くなってから。カモノハシの様なコウモリの様な子供はアッシャーに渡して、遊ばせてもらう。
……。
「いやぁ、壮観ですねぇ」
リオネット様はそれをホクホクしながら見ている応援係だ。契約できる仔はさっさと契約してしまうだけなので、基本暇。
「おい、リオン。ちったぁ手伝え」
「私は色香が無いので、契約してない仔には警戒されてしまうんですよ。元々色香は香りで群を統率するための能力。扱いが難しい赤ちゃんをナルニッサが、自我の芽生えをアッシャーが受け持つのが一番効率もよろしい。まぁ、会話できるカリンが最強ですが、流石カリン」
とは言え、流石に十数匹に追いかけ回されるアッシャーは気の毒……。あ。
「やっほーう!僕についといで!」
貝のように押し黙っていたアンズさんをお呼びしました。「ニイサマコワイ、ニイサマキライ……ボクワルクナイ」としか言わなかったので、「兄様出かけてしばらく帰らないよ」と教えてあげました。
「僕、お兄ちゃん!」
えへんぷいとそり返る姿は幼稚園の年長さんのそれ……。
最高学年だもんね、良かったね、みたいな。
全員見開で見た後は赤ちゃん達のお世話。ミルクはヤギと水牛の成獣のママから話がつけてあるのでそれをもらい、哺乳瓶やらスポイトやら、脱脂綿やらであげる……。懐かしい。
「カリン様は以前も?」
「そうだよ。いつか自然に返すから、あまり撫でくりまわしてはダメなんだけど……、赤ちゃんが可愛いから辛い……」
「私の婚約者は良い母になりそうですね。私も子はたくさん欲しい。兄弟の仲は良いので」
言われて思い出すナルさんの、兄の数は12人。
え?バレーボールの試合できる並みじゃね?
「カリン?顔色が悪いですが、魔力切れですか?」
「いえ!足りてます!」
ナチュラルにキスをしようとしてくるけど、忠誠切ってるのバレてるよ!
「うえーい!ナルニッサ!元気余ってるなら一緒に遊ぼーよー」
そして、風のようにアンズが連れ去って行く……。
視線を感じて後ろを振り返ると、案の定リオネット様が。
「アンズ殿は素直でよろしい」
とにっこり笑っている。やはり、リオネット様の差金だった。
その近くに同じようにいくつか人が過ごせる生活の区画が新たに作られていた。
「我がナルニッサの元を離れて、何をして参ったか分かるであろ」
「凄いね。アンズが人型になるのも、兄様に聞いたの?」
「是」
皆がこれからの話を話し合う間、私は索冥に連れられて部屋で休むことになった。女王の影響はやはり私の中にあるので、無駄に体力気力を消耗しない様に、決定事項未満は教えてもらえない。
森は安全とは言え、ナルさんの希望により索冥が私の側についていてくれた。
……ちなみに、アンズは地蔵の如く黙っています。気配を消して誤魔化して、兄様に叱られ無い様にしている家出息子だ。
「……、カリン様の耳に入れておきたい事がある」
「私に知らせたいこと?」
「我は遠く、ルシファーが僕であった。我が主人は森の奥にいながら、森に捨てられたダイリをも育てた。ダイリは獣を救うべく力を望み、その体は魔力に適合していた。奴は不老で、今は亡きルシファーを知る数少ない者」
兄様、実はすごい長生きだったんだね。
「ルシファーは人間に興味を持ち、里に近い森で人の子を愛した。森の王は神に近い。我とダイリはルシファーが神を降りる手伝いをした。森を守るため、大地より借り受けし力は返し、不老を捨て、獣の姿を捨て、人として生きた。森を守る役割はダイリと我で分けて受け持ち、我は外の見る事、そして、ルシファーの子が人の世界で馴染める手伝いを受け持った」
「そこで、前のサンダーランドの領主が保護したんだね」
「是、志高く、その志が正しい限り仕えるとルシファーの子は誓った。……その誓いは違える事なく潰えた。誇らしい事だ。それすらも潰えて少し経つ」
索冥は目を細めた。
「此度の戦い、終われば我は消える」
「え?どうして?」
「我の、我としての命はとうに尽きておる。ルシファーが生まれでた日に我も生まれた。長く生きすぎている。女王を打ち破れば、我の契約は終わる。ナルニッサとカリンの子も、我の力が必要なほどの者はもう生まれまい」
「そんな……」
「死は悲しみではない。ただ、夜眠るが如く。すべき事を終えた日の眠りは格別であろ?」
「そう、だけど。私は寂しい」
「知っておる。我はずっと置いてけぼりで寂しかった」
ルシファーが降りたのさえ数百年前、それは確かに長い。
「そも、加護のあるおもとやリオネットならいざ知らず、我の言葉はすでに古く、まるで異界の言葉となれば、この先……、加護のある者も出ず、言葉の分かる者も居なくなる。我は新たなる言葉のスキルは最早身につかぬ。時の流れよ」
変わった話し方には聴こえていたけれど、へっぽこ翻訳ですらそれなのだから、昔の言葉は相当癖のある言語になってしまったのだろう。
「ナルさんも悲しむかな」
「恐らくせぬな。その様に躾けた。喪失はあろうが、それは成長。親から子の巣立ちの様なもの。しかし、立ち上がるには少し時間がかかるやも知れぬ。立ち上がったと、おもとが判ずれば、一つ伝言を頼まれたい」
「何?」
「瑞獣はやはり人とは離れたほうが良い。アンズ殿のみならず、ナルニッサも本来は森に在るべき者。他の瑞獣を森深く、それを守る森にナルニッサやおもとは在るが良いと思う。瑞獣は羨望と畏怖を生み、それは人には良くない」
「そう、だね」
アンズが私と仲良くなったのは例外だ。瑞獣が住む森に人が気軽に入れてしまうと、争いとなるのは明白。ナルさんの色香の様なスキルも人の世界に溢れるとそれは危険だと思う。棲み分けをするなら、それを調整できるのもまた、ナルさんや私しかいない。
「分かった。どうすれば良いかはまだ分からないけど、ナルさんに伝える。それで、二人で考えてみるよ」
「ありがたい」
索冥はホッと息をついた。索冥が人の世界を永く見てきて出した結論なのだから、ちゃんと受け取る。
「後は礼を。私は麒では無く麟だ」
「えっと、ごめん、その違いって何?」
「麒が雌雄の雄、麟が雌雄の雌。瑞獣にとって子孫繁栄としての性別は無いが、違いはある」
「つまり、索冥は一応女の人って事だね」
「是。……、僕からの慕情が主人に通ずるのを見せてもらったのは、愉快。もはや心残りも無いと思うておったが、長く蟠ってはいたらしい。ナルニッサを受け入れてくれた礼をおもとに」
「……、私の方がありがとうだよ」
ルシファーを愛して、彼の応援をして、その後何百年以上も彼の子達を見守った、彼女に私はもう他に何も言うことは無かった。
作戦会議の結果、兄様と雨情、索冥が南の結界を破壊しに行く事に決まった。兄様は森の王の代理としての力が強く、その力は王女に匹敵するが森の外の世界を知らず、索冥はナルさんの側に侍るまでのほぼ百年国中を調べ回っていたので南の地理に詳しい。結界自体は高度に隠されているので、それを見つけ出すために雨情が同行するという事だ。
アッシャーとリオネット様は街に放った使令から情報を集め、時が満ちればすぐに打って出るのだそう。それまでに、リオネット様は自分の魔力の強化を図る。そして、私とナルさんはリオネット様の手伝いと兄様が不在の森を守る役割。
「女王クラリスを王の座から下ろすため、人や獣、森を傷つける事を目的とせず、女王が降りるその日まで契約を結ぶ……」
リオネット様は兄様達と話を詰めて、瑞獣の雛達と次々に血の契約を結んでいった。
血の契約は条件の契約。両者の目的に達するまで、主に遂行する側に属して補助をするという契約だ。
兄様達は早々に出立したので、雛達に説明するのは私の仕事。
「見開」
「うぴゃ?」
この仔はまだ赤ちゃんすぎて、参加させられないっと。亀の様な狸の様な赤ちゃんはナルさんに渡して、ミルクをあげてもらう。
「見開」
「おねーちゃん、だぁれ?遊ぶ?」
この仔もまだ早い。もう少し仲良くなってから。カモノハシの様なコウモリの様な子供はアッシャーに渡して、遊ばせてもらう。
……。
「いやぁ、壮観ですねぇ」
リオネット様はそれをホクホクしながら見ている応援係だ。契約できる仔はさっさと契約してしまうだけなので、基本暇。
「おい、リオン。ちったぁ手伝え」
「私は色香が無いので、契約してない仔には警戒されてしまうんですよ。元々色香は香りで群を統率するための能力。扱いが難しい赤ちゃんをナルニッサが、自我の芽生えをアッシャーが受け持つのが一番効率もよろしい。まぁ、会話できるカリンが最強ですが、流石カリン」
とは言え、流石に十数匹に追いかけ回されるアッシャーは気の毒……。あ。
「やっほーう!僕についといで!」
貝のように押し黙っていたアンズさんをお呼びしました。「ニイサマコワイ、ニイサマキライ……ボクワルクナイ」としか言わなかったので、「兄様出かけてしばらく帰らないよ」と教えてあげました。
「僕、お兄ちゃん!」
えへんぷいとそり返る姿は幼稚園の年長さんのそれ……。
最高学年だもんね、良かったね、みたいな。
全員見開で見た後は赤ちゃん達のお世話。ミルクはヤギと水牛の成獣のママから話がつけてあるのでそれをもらい、哺乳瓶やらスポイトやら、脱脂綿やらであげる……。懐かしい。
「カリン様は以前も?」
「そうだよ。いつか自然に返すから、あまり撫でくりまわしてはダメなんだけど……、赤ちゃんが可愛いから辛い……」
「私の婚約者は良い母になりそうですね。私も子はたくさん欲しい。兄弟の仲は良いので」
言われて思い出すナルさんの、兄の数は12人。
え?バレーボールの試合できる並みじゃね?
「カリン?顔色が悪いですが、魔力切れですか?」
「いえ!足りてます!」
ナチュラルにキスをしようとしてくるけど、忠誠切ってるのバレてるよ!
「うえーい!ナルニッサ!元気余ってるなら一緒に遊ぼーよー」
そして、風のようにアンズが連れ去って行く……。
視線を感じて後ろを振り返ると、案の定リオネット様が。
「アンズ殿は素直でよろしい」
とにっこり笑っている。やはり、リオネット様の差金だった。
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