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√ナルニッサ51
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ナルさんが城を出る1時間前にリオネット様は指輪を完成させてくれた。
「……これを相手にはめれば自分が相手を1番に想い、愛し、大切にするという誓いの指輪です。効果は主従の誓いより強く、両方の願いが被った時に優先されるのは指輪の方です。主従関係を切るほどの物は、間に合いませんでした」
出来ないとは言わないのですね。リオネット様。
「ありがとうございます。それではナルさんに渡してきます」
「本当に渡すのですか?」
「渡しますよ」
毎回毎回「渡すの?」と聞かれすぎて、私は苦笑しながら受け取った。リオネット様がいてくれて良かった。魔具はもちろん、精神的にも。
ナルさんはもう出なければかならないというのに、鍛錬場でトレーニングをしていた。汗をかいた後も爽やかが維持できるのは流石。
「ナルさん、もうすぐ出かける時間なんだけど、ちょっといい?」
「はい?今参ります」
汗を拭きながら近づく彼に、今日はストップをかけない。この距離の切なさと私は生きて行くと決めたのだから。
「すみません、この様な姿で」
「ううん、私が急に来たんだから」
うっすらと漂うナルさんの汗の香りで、心とは裏腹に心臓は早鐘を打つ。
「今日、ナルさんのお見合い、頑張って花嫁となるお相手を探して欲しい」
「はい、ご命令のとおりに」
笑え、私。
「それと、これを。この指輪は、はめた相手の事を大切にする誓いの指輪。お相手の左手の薬指にはめてね」
「カリン様?」
「その誓いは、主従関係の誓いより強いんだって。私は、主人よりナルさんが愛した人を大切にして欲しい」
「……それは我が兄が?」
「ううん、私の思いだよ。私はナルさんが大事で大切だから、ナルさんが本当に好きな人と結ばれて欲しいと願ってる。丁度その事に悩んでた時に、ナギア殿のお話が重なっただけなの」
ナルさんの手を取り、箱に収まった指輪を握らせた。
「後で私にも紹介してね」
「……花嫁を探す事、花嫁を決めた場合はこの指輪を使って相手に誓う事、というご命令でよろしいですか?」
「……うん」
「承知いたしました」
困惑している様だった。だけど、ナルさんは断らなかった。
流石に見送れないので、その場で行ってらっしゃいと伝えて、部屋を出る。
最後まで、僕にバレずに演技り切った。
そのまま部屋に直行。部屋まで後数十メートル。到着。扉を開けると、そこにはリオネット様。私は爆笑した。
「なんで、リオネット様がいるんですか!」
「……本当に渡すなんて」
リオネット様は乱暴に私を抱きしめた。
「アホですか?!アホですね!アホですよ!貴女、自分を壊わす気ですか?」
「意外と大丈夫ですよ?」
「その表情!鏡で良くご覧なさい!」
部屋の鏡を見ると、自然な笑顔。けれどその瞳からは涙が流れていた。
「あ、れ?」
「どうして、そんな道ばかり選ぶんですか!どうして、ズルい道を選ばない!そんなだから、私は貴女にっ!幻滅させてくれれば良かったのに!」
「リオネット、様?」
怒りで震える様にしながら、苦しみで顔を歪めてリオネット様は怒鳴りながら私を抱きしめた。
「……どうして、本気の恋なんか、したんですか……?そうでなければ、貴女の心を奪えたのに。無理矢理私が奪うのさえ躊躇わせる程の、恋なんてして欲しくなかったっ……」
リオネット様も涙を流していた。真剣に苦しんでいて、その姿は私と重なる。そっか、リオネット様は私が本当に好きだったんだ。
「ごめんなさい。リオネット様。私は貴方に恋はしません。この気持ちはナルさんだけのものです」
「でしょうね。私は貴女を殺さないと決めた日から、貴女を守ると決めたんです。ナルニッサを心から……、愛しているんですね?」
「はい。大好きです。世界一」
リオネット様を思いやる余裕はなかった。一旦流れ出した涙を止められず、私は両手で口を押さえて嗚咽を殺すのに必死だ。
本当に、壊れるかも知れない。ただ、ナルさんから何も奪いたくなかっただけなのに。
リオネット様は、一旦目を瞑り力を抜いた。
そして、微かな声で呟いた。
それが、「さようなら、愛しい女性。私が、貴女を諦めます」という言葉だったのを私は知らない。
「……可愛い妹の願いです。兄が叶えてあげます。ナルニッサも貴女も何も失わない。私も廃人にはならない方法で」
リオネット様は私の額にキスをした。
サンダーランドの内々の集まり。それは聖なる国中の妙齢の美姫達の集まりだった。
容姿はもちろん申し分なく、才能溢れた姫達。すでに社交の場での経験が幾度もあるであろう成熟した大人の女性もいれば、初めてと思われる若く瑞々しい娘もいる。家柄は重視されずに集められたが、その全員はサンダーランドの色香にやられて目がハート状態……。
つい先程始まったパーティー。2時間前に大号泣していた私は、何故か衛兵の格好をさせられて、ホールを見下ろす二階の警備兵として立っていた。
非常に取り乱していたリオネット様は秒でいつもの腹黒笑顔で何かを画策し、私は勢いに飲まれて、こちらでこんな格好をしている。
飾り立てられて、あの美人達と競えと言われるよりは、いくらがはマシだけど、私は何をすれば良いのでしょうか?
それにしても、あの姫達と比べたら私はちょっと生き物の種族が違うと思うレベルなのに、その中でもナルさんは異次元で綺麗だった。多分恋愛フィルターではないと思う。
会場にはナルさんのご親戚と思われるサンダーランドの若い男の子達もいて、これはナルさんだけでなく合同のお見合いなんだと分かるレベルで、サンダーランド一族が美形過ぎてすぐ分かった。
ナギア殿はそこまで、びっくり仰天するレベルでは無かったのは年齢に関係があるのかしら?サンダーランドの血って凄いなぁなどと、ピシッと立ちながら観察していた。
やきもきもしない。なぜなら、ナルさんはどの美姫にアプローチされても、無反応。
一応キョロキョロと周りを見回すが、最終的に壁の鏡で自分を見ている。
そりゃ、1番美しいのは貴方ですけど、私との約束……。
あの、涙はなんだったんだろうと思いつつ、やはり安堵していた。そこに、遅れて女性が入ってきた。
ナルさんが、その人を見た。表情は驚きの顔。そして、彼女から視線を外さない。
そのお姫様はまっすぐナルさんに近づき……、余程の美人なのか、周りの姫達は距離をとっていて……、そして彼女はナルさんに手を出した。
そのダンスの申し込みを、ナルさんは、初めて受け入れて、ホールで二人で踊り出す……。
私は2階から廊下に出た。彼女の顔は丁度背面で見えなかったけれど、顔を見にホールへ降りる勇気は無かった。
酸素が薄い。男役のダンスしか練習した事無い私でも、二人の息がぴったりで上手かったのは分かった。
苦しい。でも、耐えなきゃ。
廊下で座り込む訳にも行かず、私は唯一自分がこの城で知っている部屋……、以前私が泊めてもらった部屋に転がり込んだ。
「……これを相手にはめれば自分が相手を1番に想い、愛し、大切にするという誓いの指輪です。効果は主従の誓いより強く、両方の願いが被った時に優先されるのは指輪の方です。主従関係を切るほどの物は、間に合いませんでした」
出来ないとは言わないのですね。リオネット様。
「ありがとうございます。それではナルさんに渡してきます」
「本当に渡すのですか?」
「渡しますよ」
毎回毎回「渡すの?」と聞かれすぎて、私は苦笑しながら受け取った。リオネット様がいてくれて良かった。魔具はもちろん、精神的にも。
ナルさんはもう出なければかならないというのに、鍛錬場でトレーニングをしていた。汗をかいた後も爽やかが維持できるのは流石。
「ナルさん、もうすぐ出かける時間なんだけど、ちょっといい?」
「はい?今参ります」
汗を拭きながら近づく彼に、今日はストップをかけない。この距離の切なさと私は生きて行くと決めたのだから。
「すみません、この様な姿で」
「ううん、私が急に来たんだから」
うっすらと漂うナルさんの汗の香りで、心とは裏腹に心臓は早鐘を打つ。
「今日、ナルさんのお見合い、頑張って花嫁となるお相手を探して欲しい」
「はい、ご命令のとおりに」
笑え、私。
「それと、これを。この指輪は、はめた相手の事を大切にする誓いの指輪。お相手の左手の薬指にはめてね」
「カリン様?」
「その誓いは、主従関係の誓いより強いんだって。私は、主人よりナルさんが愛した人を大切にして欲しい」
「……それは我が兄が?」
「ううん、私の思いだよ。私はナルさんが大事で大切だから、ナルさんが本当に好きな人と結ばれて欲しいと願ってる。丁度その事に悩んでた時に、ナギア殿のお話が重なっただけなの」
ナルさんの手を取り、箱に収まった指輪を握らせた。
「後で私にも紹介してね」
「……花嫁を探す事、花嫁を決めた場合はこの指輪を使って相手に誓う事、というご命令でよろしいですか?」
「……うん」
「承知いたしました」
困惑している様だった。だけど、ナルさんは断らなかった。
流石に見送れないので、その場で行ってらっしゃいと伝えて、部屋を出る。
最後まで、僕にバレずに演技り切った。
そのまま部屋に直行。部屋まで後数十メートル。到着。扉を開けると、そこにはリオネット様。私は爆笑した。
「なんで、リオネット様がいるんですか!」
「……本当に渡すなんて」
リオネット様は乱暴に私を抱きしめた。
「アホですか?!アホですね!アホですよ!貴女、自分を壊わす気ですか?」
「意外と大丈夫ですよ?」
「その表情!鏡で良くご覧なさい!」
部屋の鏡を見ると、自然な笑顔。けれどその瞳からは涙が流れていた。
「あ、れ?」
「どうして、そんな道ばかり選ぶんですか!どうして、ズルい道を選ばない!そんなだから、私は貴女にっ!幻滅させてくれれば良かったのに!」
「リオネット、様?」
怒りで震える様にしながら、苦しみで顔を歪めてリオネット様は怒鳴りながら私を抱きしめた。
「……どうして、本気の恋なんか、したんですか……?そうでなければ、貴女の心を奪えたのに。無理矢理私が奪うのさえ躊躇わせる程の、恋なんてして欲しくなかったっ……」
リオネット様も涙を流していた。真剣に苦しんでいて、その姿は私と重なる。そっか、リオネット様は私が本当に好きだったんだ。
「ごめんなさい。リオネット様。私は貴方に恋はしません。この気持ちはナルさんだけのものです」
「でしょうね。私は貴女を殺さないと決めた日から、貴女を守ると決めたんです。ナルニッサを心から……、愛しているんですね?」
「はい。大好きです。世界一」
リオネット様を思いやる余裕はなかった。一旦流れ出した涙を止められず、私は両手で口を押さえて嗚咽を殺すのに必死だ。
本当に、壊れるかも知れない。ただ、ナルさんから何も奪いたくなかっただけなのに。
リオネット様は、一旦目を瞑り力を抜いた。
そして、微かな声で呟いた。
それが、「さようなら、愛しい女性。私が、貴女を諦めます」という言葉だったのを私は知らない。
「……可愛い妹の願いです。兄が叶えてあげます。ナルニッサも貴女も何も失わない。私も廃人にはならない方法で」
リオネット様は私の額にキスをした。
サンダーランドの内々の集まり。それは聖なる国中の妙齢の美姫達の集まりだった。
容姿はもちろん申し分なく、才能溢れた姫達。すでに社交の場での経験が幾度もあるであろう成熟した大人の女性もいれば、初めてと思われる若く瑞々しい娘もいる。家柄は重視されずに集められたが、その全員はサンダーランドの色香にやられて目がハート状態……。
つい先程始まったパーティー。2時間前に大号泣していた私は、何故か衛兵の格好をさせられて、ホールを見下ろす二階の警備兵として立っていた。
非常に取り乱していたリオネット様は秒でいつもの腹黒笑顔で何かを画策し、私は勢いに飲まれて、こちらでこんな格好をしている。
飾り立てられて、あの美人達と競えと言われるよりは、いくらがはマシだけど、私は何をすれば良いのでしょうか?
それにしても、あの姫達と比べたら私はちょっと生き物の種族が違うと思うレベルなのに、その中でもナルさんは異次元で綺麗だった。多分恋愛フィルターではないと思う。
会場にはナルさんのご親戚と思われるサンダーランドの若い男の子達もいて、これはナルさんだけでなく合同のお見合いなんだと分かるレベルで、サンダーランド一族が美形過ぎてすぐ分かった。
ナギア殿はそこまで、びっくり仰天するレベルでは無かったのは年齢に関係があるのかしら?サンダーランドの血って凄いなぁなどと、ピシッと立ちながら観察していた。
やきもきもしない。なぜなら、ナルさんはどの美姫にアプローチされても、無反応。
一応キョロキョロと周りを見回すが、最終的に壁の鏡で自分を見ている。
そりゃ、1番美しいのは貴方ですけど、私との約束……。
あの、涙はなんだったんだろうと思いつつ、やはり安堵していた。そこに、遅れて女性が入ってきた。
ナルさんが、その人を見た。表情は驚きの顔。そして、彼女から視線を外さない。
そのお姫様はまっすぐナルさんに近づき……、余程の美人なのか、周りの姫達は距離をとっていて……、そして彼女はナルさんに手を出した。
そのダンスの申し込みを、ナルさんは、初めて受け入れて、ホールで二人で踊り出す……。
私は2階から廊下に出た。彼女の顔は丁度背面で見えなかったけれど、顔を見にホールへ降りる勇気は無かった。
酸素が薄い。男役のダンスしか練習した事無い私でも、二人の息がぴったりで上手かったのは分かった。
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