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アッサムとリオネット
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仕事を片付けて家に戻ると、夜分にも関わらずリオンは居間で何かの作業をしていた。
「おかえりなさい。お疲れ様でした」
「カリンは?」
あ、と思った時には時すでに遅く、日中ずっと気にかけていた事が瞬時でバレて、リオンが吹き出した。
「いやにご執心ですね」
「……当然だろ。幻覚とはいえ、あいつを俺は刺したんだ」
呪詛の元が氷解したのは、切先がカリンの腹に触れた瞬間だった。手には柔らかい肉を切る感覚が残っている。
「流石のアッシャーも人の胴体の真ん中を貫いた経験はありませんからね」
「お前が言うと意味が変わってくんだよ。それにお前の話じゃあっちは死罰なんてねぇだろ。カリンはまだ子供みたいなもんだし、心配になるのが普通だろ」
首をすくめて微笑むリオンの様子から、カリンの状態がなんと無く予想できた。
「勇者の加護様様です。痛覚鈍麻、恐怖鈍麻、死恐怖症無効、etc。カリンは昔私があちらで会っていた頃と変わりは無い。それであの程度の修行なら、第一試合から立ちすくんでいたしょう。そして、貴方に刺された時に愚妹殿の目論見通りショック死していた」
「クソみたいな加護だが、今回は助けられたか」
「傷の修復加速に精神的回復も加速しています。イメージさえ出来れば、白魔法無くとも小指一本落としたところで次の週には生えてきてるでしょう。もちろん、魔力の核である心臓洞結節と魔力を全身へ送る核である房室結節、イメージの根幹である脳の負傷は修復できませんが……」
マニアじみたいつものリオンの説明を聞き流しながら、勇者の加護に歯噛みする。痛みを感じにくく、修復が早い。怪我や死を恐れず聖女の盾と剣となる。精神的にも支配恭順となり、ほぼ奴隷になるのが加護とは笑わせる。だからこそ召喚には立ち合い、女で無ければリオンと二人で守るつもりだった。女であれば即聖女の加護が授けられただろう。その場合は自分が勇者として恋慕させられてたはずだ。だから、それを見越して魔具で魔力を最大限まで上げて……、1時間もそのままだったら死を覚悟する程に上げて、恋慕耐性で臨んだのだ。
リオン特製の魔力排出薬の煙で直ぐに抜いたが、数日は寝るにも痛みを感じるほどだった。
「それにしても兄に対する対応と違いすぎませんか。帰還人であるか異世界人かの違いしかなかった様に思いますよ?勇者の加護と白魔道士の加護を比べれば、むしろ私の方が、か弱い様な」
「元々の性格がリオンは死罰を見に行くタイプだろうが」
「それを言われると辛いですね」
「それにお前も充分カリンに甘いだろ」
リオンはあちらでは反社会性パーソナリティ障害だったと自称している。サイコパスというやつだ。愛している、執着のある者が腕の中で事切れる瞬間に幸福を感じるタチらしい。
「……ご心配には及びませんよ。ご存知の通り私は白魔道士で今は人を殺せません。それに元々、手厚く治療し、それでもダメな場合に痛みを取る、そんな看取りの過程が重要なんです。その後私の元で静かに旅立つ……それが至上ですから。私だけを見つめたまま、その瞳の光を無くし、温もりが消える…。そんなカリンを想像だけで……」
「おい」
「失礼しました。ですから、逆に私のいない所で勝手に死なれるのは困るんですよ。それに私は貴方の事も充分愛しい。貴方が知らぬ間にどこかで野垂れ死ぬのも勿体ない」
「俺は死なねぇよ」
「アッシャーは性格に問題がありますからねぇ」
「お前だけには言われたくないぞ、そのセリフ」
「勇者の加護で少し人の痛みに鈍麻になった方が良いと思いますけど」
小さい声で言っても聞こえてんだよ。けれど無視だ。
「それで、お仕事の方はいかがでしたか?」
「上々。リオンの筋書き通りだ」
今回の出来事は罪ではあったが、国としては実害は出ていない。マンチェスター家のトラブルとして納めたのはリオンの手腕と言えるだろう。現当主とその妻はマンチェスターが領地、サルフォード地方に封じられ、その地方をリオンの監督下で管理する。マンチェスター家の権限の実際を全てリオンに譲る事で、女王陛下に許しを得た形だ。
「……どの貴族の家にも、今や座敷牢の一つや二つのありますからね。周りも騒ぎ立てると火の粉が降りかかる事を承知でしょう」
確かに現状、どの貴族の家系にも魔力が平民に劣る身内ぐらいいる。その者が妬みや嫉みから力を欲し、怨嗟が成立してしまった例はいくつもあった。能力以上の力を得て怨嗟が成立すればコントロールを失い、自我を保てなくなる。一般的には今日死罰された男の様になる事が多いが、稀に強固な意思が残り、策を弄するソフィアの様な怨嗟の発露も無くはない。
ソフィアのような発露の場合、怨嗟であると判るのは事件を起こしてからしかない。リオンの様に真実に気がついた者でも無ければ事前に察知する事は難しく、行動としては父上や母上に非はほとんどなかった。
「父上と母上の移送は明日ですか?」
「ん、ああ。ソフィアは施設に収監済みだしな。残る方が酷だ」
怨嗟が発露した期間の長い者は施設という名の檻に入る。そこで女王陛下がマナを使って怨嗟を祓うのだ。発露した者は心に弱さを持つ者が多く、更に長期間発露状態であった場合は再び怨嗟に飲まれる事が多かった。魔王を倒すまで、ソフィア達は怨嗟に飲まれるのと祓われるのを延々と繰り返し、二度と日の目は望めない……。
「父上と母上には悪い事をした。早く原因を取り除いてやるつもりだったのに」
「肝心の聖女がいませんからね、焦っては事を仕損じます。それに後々でも原因を取り除けば、回復する見込みは無くはない。私としては独りよがりで自堕落な意思しか持ち得なかった愚妹の自業自得としか感じてませんけどね」
すでにリオンは両親やソフィアには興味を失っていて、使令用の形代人形……、あちらの世界ではぬいぐるみという物を作っていた。
「いやに手間暇かけてるじゃねえか?」
「私が作った物の方がカリンの食いつきが良かったので」
嫌味は通じず、普通に返される。形代は生き物を模して作られていて、そんじょそこらの宝石よりかなり高価だ。
「それに、しばらく暇なのですよ。今は果実が実るのを待つ身。収穫の頃にはこちらが必要になる」
「また、嵌めるのか」
「……せめて、誘導と言ってもらいたいものです」
嵌められるのはカリンだけではないだろう。暇と口では言ってはいるが、仕事は自分より何倍も多い。白魔法で籠絡すれば後々足がつくからと、リオンは魔法で相手を嵌めたりはしなかった。話術に表情、仕草と先読み、それから駆け引きできる頭脳。恐れ入ったもんだ。
しかし……、
「頼りにしていますよ。なにせ私の良心はアッシャー、貴方ですから。私の行為が常人の範囲を越えれば止めてくださいね。力尽くで」
後ろを向いたまま、リオンは俺の心を読み切った。
「おかえりなさい。お疲れ様でした」
「カリンは?」
あ、と思った時には時すでに遅く、日中ずっと気にかけていた事が瞬時でバレて、リオンが吹き出した。
「いやにご執心ですね」
「……当然だろ。幻覚とはいえ、あいつを俺は刺したんだ」
呪詛の元が氷解したのは、切先がカリンの腹に触れた瞬間だった。手には柔らかい肉を切る感覚が残っている。
「流石のアッシャーも人の胴体の真ん中を貫いた経験はありませんからね」
「お前が言うと意味が変わってくんだよ。それにお前の話じゃあっちは死罰なんてねぇだろ。カリンはまだ子供みたいなもんだし、心配になるのが普通だろ」
首をすくめて微笑むリオンの様子から、カリンの状態がなんと無く予想できた。
「勇者の加護様様です。痛覚鈍麻、恐怖鈍麻、死恐怖症無効、etc。カリンは昔私があちらで会っていた頃と変わりは無い。それであの程度の修行なら、第一試合から立ちすくんでいたしょう。そして、貴方に刺された時に愚妹殿の目論見通りショック死していた」
「クソみたいな加護だが、今回は助けられたか」
「傷の修復加速に精神的回復も加速しています。イメージさえ出来れば、白魔法無くとも小指一本落としたところで次の週には生えてきてるでしょう。もちろん、魔力の核である心臓洞結節と魔力を全身へ送る核である房室結節、イメージの根幹である脳の負傷は修復できませんが……」
マニアじみたいつものリオンの説明を聞き流しながら、勇者の加護に歯噛みする。痛みを感じにくく、修復が早い。怪我や死を恐れず聖女の盾と剣となる。精神的にも支配恭順となり、ほぼ奴隷になるのが加護とは笑わせる。だからこそ召喚には立ち合い、女で無ければリオンと二人で守るつもりだった。女であれば即聖女の加護が授けられただろう。その場合は自分が勇者として恋慕させられてたはずだ。だから、それを見越して魔具で魔力を最大限まで上げて……、1時間もそのままだったら死を覚悟する程に上げて、恋慕耐性で臨んだのだ。
リオン特製の魔力排出薬の煙で直ぐに抜いたが、数日は寝るにも痛みを感じるほどだった。
「それにしても兄に対する対応と違いすぎませんか。帰還人であるか異世界人かの違いしかなかった様に思いますよ?勇者の加護と白魔道士の加護を比べれば、むしろ私の方が、か弱い様な」
「元々の性格がリオンは死罰を見に行くタイプだろうが」
「それを言われると辛いですね」
「それにお前も充分カリンに甘いだろ」
リオンはあちらでは反社会性パーソナリティ障害だったと自称している。サイコパスというやつだ。愛している、執着のある者が腕の中で事切れる瞬間に幸福を感じるタチらしい。
「……ご心配には及びませんよ。ご存知の通り私は白魔道士で今は人を殺せません。それに元々、手厚く治療し、それでもダメな場合に痛みを取る、そんな看取りの過程が重要なんです。その後私の元で静かに旅立つ……それが至上ですから。私だけを見つめたまま、その瞳の光を無くし、温もりが消える…。そんなカリンを想像だけで……」
「おい」
「失礼しました。ですから、逆に私のいない所で勝手に死なれるのは困るんですよ。それに私は貴方の事も充分愛しい。貴方が知らぬ間にどこかで野垂れ死ぬのも勿体ない」
「俺は死なねぇよ」
「アッシャーは性格に問題がありますからねぇ」
「お前だけには言われたくないぞ、そのセリフ」
「勇者の加護で少し人の痛みに鈍麻になった方が良いと思いますけど」
小さい声で言っても聞こえてんだよ。けれど無視だ。
「それで、お仕事の方はいかがでしたか?」
「上々。リオンの筋書き通りだ」
今回の出来事は罪ではあったが、国としては実害は出ていない。マンチェスター家のトラブルとして納めたのはリオンの手腕と言えるだろう。現当主とその妻はマンチェスターが領地、サルフォード地方に封じられ、その地方をリオンの監督下で管理する。マンチェスター家の権限の実際を全てリオンに譲る事で、女王陛下に許しを得た形だ。
「……どの貴族の家にも、今や座敷牢の一つや二つのありますからね。周りも騒ぎ立てると火の粉が降りかかる事を承知でしょう」
確かに現状、どの貴族の家系にも魔力が平民に劣る身内ぐらいいる。その者が妬みや嫉みから力を欲し、怨嗟が成立してしまった例はいくつもあった。能力以上の力を得て怨嗟が成立すればコントロールを失い、自我を保てなくなる。一般的には今日死罰された男の様になる事が多いが、稀に強固な意思が残り、策を弄するソフィアの様な怨嗟の発露も無くはない。
ソフィアのような発露の場合、怨嗟であると判るのは事件を起こしてからしかない。リオンの様に真実に気がついた者でも無ければ事前に察知する事は難しく、行動としては父上や母上に非はほとんどなかった。
「父上と母上の移送は明日ですか?」
「ん、ああ。ソフィアは施設に収監済みだしな。残る方が酷だ」
怨嗟が発露した期間の長い者は施設という名の檻に入る。そこで女王陛下がマナを使って怨嗟を祓うのだ。発露した者は心に弱さを持つ者が多く、更に長期間発露状態であった場合は再び怨嗟に飲まれる事が多かった。魔王を倒すまで、ソフィア達は怨嗟に飲まれるのと祓われるのを延々と繰り返し、二度と日の目は望めない……。
「父上と母上には悪い事をした。早く原因を取り除いてやるつもりだったのに」
「肝心の聖女がいませんからね、焦っては事を仕損じます。それに後々でも原因を取り除けば、回復する見込みは無くはない。私としては独りよがりで自堕落な意思しか持ち得なかった愚妹の自業自得としか感じてませんけどね」
すでにリオンは両親やソフィアには興味を失っていて、使令用の形代人形……、あちらの世界ではぬいぐるみという物を作っていた。
「いやに手間暇かけてるじゃねえか?」
「私が作った物の方がカリンの食いつきが良かったので」
嫌味は通じず、普通に返される。形代は生き物を模して作られていて、そんじょそこらの宝石よりかなり高価だ。
「それに、しばらく暇なのですよ。今は果実が実るのを待つ身。収穫の頃にはこちらが必要になる」
「また、嵌めるのか」
「……せめて、誘導と言ってもらいたいものです」
嵌められるのはカリンだけではないだろう。暇と口では言ってはいるが、仕事は自分より何倍も多い。白魔法で籠絡すれば後々足がつくからと、リオンは魔法で相手を嵌めたりはしなかった。話術に表情、仕草と先読み、それから駆け引きできる頭脳。恐れ入ったもんだ。
しかし……、
「頼りにしていますよ。なにせ私の良心はアッシャー、貴方ですから。私の行為が常人の範囲を越えれば止めてくださいね。力尽くで」
後ろを向いたまま、リオンは俺の心を読み切った。
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