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Ⅸ
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「失礼します…」
入室の許可を得て、サマンサは執務室に入る。
大きな机にはクロードが大量の書類を捌いていて
一回り小さいテーブルではセバスチャンが書類を仕分けていた。
「クロード様の休憩の時間よ。侍女長に頼んでサミーの仕事にして貰ったの。奥様のお世話をしているんだからご褒美をあげてって交渉してきたのよ」
ナタリーが誇らしげに言って、女中達も「頑張ってね」とサマンサの背中を押すのだ。
断れないサマンサは執務室に入って、俯いたままお茶の用意をする。
「どうぞ…」とお茶を差し出した時、クロードに顔を見られてしまったが何も言われなかった。
セバスチャンにもお茶を出して、何かを言われる前にさっさと退出した。
「セバスチャン、一度休憩しよう」
クロードは書類の束を片付け、サイドテーブルに置かれた紅茶を手前に持って来て一口飲んだ。
「この紅茶は…」
疲れている時に飲みたいと思ったお茶だった。
ほんのりと甘く、働きすぎた脳に糖分が染み渡る。
「頭が冴えますね。良い加減にお茶が入れられています」
セバスチャンはゆっくりとお茶を飲み、添えられているお菓子を手に取った。
「待て、何故私とお前の菓子が違うんだ?」
セバスチャンが持っているのは甘いお菓子で、クロードの前に置かれているのは甘くない物だった。
「間違えたのでしょうか?彼女は女中ですから、大目に見てあげてください。後で私から注意しておきましょう」
セバスチャンがクロードの茶菓子を下げようとすると「あぁ、だからですね」と言って、気付いた事を伝える。
「クロード様の紅茶はミルクが入っていますね。砂糖も少し入っているんじゃないですか?」
「あぁ、そうだが…」と、クロード。
「私の物は少し渋めのストレートです。紅茶に合わせて茶菓子も変えたんでしょう」
セバスチャンにそう言われてもクロードは納得出来ない。
何故二人のお茶の種類を変える必要があったのか?
セバスチャンはストレートを好むが、自分だって基本的に紅茶には何も入れない。
ただの女中が異なるお茶と茶菓子を出す意味は何なのか?
クロードが疑問に感じていると、セバスチャンが言った。
「彼女がサミーですよ。仕事のできる女中で、他の者からの信頼も厚い。フレッドに花を分けてもらっているのも彼女です」
「あの地味な女中が…?」
フレッドの意中の相手か、と勝手に考えるクロード。
特に気にしていたわけではないのだが
サマンサの用意するお茶は毎回違う物で、どれも自分がその時に飲みたいと思っていた物で驚いた。
(仕事が出来るのは本当のようだな)
クロードは今日は何を出されるのだろうと、密かに楽しみにしている。
サマンサが紅茶を入れ分けられるのは、クロードが好きだから好みを知っていたわけではない。
ローレン家にいた頃
サマンサは淑女教育の一環で家族の紅茶を入れていた。
両親は特に何も言わないのだが、姉アマンダは気分屋で
「今日は甘い紅茶が飲みたい気分だったのよ!」
「今日はストレートにして甘いケーキを食べたかったのよ!」
「今日は渋い紅茶が飲みたかったのよ!」
と、毎回サマンサの出す紅茶にダメ出しをしていた。
サマンサがアマンダの顔色を窺いながら好みの紅茶を出せるようになると
「紅茶に合わせて茶菓子も変えなさいよ!気が利かないわね!」
と怒鳴り、アマンダが満足するまで長い年月が掛かった。
両親もアマンダに倣って注文を付けてくるようになる。
ハーブティーが飲みたい。
自分だけのブレンドを作りなさい。
茶菓子に合わせて選びなさい。
言わなくてもどれが飲みたいのか察しなさい。
気分屋の家族3人の顔を観察して出すお茶を変えられるようになったサマンサは、クロードとセバスチャンのお茶を変えることなど朝飯前だった。
「サミー、いつも美味しいお茶をありがとう。セバスチャンも喜んでいるよ」
クロードが掃除中のサマンサに一言言って去っていく。
女中達は甲高い奇声を上げて
「良かったわね!」と、サマンサを囲った。
「えぇ、良かったわ…(私だと気付かれなくて)」と答えると、みんなは嬉しそうな顔をしていた。
そんなある日、サマンサがいつもの様に執務室にお茶を持って行くと
クロードが難しい顔をしてセバスチャンと話していた。
「早く家督を譲ってくれれば良いものを…、来週父上達がこの屋敷に様子を見に来ると言っているんだ。夜会だけでも充分なのに、家でもあれと過ごさなくてはいけないと思うとゾッとする」
「旦那様達はどれくらい滞在されるのですか?」
「2日だ」
セバスチャンはサマンサに
「サミー、予定を開けておくように奥様に伝えてくれるね?」
と頼み、サマンサは執務室を出る。
(契約結婚のことは他言無用だと言っていたわよね…?あんな言い方をしてしまったら、わかってしまうと思うのだけど…)
サマンサは不審に思いながら、ナタリー達に伝えた。
「奥様として堂々と隣にいれるのね?私達に任せて!」
一週間後の公爵夫妻の訪問に向けて、各々が準備を始める。
そして迎えた訪問日。
「やっぱり女主人がいると屋敷が華やかになるわね」
公爵夫人のオリビアが、屋敷に飾られた花を見て感激していた。
「わざわざ来なくても良かったのに…。まぁ、歓迎しますよ。寛いでください」
クロードが自分の両親を迎える。
「こうでもしないと会えないじゃないか。勝手に式も上げて私達は嫁の顔すら見ていないんだよ?あぁ、君がサマンサだね。息子を宜しく頼むよ」
公爵のスコットがサマンサに挨拶をした。
「まぁ、可愛らしいお嬢さんね。社交界での噂は聞いているわ。女同士でお話しましょうね」
オリビアはサマンサを引っ張って四阿に連れて行く。
「母上!勝手なことをされては困ります!」
クロードが後を追おうとしたが、スコットに止められてしまう。
「まぁまぁ、私達も話をしようではないか」
二人は応接室で話すことになった。
「クロードとは上手くやっているかしら?あの子は気難しい子でしょう?社交界では仲が良いって噂だけど、無理していないか心配していたのよ」
侍女の用意したお茶を飲みながらオリビアがサマンサに尋ねる。
「えぇ。クロード様は私に命令をしたり不満を言わないので感謝しています。この屋敷での生活も楽しくて、時間を忘れてしまうほどですわ」
「本当に?遠慮しなくてもいいのよ」
オリビアは「なんでも言ってちょうだい」とサマンサを促す。
「行き遅れの私を選んで頂けただけでもありがたいと思っています。これ以上望むものなどありませんわ…」
(お給金も充分貰っているもの…)と、サマンサは心の中で答えた。
「なんて健気なの。何かあったら私に言うのよ?」
オリビアは健気で優しいサマンサのことが好きになった。
入室の許可を得て、サマンサは執務室に入る。
大きな机にはクロードが大量の書類を捌いていて
一回り小さいテーブルではセバスチャンが書類を仕分けていた。
「クロード様の休憩の時間よ。侍女長に頼んでサミーの仕事にして貰ったの。奥様のお世話をしているんだからご褒美をあげてって交渉してきたのよ」
ナタリーが誇らしげに言って、女中達も「頑張ってね」とサマンサの背中を押すのだ。
断れないサマンサは執務室に入って、俯いたままお茶の用意をする。
「どうぞ…」とお茶を差し出した時、クロードに顔を見られてしまったが何も言われなかった。
セバスチャンにもお茶を出して、何かを言われる前にさっさと退出した。
「セバスチャン、一度休憩しよう」
クロードは書類の束を片付け、サイドテーブルに置かれた紅茶を手前に持って来て一口飲んだ。
「この紅茶は…」
疲れている時に飲みたいと思ったお茶だった。
ほんのりと甘く、働きすぎた脳に糖分が染み渡る。
「頭が冴えますね。良い加減にお茶が入れられています」
セバスチャンはゆっくりとお茶を飲み、添えられているお菓子を手に取った。
「待て、何故私とお前の菓子が違うんだ?」
セバスチャンが持っているのは甘いお菓子で、クロードの前に置かれているのは甘くない物だった。
「間違えたのでしょうか?彼女は女中ですから、大目に見てあげてください。後で私から注意しておきましょう」
セバスチャンがクロードの茶菓子を下げようとすると「あぁ、だからですね」と言って、気付いた事を伝える。
「クロード様の紅茶はミルクが入っていますね。砂糖も少し入っているんじゃないですか?」
「あぁ、そうだが…」と、クロード。
「私の物は少し渋めのストレートです。紅茶に合わせて茶菓子も変えたんでしょう」
セバスチャンにそう言われてもクロードは納得出来ない。
何故二人のお茶の種類を変える必要があったのか?
セバスチャンはストレートを好むが、自分だって基本的に紅茶には何も入れない。
ただの女中が異なるお茶と茶菓子を出す意味は何なのか?
クロードが疑問に感じていると、セバスチャンが言った。
「彼女がサミーですよ。仕事のできる女中で、他の者からの信頼も厚い。フレッドに花を分けてもらっているのも彼女です」
「あの地味な女中が…?」
フレッドの意中の相手か、と勝手に考えるクロード。
特に気にしていたわけではないのだが
サマンサの用意するお茶は毎回違う物で、どれも自分がその時に飲みたいと思っていた物で驚いた。
(仕事が出来るのは本当のようだな)
クロードは今日は何を出されるのだろうと、密かに楽しみにしている。
サマンサが紅茶を入れ分けられるのは、クロードが好きだから好みを知っていたわけではない。
ローレン家にいた頃
サマンサは淑女教育の一環で家族の紅茶を入れていた。
両親は特に何も言わないのだが、姉アマンダは気分屋で
「今日は甘い紅茶が飲みたい気分だったのよ!」
「今日はストレートにして甘いケーキを食べたかったのよ!」
「今日は渋い紅茶が飲みたかったのよ!」
と、毎回サマンサの出す紅茶にダメ出しをしていた。
サマンサがアマンダの顔色を窺いながら好みの紅茶を出せるようになると
「紅茶に合わせて茶菓子も変えなさいよ!気が利かないわね!」
と怒鳴り、アマンダが満足するまで長い年月が掛かった。
両親もアマンダに倣って注文を付けてくるようになる。
ハーブティーが飲みたい。
自分だけのブレンドを作りなさい。
茶菓子に合わせて選びなさい。
言わなくてもどれが飲みたいのか察しなさい。
気分屋の家族3人の顔を観察して出すお茶を変えられるようになったサマンサは、クロードとセバスチャンのお茶を変えることなど朝飯前だった。
「サミー、いつも美味しいお茶をありがとう。セバスチャンも喜んでいるよ」
クロードが掃除中のサマンサに一言言って去っていく。
女中達は甲高い奇声を上げて
「良かったわね!」と、サマンサを囲った。
「えぇ、良かったわ…(私だと気付かれなくて)」と答えると、みんなは嬉しそうな顔をしていた。
そんなある日、サマンサがいつもの様に執務室にお茶を持って行くと
クロードが難しい顔をしてセバスチャンと話していた。
「早く家督を譲ってくれれば良いものを…、来週父上達がこの屋敷に様子を見に来ると言っているんだ。夜会だけでも充分なのに、家でもあれと過ごさなくてはいけないと思うとゾッとする」
「旦那様達はどれくらい滞在されるのですか?」
「2日だ」
セバスチャンはサマンサに
「サミー、予定を開けておくように奥様に伝えてくれるね?」
と頼み、サマンサは執務室を出る。
(契約結婚のことは他言無用だと言っていたわよね…?あんな言い方をしてしまったら、わかってしまうと思うのだけど…)
サマンサは不審に思いながら、ナタリー達に伝えた。
「奥様として堂々と隣にいれるのね?私達に任せて!」
一週間後の公爵夫妻の訪問に向けて、各々が準備を始める。
そして迎えた訪問日。
「やっぱり女主人がいると屋敷が華やかになるわね」
公爵夫人のオリビアが、屋敷に飾られた花を見て感激していた。
「わざわざ来なくても良かったのに…。まぁ、歓迎しますよ。寛いでください」
クロードが自分の両親を迎える。
「こうでもしないと会えないじゃないか。勝手に式も上げて私達は嫁の顔すら見ていないんだよ?あぁ、君がサマンサだね。息子を宜しく頼むよ」
公爵のスコットがサマンサに挨拶をした。
「まぁ、可愛らしいお嬢さんね。社交界での噂は聞いているわ。女同士でお話しましょうね」
オリビアはサマンサを引っ張って四阿に連れて行く。
「母上!勝手なことをされては困ります!」
クロードが後を追おうとしたが、スコットに止められてしまう。
「まぁまぁ、私達も話をしようではないか」
二人は応接室で話すことになった。
「クロードとは上手くやっているかしら?あの子は気難しい子でしょう?社交界では仲が良いって噂だけど、無理していないか心配していたのよ」
侍女の用意したお茶を飲みながらオリビアがサマンサに尋ねる。
「えぇ。クロード様は私に命令をしたり不満を言わないので感謝しています。この屋敷での生活も楽しくて、時間を忘れてしまうほどですわ」
「本当に?遠慮しなくてもいいのよ」
オリビアは「なんでも言ってちょうだい」とサマンサを促す。
「行き遅れの私を選んで頂けただけでもありがたいと思っています。これ以上望むものなどありませんわ…」
(お給金も充分貰っているもの…)と、サマンサは心の中で答えた。
「なんて健気なの。何かあったら私に言うのよ?」
オリビアは健気で優しいサマンサのことが好きになった。
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