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Ⅱ
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「急に白紙に戻したいだなんて…。デイビッド君はどうしてしまったんだろうね」
アーノルドはこんなに令嬢らしい令嬢のサマンサの何がいけなかったのか
二人はあんなに仲良くやっていたのにと、不思議でならなかった。
「まぁ、決まってしまったのは仕方がない。次の婚約者を探そう」
そうして決まったのが、別の伯爵家嫡男のケビンだった。
ケビンの家は大きな商会を営んでいて、同じ伯爵家でもローレン家とは違う、とても裕福な家の息子だった。
自分で接客もするケビンは物腰が柔らかく、いつも流行りの服や小物を身に着けている。
そんなケビンが求めるものは
顧客になりそうな貴族家の伝手と商品の宣伝をしてくれる女性。
サマンサはケビンに贈られたドレスや髪飾りを付けてお茶会に参加するようになる。
しかし、いくら良い物を身に纏おうと、サマンサは地味な令嬢。
期待するほど宣伝効果は得られなかった。
それならば、自ら他の令嬢たちに商品を勧めて購入してもらおうと、ケビンはサマンサに頼んでお茶会に一緒に参加できるようにしてもらう。
そこで出会ったのはローラという綺麗な男爵令嬢。
彼女なら人の目を引くし、社交性もある。
ケビンはその場に持ってきた中で一番高価なネックレスを贈った。
当初は購入してもらう予定だったのだが、今後の利益を考えればネックレス一つくらいなんて事はない。
ケビンの予想は的中し、ローラに贈ったネックレスと同じ物が欲しいと年頃の令嬢達が商会に押しかけた。
ケビンは知らない。
お茶会でローラにネックレスを贈った事で、サマンサがみんなから下に見られてしまった事を……
ケビンはサマンサにドレスや髪飾りを贈っても、アクセサリーを贈った事は無かった。
運の悪いことに、ローラに贈ったネックレスはケビンの瞳の色の宝石を使用していた。
この日から、ローラがサマンサをお茶会に招待する時は必ずケビン同伴でと言うようになり
サマンサもそれに従ってケビンと一緒に参加するようになる。
ローラはサマンサには告げずにケビンの商会に通うようになり、二人が密会する機会が増えていった。
最初は顧客として対応していたケビンだったが、社交的で美人なローラに惹かれていく。
友人の多いローラはケビンの為に顧客を増やし、お茶会や外出先で自分の着るドレスを紹介して、何人もの令嬢達を商会に送ってケビンを喜ばせる。
当然のように、どのお茶会もサマンサは招待されていない。
サマンサは半年振りにお茶会に招待されて、ローラの屋敷に訪れていた。
(ここに来るのも久しぶりね。今日はケビン様と一緒じゃなくても良いのかしら?)
サマンサが使用人に案内されて裏庭に行くと、そこにはローラとケビンが並んで座っていた。
「サマンサ、いらっしゃい。そこに座って」
ローラが指したのは二人の前の席。
ケビンの婚約者は自分なのに、なぜこの配置なんだろう?
サマンサは疑問に思ったが、何も言わずに座った。
「申し訳ないけど、君との婚約は白紙に戻したいんだ。僕にはローラが必要なんだ」
ケビンが挨拶もせずにいきなり謝罪する。
「ごめんなさいね。でも、私の方がケビン様のお力になれるわ。サマンサは私の大切なお友達だもの。私達を応援してくれるわよね?」
ローラがサマンサの両手を握って、笑顔で尋ねた。
「そうね…。ローラは綺麗だから、私よりもケビン様の贈り物も似合っているわ。お友達も多いものね。私は二人を応援するわ」
突然のことに驚いたサマンサだったが、拒否する理由もない。
「そう…、良かったわ。これからもよろしくね。ケビン様を紹介してくれてありがとう」
「ローラに会えたのは君のおかげだよ。僕達が二人で会えていたのも、君が何も言わないで僕たちの言うことに従ってくれたからだ。ありがとう」
ケビンとローラは手を取り合って、サマンサに感謝した。
サマンサはすぐに屋敷を出て、そのまま孤児院に向かった。
御者にお金を渡し、後で迎えに来てもらうように頼む。
「サマンサ!急にどうしたの?」
孤児院からエマが出てきた。
長いこと通っている孤児院もだいぶ顔ぶれが変わってしまった。
成人した子供たちは孤児院を出て、それぞれ立派に働いている。それでも小さな子供は増えているので、ここは変わらず賑やかだった。
一番仲が良いのはサマンサと同じ年の孤児で、成人してもそのまま孤児院に残って働くようになったエマ。
「エマ!聞いて欲しいの。また婚約が破談になってしまったわ」
サマンサにとってエマは唯一無二の親友で、何でも話せる掛け替えのない存在だった。
ことの詳細を聞いたエマは憤慨していた。
「何よそれ!信じられない!ケビンもローラも最低だわ!」
「別にいいのよ。二人のことを考えると、それが一番良かったもの。ただ…、お父様になんて言われてしまうかが心配だわ」
「サマンサ…」
エマはサマンサが心配で仕方がなかった。
いつも相手の言うことに従って、自分の意見を言うことをしない。
素の自分を曝け出せるのはこの孤児院でだけ。
理不尽に利用されて捨てられたのに、二人の望むことだからと許してしまうなんて…
屋敷に帰って行くサマンサを見送って、エマは祈っていた。
(どうか、サマンサが本当の自分を出せる人が現れますように…。サマンサを受け入れてくれる人が現れますように…。サマンサが幸せになりますように…)
屋敷に戻ったサマンサはアーノルドに叱責されてしまう。
「お前は何をやっているんだ!よりによって男爵家の娘に婚約者を盗られるとは!デイビッド君のことも、お前が原因なんじゃないだろうな!」
「反省していなさい!」と、サマンサは今日の夕食は抜き、そして一週間の外出禁止の罰を与えられてしまった。
「アマンダはこんなに良くやっているのに…。サマンサは手の掛からない子だと思っていたのだけれど、姉妹でどうしてこうも違うのかしら?」
「私はお母様を見倣っているだけですわ。サマンサは人形のように頷くことしか出来ないんですもの。殿方が嫌になってしまうのも仕方のないことですわ」
グレイスもアマンダも、叱られるサマンサを見て心配するどころか、呆れて貶すだけだった。
アーノルドはこんなに令嬢らしい令嬢のサマンサの何がいけなかったのか
二人はあんなに仲良くやっていたのにと、不思議でならなかった。
「まぁ、決まってしまったのは仕方がない。次の婚約者を探そう」
そうして決まったのが、別の伯爵家嫡男のケビンだった。
ケビンの家は大きな商会を営んでいて、同じ伯爵家でもローレン家とは違う、とても裕福な家の息子だった。
自分で接客もするケビンは物腰が柔らかく、いつも流行りの服や小物を身に着けている。
そんなケビンが求めるものは
顧客になりそうな貴族家の伝手と商品の宣伝をしてくれる女性。
サマンサはケビンに贈られたドレスや髪飾りを付けてお茶会に参加するようになる。
しかし、いくら良い物を身に纏おうと、サマンサは地味な令嬢。
期待するほど宣伝効果は得られなかった。
それならば、自ら他の令嬢たちに商品を勧めて購入してもらおうと、ケビンはサマンサに頼んでお茶会に一緒に参加できるようにしてもらう。
そこで出会ったのはローラという綺麗な男爵令嬢。
彼女なら人の目を引くし、社交性もある。
ケビンはその場に持ってきた中で一番高価なネックレスを贈った。
当初は購入してもらう予定だったのだが、今後の利益を考えればネックレス一つくらいなんて事はない。
ケビンの予想は的中し、ローラに贈ったネックレスと同じ物が欲しいと年頃の令嬢達が商会に押しかけた。
ケビンは知らない。
お茶会でローラにネックレスを贈った事で、サマンサがみんなから下に見られてしまった事を……
ケビンはサマンサにドレスや髪飾りを贈っても、アクセサリーを贈った事は無かった。
運の悪いことに、ローラに贈ったネックレスはケビンの瞳の色の宝石を使用していた。
この日から、ローラがサマンサをお茶会に招待する時は必ずケビン同伴でと言うようになり
サマンサもそれに従ってケビンと一緒に参加するようになる。
ローラはサマンサには告げずにケビンの商会に通うようになり、二人が密会する機会が増えていった。
最初は顧客として対応していたケビンだったが、社交的で美人なローラに惹かれていく。
友人の多いローラはケビンの為に顧客を増やし、お茶会や外出先で自分の着るドレスを紹介して、何人もの令嬢達を商会に送ってケビンを喜ばせる。
当然のように、どのお茶会もサマンサは招待されていない。
サマンサは半年振りにお茶会に招待されて、ローラの屋敷に訪れていた。
(ここに来るのも久しぶりね。今日はケビン様と一緒じゃなくても良いのかしら?)
サマンサが使用人に案内されて裏庭に行くと、そこにはローラとケビンが並んで座っていた。
「サマンサ、いらっしゃい。そこに座って」
ローラが指したのは二人の前の席。
ケビンの婚約者は自分なのに、なぜこの配置なんだろう?
サマンサは疑問に思ったが、何も言わずに座った。
「申し訳ないけど、君との婚約は白紙に戻したいんだ。僕にはローラが必要なんだ」
ケビンが挨拶もせずにいきなり謝罪する。
「ごめんなさいね。でも、私の方がケビン様のお力になれるわ。サマンサは私の大切なお友達だもの。私達を応援してくれるわよね?」
ローラがサマンサの両手を握って、笑顔で尋ねた。
「そうね…。ローラは綺麗だから、私よりもケビン様の贈り物も似合っているわ。お友達も多いものね。私は二人を応援するわ」
突然のことに驚いたサマンサだったが、拒否する理由もない。
「そう…、良かったわ。これからもよろしくね。ケビン様を紹介してくれてありがとう」
「ローラに会えたのは君のおかげだよ。僕達が二人で会えていたのも、君が何も言わないで僕たちの言うことに従ってくれたからだ。ありがとう」
ケビンとローラは手を取り合って、サマンサに感謝した。
サマンサはすぐに屋敷を出て、そのまま孤児院に向かった。
御者にお金を渡し、後で迎えに来てもらうように頼む。
「サマンサ!急にどうしたの?」
孤児院からエマが出てきた。
長いこと通っている孤児院もだいぶ顔ぶれが変わってしまった。
成人した子供たちは孤児院を出て、それぞれ立派に働いている。それでも小さな子供は増えているので、ここは変わらず賑やかだった。
一番仲が良いのはサマンサと同じ年の孤児で、成人してもそのまま孤児院に残って働くようになったエマ。
「エマ!聞いて欲しいの。また婚約が破談になってしまったわ」
サマンサにとってエマは唯一無二の親友で、何でも話せる掛け替えのない存在だった。
ことの詳細を聞いたエマは憤慨していた。
「何よそれ!信じられない!ケビンもローラも最低だわ!」
「別にいいのよ。二人のことを考えると、それが一番良かったもの。ただ…、お父様になんて言われてしまうかが心配だわ」
「サマンサ…」
エマはサマンサが心配で仕方がなかった。
いつも相手の言うことに従って、自分の意見を言うことをしない。
素の自分を曝け出せるのはこの孤児院でだけ。
理不尽に利用されて捨てられたのに、二人の望むことだからと許してしまうなんて…
屋敷に帰って行くサマンサを見送って、エマは祈っていた。
(どうか、サマンサが本当の自分を出せる人が現れますように…。サマンサを受け入れてくれる人が現れますように…。サマンサが幸せになりますように…)
屋敷に戻ったサマンサはアーノルドに叱責されてしまう。
「お前は何をやっているんだ!よりによって男爵家の娘に婚約者を盗られるとは!デイビッド君のことも、お前が原因なんじゃないだろうな!」
「反省していなさい!」と、サマンサは今日の夕食は抜き、そして一週間の外出禁止の罰を与えられてしまった。
「アマンダはこんなに良くやっているのに…。サマンサは手の掛からない子だと思っていたのだけれど、姉妹でどうしてこうも違うのかしら?」
「私はお母様を見倣っているだけですわ。サマンサは人形のように頷くことしか出来ないんですもの。殿方が嫌になってしまうのも仕方のないことですわ」
グレイスもアマンダも、叱られるサマンサを見て心配するどころか、呆れて貶すだけだった。
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