虹色の召喚術師と魔人騎士

夏庭西瓜

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2章:上限突破

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 毎回同じ光景が広がる召喚島だが、少しずつ成長しているのかもしれない。
 何となく上に伸びている気がする朱色の円柱の間からぶら下がっている白布も、幾分高い位置から垂れている。
 
 白い獣の姿で現れた案内人は、座った状態でも私と同程度の背丈になっていた。こっちは、かなりの急成長だ。
 
「貯蔵するってことは…幻獣レベルも成長するんだっけ」
「そうだね。ステータスを出すよ」

 案内人の朱色の目が斜め上を見る。その空間に、半透明の長方形が現れた。画面を映すモニターだ。
 そこには、単語と数字と記号だけが並んでいた。
 
 
【ステータス】

世界ランク:1
レベル:13
幻獣レベル:58
拠点レベル:10
累積幻力:1805500

術力:1050000
幻力:・・・・5
攻撃力:測定無し
防御力:10000
回復力:10000
生命力:21×()5
スキル:なし(取得待ち)
特殊能力:ランク上限突破
術:

宝石硬貨:0パル
星内貨幣:0シェル
寄付点数:500ポイント

ログインポイント:2
通常ポイント:0
貯蔵幻力:120550

【拠点装備】
●防衛装備
対防御装備:レベル10
軽減装備:レベル1
 L属性特化機能:レベル1
無効化装備:レベル10(制限下)
 L属性特化機能:レベル10(制限下)
  L全属性対応機能:レベル10
 L無効化回復機能:レベル10
反射装備:レベル1
 L吸収切替機能:レベル1
  L吸収回復機能:レベル1

●迎撃装備

●移動装備
速度強化装備:レベル10
速度耐久装備:レベル10
瞬発力強化装備:レベル10
衝撃無効装備:レベル1
飛行移動装備:レベル1
水上移動装備:レベル1
水中移動装備:レベル1
潜水装備:レベル1
打上装備:レベル1
星間移動装備:レベル1
航法


「…長い」

 長すぎて目がちかちかしてきた。
 ごちゃごちゃしてるし測定できてもいないし頼んでもいない装備がくっついてもいるし多分必要だった装備のレベルが上がってない。
 案内人に任せたから、装備については別にいいんだけど。

「見るの疲れるからいいや。必要な時だけ教えてよ」
「分かった。ヴィータは何かスキルを取得する?」
「えーと…何だっけ?」
「レベル10になると1つスキルを覚えることが出来るんだよ。昨日、鑑定スキルの話をしていたけど、鑑定スキルにする?」
「そうだね。それで」

 応じると、表示されたままのステータス内に、『スキル:鑑定』が加筆された。
 
「とりあえず…家の内壁が鉄板なのは、人間にとって辛いと思うんだけど、どう思う?」
「拠点の材質を変更する?内壁を3層構造にして一番内側に衝撃緩和材を入れるよ」
「急発進すると中に居る人も物も飛ぶから、ベルトで固定すべきだと思う」
「発信前に固定するよう変更するね」

 レベルが58まで成長した案内人は、最終確認をしてこない。
 貯蔵幻力の数字がどんどん減っていくのを眺めながら、召喚できるだけのポイントが残るだろうかと思っていたら、獣は私へ視線を送って来た。
 
「何を召喚するの?」
「ルーリアは5人実体化してたんだよなぁ…。ミッションやクエストするならやっぱり5人くらい必要なんじゃないの」
「内容によるよ」
「少ないよりは多いほうがいいんじゃない?11回の連続召喚を1回だけして、5個くらいずつ寝台と食器と…食事用の匙とか欲しいな。それで食材と…かはテキトーにシロが召喚回しちゃってよ」
「必要なものはそれだけなの?」
「何が要るかは、みんなに訊かないとわからないな」

 画面に映る文字の背面は薄く白光している。何度か瞬きしたけど字がぼやけて見えだした。
 
「そろそろ寝たいし、任せるよ」
「分かった。『課金召喚【祈】』だね。召喚して」

 レベルが58にもなると、あの丁寧な説明はもうしてくれないらしい。
 勝手に判断してくれるのは楽だけど、それだと私はなんにも覚えないぞ?
 
「…ペナルティがあるんだっけ」

 自動的に貯蔵幻力を寄付ポイントに変換して、それがまた自動で減算されたのを見つつ、私は白い布の正面に立った。
 弱い風が吹き続けて、小さな鈴の音が鳴っている。
 
 召喚にペナルティがある間は、上位の英雄は召喚されにくいと言っていた。
 私には一人、呼びたい英雄がいる。けれども、彼女は少なくともスーパーレア以上になるだろう。今、召喚できる確率は低い。
 敢えて危険なルートを選ぶ必要も今はないけど、あまりのんびりしている時間もないと思う。
 
「召喚」

 私の言葉に応じて、白い布が捲れる。その向こう側に見える黒い渦は、初めて召喚をした時と同じ光景だ。
 光と共に飛んできた11枚のカードは私の手に収まり、私はそれを地面の上に広げた。
 
「…レアが2枚、ノーマルレアが2枚、ノーマルが7枚…かな」

 その全てが、初めて見るカードだった。
 前回は初回限定の…無料の召喚だったから、出てくるカードの種類が違うのかもしれない。
 
「…2人?」

 レアのカードもそれぞれ別のカードだったけど、その内の1枚には2人の絵が描かれていた。
 
 
【別たれし運命】守護騎士ナギ&歌姫フィレーネ
 騎士はその日、歌姫を失った。
 今もその魂を追い、守っている。

【カードランク】
 シークレットレア
【レベル】
 10
【性別】
 ―
【年齢】
 16
【属性】
 地/光/聖
【種族】
 人間
【所属】
 ダルゥザ
【攻撃力】
 3000
【防御力】
 6000
【回復力】
 10000
【通常スキル】
 剣/盾
 歌唱/光術
【特殊スキル】
 糸
 

「シークレットレアってことは…何だっけ」
「隠された能力を持っているけど、開放にはアイテムが必要だね」
「へぇ…」

 歌姫の魂を騎士が護ってるらしいから、歌姫は死んでるのかな。
 だから呼び出すのは騎士1人だけで、歌姫は守護霊のような…そういう感じなのかも。
 
「こっちはただのレアだ」

 もう1枚のほうのカードも見てみる。
 
 
【鳥籠の王】フェリティック
 王として育てられた男。
 全てが偽物だと知り、殻に閉じ籠っている。

【カードランク】
 レア
【レベル】
 5
【性別】
 男
【年齢】
 48
【属性】
 地
【種族】
 半人
【所属】
 なし
【攻撃力】
 10000
【防御力】
 1000
【回復力】
 1000
【通常スキル】
 短剣/格闘
 闇術
【特殊スキル】
 魔人化
 
 
「…どっちも訳ありだなぁ」
「実体化する?」
「歌姫はしたいね。歌が聴きたい」

 実体化しても歌姫は出て来ない気もするけど。
 
「後は…ノーマルレアも別々のカードで…ノーマルは2枚ずつか」


【火の狩人】イギラク
 獣を狩って生活する狩人。
 火術を得意とする為、何度か森を燃やしている。

【カードランク】
 ノーマルレア
【レベル】
 15
【性別】
 男
【年齢】
 85
【属性】
 火
【種族】
 耳長
【所属】
 なし
【攻撃力】
 4000
【防御力】
 2000
【回復力】
 1000
【通常スキル】
 弓
 火術
【特殊スキル】
 なし
 
 
 【死鳥】ガリア
 白昼堂々と獲物を斃す暗殺者。
 上空から飛来する為、死神と呼ばれる事もある。

【カードランク】
 ノーマルレア
【レベル】
 10
【性別】
 女
【年齢】
 19
【属性】
 風
【種族】
 鳥人
【所属】
 寂莫(せきばく)
【攻撃力】
 3000
【防御力】
 1000
【回復力】
 2000
【通常スキル】
 短剣
 暗殺
 風術
【特殊スキル】
 なし
 
 
「…ん~…?」
 2枚ずつあるノーマルのほうは、軽く文章だけ読む。
 

 【貧困街の商人】ロート
 金銭的に貧しい人々が集う通りで店を構える商人。
 通りに住む人々を雇おうとしている。
【カードランク】
 ノーマル
 
 
 【修道娘】ララ
 修道院で身寄りのない子供たちの世話をしている修道女。
 未来に希望が持てず悩んでいる。
【カードランク】
 ノーマル
 
 
「シロ。このカードって全部…何かある感じ?訳ありとか、悩んでるとか、追われてるとか…そういう感じがする」
「寄付ポイントで召喚する『課金召喚【祈】』は、神への祈り、神からの救済を象徴しているんだ。だから召喚する英雄も、救いを求めていたり、誰かを救おうとしていたりする事が多いよ」
「ちょっと重くない?もう少しラクな人生歩んでる人がいいよ」
「課金召喚の種類を変えれば、違う英雄を召喚出来るよ」

 とは言うけれど、現時点では寄付ポイントで召喚するしか無いから、他は選べない。
 とりあえず、今回召喚したカードの中で、誰を実体化するかだけど…。
 
 この中ではなんか面白そうな火の狩人は、私のレベル不足で実体化できない。
 やっぱり守護騎士&歌姫かな。後はいろいろ面倒そうだ。
 
「実体化は3人でいいんだね?」
「いいよ。ラーデルも出来るならやっておいて。それから…」

 守護騎士&歌姫カードを召喚箱に。残りのカードを待機箱に片付け、私は土の上に座った。
 心地よい鈴の音が重複して周囲を包み込む感覚が、心地よい。
 
「ここで、寝ていい?」
「ダメだよ」

 白い獣に後ろ襟を銜えられたまま、私は召喚島から拠点の2階に戻って来た。
 拠点に移動した瞬間、私は床に倒れ込む。
 案内人はいつも通り拠点兼銀球になっているのだろう。机の辺りから声がした。
 
「1階に4人いるけど、どうするの?」
「…ねる…」

 床に突っ伏しながら、私は軽く手を上げる。
 でも、意識があったのはそこまでだ。
 やけに体が沈み込む、面している部分を包み込むような床の感触を、衝撃緩和材ってこんなに柔らかいんだぁ…と意識のどこかで感じつつ、私は眠りについた。
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