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2章:上限突破
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そこそこ広いだけの小屋の中で、私は3人の男たちに見つめられていた。
見つめる、というより、凝視されている。
「…話の流れで行きゃあ、食料だよな」
「食料は最低限でも何とかなります。問題は水ですね。水が無ければ動けなくなりますから」
「ここは岩山だよな。朝に山を下って水源探すか…」
「でも…ここってどの辺なんですかね~?すごく高い山みたいでしたよ」
「召喚術師殿。ここがどこか分かるか?」
「シロ。この辺の地図ってある?」
机の上に置いた銀の球に向かって声をかけると、3人もそちらを見た。
「拠点の周囲か召喚術師が行った場所しか『地図』は見えないんだ。今は、ほとんど真っ白だよ。だから、人がいる町や村が近くにあるかは分からないね」
「水源が知りたいみたいだよ」
「『地図』には細かい事は表示されないんだ」
拠点があるんだから、野営なんて想定してないんだろう。
風龍の棲む山で初日を終えるというのも、多分想定されてない。
「手描きか…。マッピングは苦手なんだよな…」
「そうですね…。王国内は地図が完成されてましたし…」
「…って言うか、なんで召喚術師殿はこんな山にいるんだ?」
「私はこの星の人じゃないから、よくわからないよ。この星に来てからこの山しかまだ見てないし」
「…ハードモードってヤツか?別の星から来たヤツがたまにそう言ってたな」
「そうなんだ?」
とりあえず、食料も大事だけど水のほうが重要だということはわかった。
神殿が乾燥地帯にあるのでなければ、水くらいはありそうだ。
「シロ。神殿で買い物できるかな。水と、出来れば食料が欲しいんだけど」
「この地域の神殿に繋ぐね」
そう言うと、銀の球は光り始めた。その光は置かれている机の上に注がれ、やがて光は1枚の紙に変化する。
その紙には、文字が並んでいた。
【風龍神殿】
『購入』
・白色の花『オブラザード』
・エリンデルケ
・魔力水晶5型
『販売』
・魔力石『テン・ルーザ』
・ポルパト
・羅針の杖『エイルドル』
【風花の滝神殿】
『購入』
・光花
・ラバンドルクス
・妖精の糸
『販売』
・風花水
・水精の布
・幻獣『ファラス』
【レンデル神殿】
『購入』
・魔生物『ドル』全般
・龍のあやかし
・時煙
『販売』
・魔力石『ファム・ループ』
・守衛『ドンリファ』
・紅玉『プラフ』
「…何の売買か、ひとつもわからないんだけど」
ひとつだけわかったのは、この周辺には3か所神殿がある。ということだ。
行く必要があるのかはわからない。
「…おそらく…高級品です。高級品、の一言で片付けられるような品物ではなく…この世に同じ物が数品しかないような…貴重な品が幾つもあるのではないでしょうか」
「欲しいのは水と食料なんだけどなぁ…」
「見て下さい、これ!風花の滝神殿で、風花水というのが売られてるみたいですよ!」
「どう見てもただの水じゃねぇだろ。…大体、召喚術師殿は金とか持ってるのか?」
「お金はないけど、なんかポイントで買えるみたいだよ。どうしよ。風花水買ってみる?」
「買えんのか…?」
「ヴィータ様は召喚術師として日が浅いようですし、資産を無駄に使っている場合ではないと思います。確実に、必要だと分かっている物を買うほうが良いかと」
「シロ。どこにでもある水とか食料とか欲しいんだけど、どこか買えるところ無い?」
「シェルでしたら私も少しは持ち合わせがあります」
傍でティセルが口添えする。
「召喚術師だけが使える市場があるよ。でも、『世界ランク』が3以上じゃないと使えないんだ」
「ん~…他に買い物出来そうなところは無い?」
「『風岩山脈』には無いみたいだよ」
風岩山脈というのは、この周辺の山々のことだろう。
「明日、この拠点で山を下るだけ下ってから、考えたほうがいいんじゃねぇのか」
「そうですね。村や集落が付近にあるとも限りませんし、日が昇ってからすぐに出発したほうが良いかと思います。今夜は私の旅食を提供しますので」
「そいつはありがたい」
「旅食ってどんなんですか?」
「…あ」
3人は明日の計画を立てていたけど、私はふとルーリアが言ってたことを思い出して、銀の球を見つめる。
彼女は、『ガチャ』でアイテムを手に入れたと言っていた。彼女の部屋にあった家具や小物のすべてがそうだったかはわからない。けど、お茶や砂糖があったんだから、水と食料が出てくる可能性もあるんじゃないかな。
「シロ。寄付ポイントで召喚って、食料や水も出てくる?」
「召喚はここでは出来ないから、『召喚術師の部屋』に行く?」
召喚術師の部屋というのは、カードを召喚した場所だろう。私は頷き、3人へ目をやる。
「ちょっと召喚してくる」
3人と視線が合ったと思ったら、私はもう別の場所にいた。
一瞬、同じ場所かと錯覚する程度には似た造りだ。
丸太で作られた壁。木板の床。部屋の中心にある机と椅子。物を収納する為の収納箱。
ただ、それに加えて木製の寝台がひとつ置いてあった。
「…2階か」
室内にある照明は、机の上に置かれた細い蝋燭と小さな燭台だけだ。
3人が居る1階は天井にも照明があった。
「ここが召喚術師の私室になるのかな」
「そうだよ」
案内人の声は机の上から聞こえてくる。そこにも1階と同じ銀の球が置かれていた。
「それは助かる。私の目は光に弱いんだ」
「じゃあ光の量を減らして映すね」
案内人の声と共に、何も無い壁一面に文字と絵が浮かんだ。
文字と絵が浮かんで見えるように背景は暗い色で作られた画面だ。
目を引くのは、壁を装飾するように等間隔で並んでいる絵。正方形の中に紋章のようなマークが描かれ、その上に人や物の影絵と文字が乗っている。
影絵と並んでいる文字は、装飾文字というのだろうか。見る人に様々な印象を与えるような字体だった。
「『寄付ポイント』が使える召喚は5種類だよ。『課金召喚【祈】』『装備召喚【祈】』『道具召喚』『家財召喚』『素材召喚』があるんだ。『恒常召喚』と『期間限定召喚』があって、『期間限定召喚』は召喚できるものが時々入れ替わるから、欲しい物があったらその期間の間に召喚してね」
正方形の絵は5つあって、それぞれに案内人が言った召喚名が書かれていた。
「『課金召喚【祈】』、『装備召喚【祈】』は、召喚を1回行うのに『寄付ポイント』が300ポイント必要だよ。3000ポイントをまとめて使うと11回連続で召喚ができるからお得なんだ」
「貯めてる幻力は・・・いくつだっけ」
「『貯蔵幻力』は14150だよ。モニターの左上に書いてあるから分かりやすいよ」
確かに、壁の左上に映し出されているのは『貯蔵幻力』だ。その上に『寄付召喚一覧』と書かれている。
「貯蔵幻力1を変換したら、寄付ポイントも1?」
「『貯蔵幻力』2を変換したら、『寄付ポイント』は1になるよ」
「半分か」
えーと…なんだっけ。拠点を大きくするのに貯蔵幻力がいるんだっけ。じゃあ全部は使えないか。
用語が多すぎて覚えられないんだけど、もう少し項目減らしてくれないかなぁ。
「じゃあ…6000を寄付ポイント3000にして、10回召喚しようかな。…食料は『素材召喚』?」
「『素材召喚』をするんだね。画面に出すよ」
案内人の声と共に、壁に映る絵と文字が入れ替わる。
「『素材召喚…様々な素材を召喚します…素材は、複数集めて作成したり、英雄の力を強化したり、納品したりすることが可能です』…。食料出るの?これ」
書かれている文字を読み上げて首を傾げると、案内人はさらに違う文字を説明文の上に重ねて表示した。
「『道具召喚』、『家財召喚』、『素材召喚』は、『上級』『中級』『下級』の3種類があるんだ。料理を作るための食材は『下級』にあるよ」
「じゃあそれで」
「『道具召喚』、『家財召喚』、『素材召喚』に必要な『寄付ポイント』は、『上級』が150、『中級』が100、『下級』が50だよ。それぞれ、1500、1000、500で11回連続で召喚ができるよ」
「へぇ…召喚によってコストが違うんだ」
計算が面倒だけど、案内人が一瞬で計算してくれるから問題はないか。
「『貯蔵幻力』6000を『寄付ポイント』3000に変換して、『素材召喚【下級】』を11回連続召喚する?」
「する」
「『貯蔵幻力』は8150になったよ。召喚ボタンを押してね」
「召喚ボタン?」
「画面の真ん中に書いてある『素材召喚【下級】』が召喚ボタンだよ」
正方形の中に薄っすらと紋章が描かれていて、その上に『素材召喚【下級】』と書かれている…その絵自体が、『召喚ボタン』らしい。
ボタン部分も含めて全体が平たいから、押すと言われてもその部分に触れるだけだ。言われた場所を指で叩くと、僅かに壁が揺れた。
「力を入れて押さないでね。壊れるから」
「次から気を付けるよ」
「『寄付ポイント』は2500になったよ。『素材召喚』開始」
案内人の声と同時に、壁に描かれた絵が再び変わる。
それは、初めて召喚を行った場所で見た光景だった。白い布が翻り、その奥から黒い渦が姿を見せる。徐々に渦が近付いてきて壁一面に広がった後、壁全体が光った。
思わず目を瞑ると、何かが床に落ちたような小さな音がする。
目を開けると光が消え去り、壁には『素材召喚【下級】』のボタンが表示されていた。
そして、床には様々な物が置いてある。
「…なにこれ?」
「麦粉2、塩1、砂糖1、魚1、肉1、野菜2、果物2、水1だよ」
「…へぇ?」
簡単に説明されたけど、どれがどれかわからないものもあった。
粉が入ってる袋は、麦粉だろう。樽が1つあるけど、水の匂いがするからそれも水だろう。
後はどれがどれかわからない。
「3人ならわかるかな。これ下に持っていける?」
「運んでおくね」
案内人の声と共に10品目が消え、下階から歓声が上がるのが聞こえた。
「召喚を続ける?」
「今はいいかな。私も下に戻るよ」
「ヴィータを1階に転送するね」
「あぁ…そうだ」
移動の前に確認したいことを思い出し、私は銀の球へと振り返る。
「幻力の貯蔵って、制限ある?回数とか貯蔵量とか」
「『幻力貯蔵』のための充填は、1日1回までだよ。『幻力貯蔵量』は最大100万までだよ」
「累積…だっけ。そっちの幻力のほうには制限ない?」
「『拠点の累積幻力』は上限がないよ。でも『幻獣レベル』と『拠点レベル』は100までしか上がらないよ」
「…なんだっけ。幻力を貯めると…幻獣の成長に先に使われるんだっけ」
「『累積幻力』は、今までに『拠点』に貯められた幻力の総数だよ。『累積幻力』は、幻獣の成長に使われた幻力もふくまれるよ。拠点に貯められた幻力は、拠点の成長と幻獣の成長に使われるんだ。自動的に等分されるから、召喚術師が割り振る必要はないよ」
「あぁ、それだそれ」
本当にこの案内人は便利だ。
「『貯蔵幻力』は、拠点の成長や施設の利用のために使われるよ。『拠点レベル』は『幻獣レベル』の半分までしか上げる事ができないけど、召喚術師の『世界ランク』と同じレベルまでは何もしなくても自動的に上がるよ」
「世界ランクって上限いくつだっけ」
「20だよ」
「えーと…つまり…幻獣も拠点もレベルは100が上限で…拠点は幻獣の半分までしか上がらない…のに、上限が100…?」
「『拠点レベル』の『貯蔵幻力』を使った成長は上限が50だよ。51以上は『寄付ポイント』と特別なアイテムが必要になるんだ。『拠点レベル』は『貯蔵幻力』以外にも『星内貨幣』を使って成長させることも出来るけど、『星内貨幣』を使った成長の上限は40だよ」
「へぇ…」
またややこしくなってきた。
とりあえず、この星では幻力の貯蔵が結構大事らしい、ということは理解できたから、まぁいいや。
「3人も騒がしいし、1階に行くよ」
一番重要なこと以外は今おぼえる必要もないだろう。
私は1階に移動し物資と対峙している3人の傍に出現して、とりあえずの現状を説明することにした。
見つめる、というより、凝視されている。
「…話の流れで行きゃあ、食料だよな」
「食料は最低限でも何とかなります。問題は水ですね。水が無ければ動けなくなりますから」
「ここは岩山だよな。朝に山を下って水源探すか…」
「でも…ここってどの辺なんですかね~?すごく高い山みたいでしたよ」
「召喚術師殿。ここがどこか分かるか?」
「シロ。この辺の地図ってある?」
机の上に置いた銀の球に向かって声をかけると、3人もそちらを見た。
「拠点の周囲か召喚術師が行った場所しか『地図』は見えないんだ。今は、ほとんど真っ白だよ。だから、人がいる町や村が近くにあるかは分からないね」
「水源が知りたいみたいだよ」
「『地図』には細かい事は表示されないんだ」
拠点があるんだから、野営なんて想定してないんだろう。
風龍の棲む山で初日を終えるというのも、多分想定されてない。
「手描きか…。マッピングは苦手なんだよな…」
「そうですね…。王国内は地図が完成されてましたし…」
「…って言うか、なんで召喚術師殿はこんな山にいるんだ?」
「私はこの星の人じゃないから、よくわからないよ。この星に来てからこの山しかまだ見てないし」
「…ハードモードってヤツか?別の星から来たヤツがたまにそう言ってたな」
「そうなんだ?」
とりあえず、食料も大事だけど水のほうが重要だということはわかった。
神殿が乾燥地帯にあるのでなければ、水くらいはありそうだ。
「シロ。神殿で買い物できるかな。水と、出来れば食料が欲しいんだけど」
「この地域の神殿に繋ぐね」
そう言うと、銀の球は光り始めた。その光は置かれている机の上に注がれ、やがて光は1枚の紙に変化する。
その紙には、文字が並んでいた。
【風龍神殿】
『購入』
・白色の花『オブラザード』
・エリンデルケ
・魔力水晶5型
『販売』
・魔力石『テン・ルーザ』
・ポルパト
・羅針の杖『エイルドル』
【風花の滝神殿】
『購入』
・光花
・ラバンドルクス
・妖精の糸
『販売』
・風花水
・水精の布
・幻獣『ファラス』
【レンデル神殿】
『購入』
・魔生物『ドル』全般
・龍のあやかし
・時煙
『販売』
・魔力石『ファム・ループ』
・守衛『ドンリファ』
・紅玉『プラフ』
「…何の売買か、ひとつもわからないんだけど」
ひとつだけわかったのは、この周辺には3か所神殿がある。ということだ。
行く必要があるのかはわからない。
「…おそらく…高級品です。高級品、の一言で片付けられるような品物ではなく…この世に同じ物が数品しかないような…貴重な品が幾つもあるのではないでしょうか」
「欲しいのは水と食料なんだけどなぁ…」
「見て下さい、これ!風花の滝神殿で、風花水というのが売られてるみたいですよ!」
「どう見てもただの水じゃねぇだろ。…大体、召喚術師殿は金とか持ってるのか?」
「お金はないけど、なんかポイントで買えるみたいだよ。どうしよ。風花水買ってみる?」
「買えんのか…?」
「ヴィータ様は召喚術師として日が浅いようですし、資産を無駄に使っている場合ではないと思います。確実に、必要だと分かっている物を買うほうが良いかと」
「シロ。どこにでもある水とか食料とか欲しいんだけど、どこか買えるところ無い?」
「シェルでしたら私も少しは持ち合わせがあります」
傍でティセルが口添えする。
「召喚術師だけが使える市場があるよ。でも、『世界ランク』が3以上じゃないと使えないんだ」
「ん~…他に買い物出来そうなところは無い?」
「『風岩山脈』には無いみたいだよ」
風岩山脈というのは、この周辺の山々のことだろう。
「明日、この拠点で山を下るだけ下ってから、考えたほうがいいんじゃねぇのか」
「そうですね。村や集落が付近にあるとも限りませんし、日が昇ってからすぐに出発したほうが良いかと思います。今夜は私の旅食を提供しますので」
「そいつはありがたい」
「旅食ってどんなんですか?」
「…あ」
3人は明日の計画を立てていたけど、私はふとルーリアが言ってたことを思い出して、銀の球を見つめる。
彼女は、『ガチャ』でアイテムを手に入れたと言っていた。彼女の部屋にあった家具や小物のすべてがそうだったかはわからない。けど、お茶や砂糖があったんだから、水と食料が出てくる可能性もあるんじゃないかな。
「シロ。寄付ポイントで召喚って、食料や水も出てくる?」
「召喚はここでは出来ないから、『召喚術師の部屋』に行く?」
召喚術師の部屋というのは、カードを召喚した場所だろう。私は頷き、3人へ目をやる。
「ちょっと召喚してくる」
3人と視線が合ったと思ったら、私はもう別の場所にいた。
一瞬、同じ場所かと錯覚する程度には似た造りだ。
丸太で作られた壁。木板の床。部屋の中心にある机と椅子。物を収納する為の収納箱。
ただ、それに加えて木製の寝台がひとつ置いてあった。
「…2階か」
室内にある照明は、机の上に置かれた細い蝋燭と小さな燭台だけだ。
3人が居る1階は天井にも照明があった。
「ここが召喚術師の私室になるのかな」
「そうだよ」
案内人の声は机の上から聞こえてくる。そこにも1階と同じ銀の球が置かれていた。
「それは助かる。私の目は光に弱いんだ」
「じゃあ光の量を減らして映すね」
案内人の声と共に、何も無い壁一面に文字と絵が浮かんだ。
文字と絵が浮かんで見えるように背景は暗い色で作られた画面だ。
目を引くのは、壁を装飾するように等間隔で並んでいる絵。正方形の中に紋章のようなマークが描かれ、その上に人や物の影絵と文字が乗っている。
影絵と並んでいる文字は、装飾文字というのだろうか。見る人に様々な印象を与えるような字体だった。
「『寄付ポイント』が使える召喚は5種類だよ。『課金召喚【祈】』『装備召喚【祈】』『道具召喚』『家財召喚』『素材召喚』があるんだ。『恒常召喚』と『期間限定召喚』があって、『期間限定召喚』は召喚できるものが時々入れ替わるから、欲しい物があったらその期間の間に召喚してね」
正方形の絵は5つあって、それぞれに案内人が言った召喚名が書かれていた。
「『課金召喚【祈】』、『装備召喚【祈】』は、召喚を1回行うのに『寄付ポイント』が300ポイント必要だよ。3000ポイントをまとめて使うと11回連続で召喚ができるからお得なんだ」
「貯めてる幻力は・・・いくつだっけ」
「『貯蔵幻力』は14150だよ。モニターの左上に書いてあるから分かりやすいよ」
確かに、壁の左上に映し出されているのは『貯蔵幻力』だ。その上に『寄付召喚一覧』と書かれている。
「貯蔵幻力1を変換したら、寄付ポイントも1?」
「『貯蔵幻力』2を変換したら、『寄付ポイント』は1になるよ」
「半分か」
えーと…なんだっけ。拠点を大きくするのに貯蔵幻力がいるんだっけ。じゃあ全部は使えないか。
用語が多すぎて覚えられないんだけど、もう少し項目減らしてくれないかなぁ。
「じゃあ…6000を寄付ポイント3000にして、10回召喚しようかな。…食料は『素材召喚』?」
「『素材召喚』をするんだね。画面に出すよ」
案内人の声と共に、壁に映る絵と文字が入れ替わる。
「『素材召喚…様々な素材を召喚します…素材は、複数集めて作成したり、英雄の力を強化したり、納品したりすることが可能です』…。食料出るの?これ」
書かれている文字を読み上げて首を傾げると、案内人はさらに違う文字を説明文の上に重ねて表示した。
「『道具召喚』、『家財召喚』、『素材召喚』は、『上級』『中級』『下級』の3種類があるんだ。料理を作るための食材は『下級』にあるよ」
「じゃあそれで」
「『道具召喚』、『家財召喚』、『素材召喚』に必要な『寄付ポイント』は、『上級』が150、『中級』が100、『下級』が50だよ。それぞれ、1500、1000、500で11回連続で召喚ができるよ」
「へぇ…召喚によってコストが違うんだ」
計算が面倒だけど、案内人が一瞬で計算してくれるから問題はないか。
「『貯蔵幻力』6000を『寄付ポイント』3000に変換して、『素材召喚【下級】』を11回連続召喚する?」
「する」
「『貯蔵幻力』は8150になったよ。召喚ボタンを押してね」
「召喚ボタン?」
「画面の真ん中に書いてある『素材召喚【下級】』が召喚ボタンだよ」
正方形の中に薄っすらと紋章が描かれていて、その上に『素材召喚【下級】』と書かれている…その絵自体が、『召喚ボタン』らしい。
ボタン部分も含めて全体が平たいから、押すと言われてもその部分に触れるだけだ。言われた場所を指で叩くと、僅かに壁が揺れた。
「力を入れて押さないでね。壊れるから」
「次から気を付けるよ」
「『寄付ポイント』は2500になったよ。『素材召喚』開始」
案内人の声と同時に、壁に描かれた絵が再び変わる。
それは、初めて召喚を行った場所で見た光景だった。白い布が翻り、その奥から黒い渦が姿を見せる。徐々に渦が近付いてきて壁一面に広がった後、壁全体が光った。
思わず目を瞑ると、何かが床に落ちたような小さな音がする。
目を開けると光が消え去り、壁には『素材召喚【下級】』のボタンが表示されていた。
そして、床には様々な物が置いてある。
「…なにこれ?」
「麦粉2、塩1、砂糖1、魚1、肉1、野菜2、果物2、水1だよ」
「…へぇ?」
簡単に説明されたけど、どれがどれかわからないものもあった。
粉が入ってる袋は、麦粉だろう。樽が1つあるけど、水の匂いがするからそれも水だろう。
後はどれがどれかわからない。
「3人ならわかるかな。これ下に持っていける?」
「運んでおくね」
案内人の声と共に10品目が消え、下階から歓声が上がるのが聞こえた。
「召喚を続ける?」
「今はいいかな。私も下に戻るよ」
「ヴィータを1階に転送するね」
「あぁ…そうだ」
移動の前に確認したいことを思い出し、私は銀の球へと振り返る。
「幻力の貯蔵って、制限ある?回数とか貯蔵量とか」
「『幻力貯蔵』のための充填は、1日1回までだよ。『幻力貯蔵量』は最大100万までだよ」
「累積…だっけ。そっちの幻力のほうには制限ない?」
「『拠点の累積幻力』は上限がないよ。でも『幻獣レベル』と『拠点レベル』は100までしか上がらないよ」
「…なんだっけ。幻力を貯めると…幻獣の成長に先に使われるんだっけ」
「『累積幻力』は、今までに『拠点』に貯められた幻力の総数だよ。『累積幻力』は、幻獣の成長に使われた幻力もふくまれるよ。拠点に貯められた幻力は、拠点の成長と幻獣の成長に使われるんだ。自動的に等分されるから、召喚術師が割り振る必要はないよ」
「あぁ、それだそれ」
本当にこの案内人は便利だ。
「『貯蔵幻力』は、拠点の成長や施設の利用のために使われるよ。『拠点レベル』は『幻獣レベル』の半分までしか上げる事ができないけど、召喚術師の『世界ランク』と同じレベルまでは何もしなくても自動的に上がるよ」
「世界ランクって上限いくつだっけ」
「20だよ」
「えーと…つまり…幻獣も拠点もレベルは100が上限で…拠点は幻獣の半分までしか上がらない…のに、上限が100…?」
「『拠点レベル』の『貯蔵幻力』を使った成長は上限が50だよ。51以上は『寄付ポイント』と特別なアイテムが必要になるんだ。『拠点レベル』は『貯蔵幻力』以外にも『星内貨幣』を使って成長させることも出来るけど、『星内貨幣』を使った成長の上限は40だよ」
「へぇ…」
またややこしくなってきた。
とりあえず、この星では幻力の貯蔵が結構大事らしい、ということは理解できたから、まぁいいや。
「3人も騒がしいし、1階に行くよ」
一番重要なこと以外は今おぼえる必要もないだろう。
私は1階に移動し物資と対峙している3人の傍に出現して、とりあえずの現状を説明することにした。
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〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
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【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
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だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
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