【完結】大聖女の息子はやり直す

序章

14 調査

こちらが悪女たちです。

アレクシスの前にはベッドに寝かされた二人の女性がいた。

スカイピオ王国史上最悪の悪女と噂されているアルデアとリリィだ。



別々の牢屋に入れられていた二人が同じ時間同じタイミングでこん睡状態に陥った。

その様子があまりにも同じであったため、関連性を調べるために魔道研究所に運び込まれ上級魔導士たちが調べていたが、一向に原因は分からない状態である。





「もはや我々ではお手上げの状態でして、正直アレクシス様のお申し出はありがたかったです」

「なるほど、だからこんなに早く許可が下りたんだね」






手紙を出した翌日には国王のサインの入った許可証が送られてきていた。

本来なら最低でも3日はかかるので本当にお手上げ状態だったのだろう。





「それではさっそく調べさせてもらうよ」






そういってアレクシスは聖霊力をアルデアとリリィに注いだ。


正確には二人の魂に。


本来なら魂に干渉する技はあらゆる意味でリスクが高く基本的には使用禁止とされている。

また、上級魔導士でもできるものはごくわずかだという。

だが大聖人である彼はリスクなど関係なく力を行使できる。





「それにしてもなぜアレクシス様はいきなり魂に干渉しているんだ？」




部屋にいる数人の上級魔導士の一人がつぶやいた。

そんな彼に仲間の別の上級魔導士があきれたように答える。




「俺たちが何やっても何もわからなかったんだ。肉体に干渉する術じゃ無理だと思ったんだよ」



上級魔導士たちは彼女たちの脳から記憶を探る極級と呼ばれる最上位魔法を使って探りを入れていた。

しかし、なぜか不自然なほど情報が出なかったのだ。

アレクシスはそのことを事前に知っていたため、上級魔導士たちがして何も見つけられなければ肉体に干渉する術を使っても無意味だと思い魂に干渉することを決めたのだ。






「…これはこれは…」



アレクシスがつぶやいた。セリフとは裏腹にその表情はとても険しいものだった。



「悪女たちはもここにはいない。あいつら魔族と契約した禁術使いだったんだ！魂ごと他人の体を渡り歩いている！」








魔族とは異界にすむ生き物である。

普段は彼らと接点などは無いのだが、契約を行うことで彼らの持つ異界の力をわずかにもらい受けることが可能だ。

だが、こちらの理と異なる異界の力は世界に混沌をもたらしてきた。

そのため魔族との契約は最大の禁忌とされ、契約した者たちは禁術使いとして即座に捕縛と処分がされてきたのだ。



スカイピオの悪女の正体は禁術使い。

アルデアとリリィは体を乗っ取られた被害者だったのだ！