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序章
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イザベラとイリスが来てからルナライズ侯爵家は一変した。
落ち着いた上品な内装は派手で下品なものになり、出費は今までの5倍にまで増えた。
当時の侯爵とディートはイザベラとイリスが望むものを与えるのは当然と考えており、彼女たちのわがままをすべて受け入れていたのだ。
そして彼女たちになつかないシェリィをだんだんと疎ましく感じるようになる。
「12歳になったシェリィは学園に通うようになりましたが、そこでいじめられていたようです」
いじめに耐えるシェリィを見て性格が悪いから当然だとあの時は本気で信じて疑わなかった。
10歳で理不尽に母親と引き離されて、兄と父は義母と義姉に夢中になり使用人たちも味方をしてくれない状況は幼い少女には耐えがたい苦痛であっただろう。
「シェリィが15歳になったときに変化が起こります」
第三王子とシェリィが婚約したのだ。
元々打診はあり婚約者候補ではあったのだが、15歳になったのをきっかけに正式な婚約者となったのだ。
だが、それが許せなかったのが義姉のイリス。
彼女は第三王子に近づきシェリィの嘘の情報を吹き込み始めたのだった。
「そして学園の卒業パーティで王子が婚約破棄とイリスとの婚約を発表を行ったんです。大勢の人が見ている前だったので撤回は無理でした」
本来なら悪いのは第三王子とイリスであり、勝手に婚約破棄と婚約をした二人が断罪されなければならなかった。
しかし醜聞を恐れた王家はシェリィにすべての責任を押し付けることにしたのだ。
「イリスの言ったことはすべて真実であり、シェリィは悪女であると王家が認定したのです」
「控えめに言ってクソ過ぎない?」
その後シェリィは家名に泥を塗ったのとして侯爵家から除籍し、国外追放となった。
どのように追放されたのかの詳細をディートは知らなかったが、普段の扱いを考える無一文で放り出された可能性が高い。
「その後しばらくはイザベラとイリスの独壇場でしたね。悪女から王子をすくった聖女とその母親としてもてはやされてました」
シェリィが追放されてから数年後。
イリスが正式に王子と結婚した直後にそれは起こった。
ルナライズ侯爵領で反乱がおこったのだ。
イザベラとイリスのために金を湯水のように使っていた侯爵は金が足りなくなると領地の税金を上げることで対応していた。
度重なる増税に堪忍袋の緒が切れた領民たちはあっという間に屋敷を占拠し、領地にいた公爵をとらえたのだ。
「反乱時僕とイザベラとイリスは王都に滞在していたため反乱の事実を知ったのはすべて終わった後でした」
その日急に城に来るように言われイザベラとともにディートが登城すると、そこには両手を縛られたイリスと第三王子がいた。
「彼らの前には美しく成長したシェリィが険しい顔をして立っていました。その隣には隣国の公爵の姿もありました」
「つまり~追放されたシェリィちゃんは隣国の公爵家に保護されてたって事かい?」
「その通りです。行き倒れになったところを拾っていただいたとしか僕は聞いてないので詳細は分からないんです」
ディートが到着した時はすでに王子とイリスに対する断罪は終わっており、詳細は分からなかったがどうやら追放後もなにかとシェリィに罪を押し付けていたことが露見したらしい。
隣国の公爵が出てくるということはかなり危険なことをやらかしていたとみていいだろう。
その後の展開はすさまじく早く進んだ。
イザベラもイリス同様に罪を重ねていたようで到着とほぼ同時に騎士につかまり取り調べのために連れていかれた。
ディートの方はシェリィに対する虐待について断罪されたものの領地の違法増税などに直接かかわっていなかったため、平民になるだけで済んだ。
「父上とイザベラとイリスは罪が重すぎてかなり思い刑罰が下されたようですが、刑が執行される前に王都から追い出されたので詳しくは知りません」
「…もしかしたら家族に刑罰が下される様を視なくていいように早く追い出されたのかもね」
「…そうかもしれませんね。シェリィはとてもやさしい子ですから。…その後貴族としての生活しか知らない僕はそのまま行き倒れて、気が付いたら時間が戻っていました」
落ち着いた上品な内装は派手で下品なものになり、出費は今までの5倍にまで増えた。
当時の侯爵とディートはイザベラとイリスが望むものを与えるのは当然と考えており、彼女たちのわがままをすべて受け入れていたのだ。
そして彼女たちになつかないシェリィをだんだんと疎ましく感じるようになる。
「12歳になったシェリィは学園に通うようになりましたが、そこでいじめられていたようです」
いじめに耐えるシェリィを見て性格が悪いから当然だとあの時は本気で信じて疑わなかった。
10歳で理不尽に母親と引き離されて、兄と父は義母と義姉に夢中になり使用人たちも味方をしてくれない状況は幼い少女には耐えがたい苦痛であっただろう。
「シェリィが15歳になったときに変化が起こります」
第三王子とシェリィが婚約したのだ。
元々打診はあり婚約者候補ではあったのだが、15歳になったのをきっかけに正式な婚約者となったのだ。
だが、それが許せなかったのが義姉のイリス。
彼女は第三王子に近づきシェリィの嘘の情報を吹き込み始めたのだった。
「そして学園の卒業パーティで王子が婚約破棄とイリスとの婚約を発表を行ったんです。大勢の人が見ている前だったので撤回は無理でした」
本来なら悪いのは第三王子とイリスであり、勝手に婚約破棄と婚約をした二人が断罪されなければならなかった。
しかし醜聞を恐れた王家はシェリィにすべての責任を押し付けることにしたのだ。
「イリスの言ったことはすべて真実であり、シェリィは悪女であると王家が認定したのです」
「控えめに言ってクソ過ぎない?」
その後シェリィは家名に泥を塗ったのとして侯爵家から除籍し、国外追放となった。
どのように追放されたのかの詳細をディートは知らなかったが、普段の扱いを考える無一文で放り出された可能性が高い。
「その後しばらくはイザベラとイリスの独壇場でしたね。悪女から王子をすくった聖女とその母親としてもてはやされてました」
シェリィが追放されてから数年後。
イリスが正式に王子と結婚した直後にそれは起こった。
ルナライズ侯爵領で反乱がおこったのだ。
イザベラとイリスのために金を湯水のように使っていた侯爵は金が足りなくなると領地の税金を上げることで対応していた。
度重なる増税に堪忍袋の緒が切れた領民たちはあっという間に屋敷を占拠し、領地にいた公爵をとらえたのだ。
「反乱時僕とイザベラとイリスは王都に滞在していたため反乱の事実を知ったのはすべて終わった後でした」
その日急に城に来るように言われイザベラとともにディートが登城すると、そこには両手を縛られたイリスと第三王子がいた。
「彼らの前には美しく成長したシェリィが険しい顔をして立っていました。その隣には隣国の公爵の姿もありました」
「つまり~追放されたシェリィちゃんは隣国の公爵家に保護されてたって事かい?」
「その通りです。行き倒れになったところを拾っていただいたとしか僕は聞いてないので詳細は分からないんです」
ディートが到着した時はすでに王子とイリスに対する断罪は終わっており、詳細は分からなかったがどうやら追放後もなにかとシェリィに罪を押し付けていたことが露見したらしい。
隣国の公爵が出てくるということはかなり危険なことをやらかしていたとみていいだろう。
その後の展開はすさまじく早く進んだ。
イザベラもイリス同様に罪を重ねていたようで到着とほぼ同時に騎士につかまり取り調べのために連れていかれた。
ディートの方はシェリィに対する虐待について断罪されたものの領地の違法増税などに直接かかわっていなかったため、平民になるだけで済んだ。
「父上とイザベラとイリスは罪が重すぎてかなり思い刑罰が下されたようですが、刑が執行される前に王都から追い出されたので詳しくは知りません」
「…もしかしたら家族に刑罰が下される様を視なくていいように早く追い出されたのかもね」
「…そうかもしれませんね。シェリィはとてもやさしい子ですから。…その後貴族としての生活しか知らない僕はそのまま行き倒れて、気が付いたら時間が戻っていました」
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