【完結】大聖女の息子はやり直す

序章

4 弟子入り

イザベラ達対策を考えると言っても今のディートではあまりに力が足りない。


記憶にある限りまともだった者たちと協力体制を作ろうとも考えたが、自分と同年代以下のまだ子供だったり遠くに住んでいるためすぐにやり取りが出来なかったりと色々な問題があるためうまくいっていなかった。


そこでディートは侯爵家のコネを使い高名な魔導士に弟子入りすることにしたのだ。


自身や父親がイザベラやイリスに盲目的な好意を抱いたのは魅了のような精神に干渉する魔法をかけられたからではないかと考えたからである。

父親の侯爵に対しては遠くで頑張っている母のためにも自身の力を高めたいと説明したらすぐに同意と手配をしてくれた。



「父上は家族を大事にする穏やかな人だったんだよな」



戻る前の侯爵の姿を思い出しながら自然とつぶやいてしまうディート。

シェリィを罵るすがたは悪魔のようで、本来の侯爵とはまるで別人のようであった。



「今も穏やかな人に見えるが？」

「え！？」


ディートの背後に突然ローブを着た長身の男性が現れた。

今回ディートが弟子入りすることが決まった大魔導士レイヴンである。



「…君なんか面白いね。精神逆行の大魔法を使った形跡がある。あれは条件がそろわなければ発動すらしないはずなんだけどね～」



ソファに座るディートの前に回り込んで顔を覗き込むように見つめながらレイヴンは言う。

その言葉がディートにとってどれだけ衝撃的なことなのかも知らず。



「わっわかるんですか…！？」

「もちのろん！今日から弟子になるディート君、もしよかったら先生に詳細を教えてくれないかな～？」


一瞬戸惑ったもののディートはしっかりと頷いた。

どうせばれているのだ隠すことに意味はない。


「聞いてくれますか？僕が体験した前の人生」