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エピローグ 魔法使いとソフィア
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シン・ヘルヴィスの処分から数日後。
公爵令嬢ソフィア・フィムは魔術塔を訪れていた。
「改めてマリン様にお礼を申し上げたく参りました」
事件当日は心身ともに疲弊していたことと混乱からほとんど言葉を発することができなかったソフィアであったが今はとても穏やかだ。
マリンはそんな彼女を塔の中庭の案内する。
300年前からそこまで変わらない落ち着いた中庭の中心には真新しいテーブルと椅子がおいてある。
ソフィアのためにマリンがわざわざ用意したものであるが、彼女が知ることはないだろう。
二人は向かい合うように座った。
「来てくれて嬉しいけど僕は復讐を優先してあの段階になるまで君を放っておいたんだ。感謝されるような存在じゃない」
目をそらすマリンにソフィアは小さく顔を左右にふる。
「それでも最終的に私が助かったことに変わりません。私がお礼を言いたいから言うのです」
マリンは一瞬だけ目を見開くと泣き笑いのような表情になる。
「僕は君のことをちゃんと見ていなかったみたいだ」
シルヴィオの魂がシンになっても変わらなかったようにソフィアもまた根本的な部分が同じであった。
かつてマリンが尊敬し、愛した王女と同じ。
シルヴィオとシンを同一視しておきながら王女とソフィアを別とマリンは見ていた。
そのせいでソフィアの中に生きる王女を見落としていた事に今この瞬間に気がついた。
彼女を助けなかった僕の罪はどうしたらつぐなえるのだろうか
その後ソフィアは侯爵令息と恋に落ち幸せに暮らしたという。
公爵家はソフィアの子どもたちが受け継いでいくのだが、彼らが困ったときは王国一の魔法使いが必ず助けに入ったという。
彼の償いは彼自身が自分を許せるようになるまで続くのかもしれない。
公爵令嬢ソフィア・フィムは魔術塔を訪れていた。
「改めてマリン様にお礼を申し上げたく参りました」
事件当日は心身ともに疲弊していたことと混乱からほとんど言葉を発することができなかったソフィアであったが今はとても穏やかだ。
マリンはそんな彼女を塔の中庭の案内する。
300年前からそこまで変わらない落ち着いた中庭の中心には真新しいテーブルと椅子がおいてある。
ソフィアのためにマリンがわざわざ用意したものであるが、彼女が知ることはないだろう。
二人は向かい合うように座った。
「来てくれて嬉しいけど僕は復讐を優先してあの段階になるまで君を放っておいたんだ。感謝されるような存在じゃない」
目をそらすマリンにソフィアは小さく顔を左右にふる。
「それでも最終的に私が助かったことに変わりません。私がお礼を言いたいから言うのです」
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「僕は君のことをちゃんと見ていなかったみたいだ」
シルヴィオの魂がシンになっても変わらなかったようにソフィアもまた根本的な部分が同じであった。
かつてマリンが尊敬し、愛した王女と同じ。
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そのせいでソフィアの中に生きる王女を見落としていた事に今この瞬間に気がついた。
彼女を助けなかった僕の罪はどうしたらつぐなえるのだろうか
その後ソフィアは侯爵令息と恋に落ち幸せに暮らしたという。
公爵家はソフィアの子どもたちが受け継いでいくのだが、彼らが困ったときは王国一の魔法使いが必ず助けに入ったという。
彼の償いは彼自身が自分を許せるようになるまで続くのかもしれない。
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