現世でも罪を犯すのならば

ゆるぽ

文字の大きさ
上 下
4 / 5

3 真の断罪

しおりを挟む
パチン


マリンは再び指を鳴らす。


次の瞬間新たな記憶が人々の脳にねじ込まれる。


それは現在・王太子シンの罪の真実。


「俺達を騙してたのか!」

「ソフィア様がかわいそう!」

「悪魔のような王子め!」



王太子には怒りを公爵令嬢には同情を。

少し前までシンといっしょにソフィアを責めていたことなど忘れてしまっているようだ。



「まるでシルヴィオと王女様のようだろう?」


国民たちの脳にマリンの言葉が響く。


「シルヴィオは生まれ変わっても再び王女を虐げたんだよ」


ホールにいた貴族たちは一斉にシンとソフィアの方を見た。

誰もが言葉を発せないまま時が過ぎる。

静寂を打ち破るように扉が開いた。


「結局こうなってしまったか」


入ってきたのはなぜか到着が遅れていた国王と王妃、第2王子と第1王女であった。


「ち、父上…」

すがるように手を伸ばすシンを無視して王はソフィアの方を見た。


「ギリギリになるまで息子を信じたかった私の愚かさのせいでそなたをずいぶんと苦しめた。謝っても許されることではないがどうか謝罪をさせてほしい」


王の謝罪にソフィアはなんと答えたらいいかわからず無言になってしまう。


「だめですよ王様。こんなところで言われても彼女が混乱するだけでしょう?」

「マリン殿…それもそうだな。配慮が足らず重ねて申し訳ない」


王は一度目を閉じてからシンの方をようやく見た。


「簒奪者シルヴィオにして罪人シン。マリン殿が与えたチャンスを無下にしたのだ。前世の罪ごと償うが良い」


王が片手を上げると兵士たちがホール内に入ってくる。

シンは大人しく捕まっているが、その目にまだ力があることをマリンは見逃さなかった。



「…今年で建国祭は廃止し、来年以降は慰霊祭と名を改め不当に国を奪わあれ名誉えお怪我されたシャグリオ王国王家のために鎮魂の行事とする」


王のその言葉でパーティは解散となった。



今回の一件でヘルヴィス王家は簒奪者の一族として大きく支持を下げることになった。

シン以外の王族はまともであるので、ある程度回復できるだろうが全盛期を超えることはもはや難しいだろう。









シンは冷たい牢屋の中で必死に現状を打破する術を探していた。

本来なら入れられるはずの貴族牢ではなく、国家反逆レベルの大罪人用の牢屋にシンは入れられている。

通常の牢屋との違いはその強固さだ。

二重扉に二重鍵、そして5重にかけられた魔法に隊長レベルの実力を持つ兵士が常に10人見張っている。

そんな牢屋内にすんなりと入ってきた人物が一人。

マリンだ。


「やあ、元気かい?シン元王太子」


「一体何のようですか…」


僕の真実を話すために来たんだよ。

そう言ってマリンは話し始める。


「僕はね善人じゃないんだ。だからいつか君に復讐するって決めてたんだよ」

「私はシルヴィオではない…!」

「うん。わかってる。君はシルヴィオだったけど、今はシンだ」

「だったら…」

「大罪人シン・ヘルヴィスだ」



シンは大きく目を見開く。

その姿がどこか滑稽にみえて思わずマリンは思わず笑ってしまう。


「僕はね君の汚れた魂はきっとまた罪を犯すと信じてたんだ。だからシルヴィオの生まれ変わりが再び罪を犯したら全てを明らかにする魔法をこの国に仕掛けておいたんだよ」


だからね


「もし今の君が真っ当に生きて彼女が幸せなら復讐はしないつもりだったんだ」


罪を犯してくれてありがとう


「心置きなく復讐できる」









後に出版されるヘルヴィス歴史書に置いて、旧歴史書の記載は間違いだったとし真実の歴史が記載されるようになる。

またシン・ヘルヴィスについても多く記載があり、簒奪者シルヴィオの生まれ変わりであることや彼自身の罪についても事細かく書かれている。


しかしながら、彼の最期についての記載については曖昧で秘密裏に処刑されたとも魔物の群生地帯に追放されたなどの噂があるとしか書かれておらず謎のままだという。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

死線を潜り抜けた悪役令嬢

お好み焼き
ファンタジー
犠牲や身代わりを得て破滅フラグを回避していた転生悪役令嬢。全体的に暗いお話ですが、婚約者には愛されております。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

夫婦で異世界に召喚されました。夫とすぐに離婚して、私は人生をやり直します

もぐすけ
ファンタジー
 私はサトウエリカ。中学生の息子を持つアラフォーママだ。  子育てがひと段落ついて、結婚生活に嫌気がさしていたところ、夫婦揃って異世界に召喚されてしまった。  私はすぐに夫と離婚し、異世界で第二の人生を楽しむことにした。  

『聖女』の覚醒

いぬい たすく
ファンタジー
その国は聖女の結界に守られ、魔物の脅威とも戦火とも無縁だった。 安寧と繁栄の中で人々はそれを当然のことと思うようになる。 王太子ベルナルドは婚約者である聖女クロエを疎んじ、衆人環視の中で婚約破棄を宣言しようともくろんでいた。 ※序盤は主人公がほぼ不在。複数の人物の視点で物語が進行します。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

精霊王の愛し子

百合咲 桜凜
ファンタジー
家族からいないものとして扱われてきたリト。 魔法騎士団の副団長となりやっと居場所ができたと思ったら… この作品は、「小説家になろう」にも掲載しています。

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

自由気ままな生活に憧れまったりライフを満喫します

りまり
ファンタジー
がんじがらめの貴族の生活はおさらばして心機一転まったりライフを満喫します。 もちろん生活のためには働きますよ。

処理中です...