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1話 婚約破棄と断罪
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「以上のことから私シン・ヘルヴィスは公爵令嬢ソフィア・フィムとの婚約を破棄するとともに、彼女の処刑を宣言します!」
ヘルヴィス王国の王太子はその人生において絶頂期を迎えていた。
気が弱いが非常に有能なソフィアをこき使い、彼女の功績を奪うことで国民からの人気は今や歴代1友いわれるほどだ。
あとは資金を集めるために行っていた不正行為の罪をソフィアに押し付けたまま処刑すれば憂うものはなにもない。
全ては順調なはずだった。
「まさか2度も彼女を虐げるとは思わなかったよ」
突如ホールに声が響いた。
シンが断罪の場に選んだのは毎年王城で行われる建国記念のパーティ会場で、王国随一の広さを誇るホールである。
演劇や演奏にも使われるそのホールはよく音を反響させるため、ホールに居る人々は声の主を直ぐに見つけることができなかった。
「誰だ?」
「ここだよ」
シンの短い問に答えたのはフードの男だった。
その男はまるで最初からいたかのようにソフィア・フィム公爵令嬢の隣に現れた。
「はじめましてシン王子。私はマリン。建国の魔術師といえばわかるだろう?」
「それはもちろん。我が国の建国に携わり、今なお魔術塔から結界をはることで魔物からヘルヴィスを守る守護者様でございます」
内心の焦りを必死に隠しながらシンは恭しく頭を下げた。
ヘルヴィスに置いて頭を下げるという行為は最も敬意を表す動作である。
シンはマリンのことは肖像画でしか知らない。
いくら頼み込んでもマリンはなぜかシンと会うことを拒否していたからである。
父たる王や王妃はもちろんのことシンの弟妹たちに至ってはマリンの居住地である魔法塔への出入りさえ許可されていた。
そう、シンだけが拒否されていたのだ。
「ようやく貴方様にお目に…」
「そういうのいいから」
乱暴にフードを外したマリン。
黒い短髪は夜空を切り取ったかのように美しく、ツリ目がちの整った顔によく似合う。
眉間に深いシワさえなければこの場にいる多くの女性が見惚れてしまったかもしれない。
「僕がここに来たのは本当の断罪をするためだよ」
パチンとマリンは指を鳴らす。
ここまでただ見ていることしかできないでいるソフィアはなぜかその仕草が懐かしく感じた。
次の瞬間ヘルヴィス全土を覆う巨大な魔法陣が現れる。
「さぁ真実を知る時間だよ」
ヘルヴィス王国の王太子はその人生において絶頂期を迎えていた。
気が弱いが非常に有能なソフィアをこき使い、彼女の功績を奪うことで国民からの人気は今や歴代1友いわれるほどだ。
あとは資金を集めるために行っていた不正行為の罪をソフィアに押し付けたまま処刑すれば憂うものはなにもない。
全ては順調なはずだった。
「まさか2度も彼女を虐げるとは思わなかったよ」
突如ホールに声が響いた。
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演劇や演奏にも使われるそのホールはよく音を反響させるため、ホールに居る人々は声の主を直ぐに見つけることができなかった。
「誰だ?」
「ここだよ」
シンの短い問に答えたのはフードの男だった。
その男はまるで最初からいたかのようにソフィア・フィム公爵令嬢の隣に現れた。
「はじめましてシン王子。私はマリン。建国の魔術師といえばわかるだろう?」
「それはもちろん。我が国の建国に携わり、今なお魔術塔から結界をはることで魔物からヘルヴィスを守る守護者様でございます」
内心の焦りを必死に隠しながらシンは恭しく頭を下げた。
ヘルヴィスに置いて頭を下げるという行為は最も敬意を表す動作である。
シンはマリンのことは肖像画でしか知らない。
いくら頼み込んでもマリンはなぜかシンと会うことを拒否していたからである。
父たる王や王妃はもちろんのことシンの弟妹たちに至ってはマリンの居住地である魔法塔への出入りさえ許可されていた。
そう、シンだけが拒否されていたのだ。
「ようやく貴方様にお目に…」
「そういうのいいから」
乱暴にフードを外したマリン。
黒い短髪は夜空を切り取ったかのように美しく、ツリ目がちの整った顔によく似合う。
眉間に深いシワさえなければこの場にいる多くの女性が見惚れてしまったかもしれない。
「僕がここに来たのは本当の断罪をするためだよ」
パチンとマリンは指を鳴らす。
ここまでただ見ていることしかできないでいるソフィアはなぜかその仕草が懐かしく感じた。
次の瞬間ヘルヴィス全土を覆う巨大な魔法陣が現れる。
「さぁ真実を知る時間だよ」
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