自由恋愛はお貴族様のモノ

ゆるぽ

文字の大きさ
上 下
2 / 6

運命の相手

しおりを挟む
私の名前はエリシア、バロス商会の次女で婚約者は漁師のアーリィ。


バロス商会が海産物の取り扱いを強化するに伴い漁師とつながりを作るために婚約したことになっているけれど、実際はごく普通に恋愛して恋人になっただけ。


【王国恋愛法】なんて馬鹿げた法律も今や適当に理由さえでっち上げれば普通に好きな人と結婚できてしまうから、有って無いようなものだとずっと思っていたの。


あんなことがあるまでは…







時は1日前にさかのぼる


















とある港にて





「エリシア!今日も大物が捕れたよ!」




そういって大きな魚を頭上に掲げて楽しそうに笑うのは私の婚約者のアーリィ。

そんな彼にバロス商会海産物担当の私はいつものように話しかける。




「すごいわアーリィ3日連続で大物を釣り上げるなんて!そのうちお義父さまを超えて街一番の漁師になりそうね」

「そう言ってもらえると嬉しいよ。だけど僕じゃまだまだ父さんを超えるには足りないと思ってる。」





アーリィはそういうと頭上に掲げていた魚をかごにそっと戻した。



その時




「運命の相手を見つけましたわ!」





突然の声に驚いて振り向くとそこには明るめの茶髪に妙にフリフリしたドレスを着た少女が立っていた。




「…貴族のご令嬢に見えますが、何か御用でしょうか?」




嫌な予感はしつつも冷静に少女に語り掛ける。





「あなたには用はないわ!わたくしが用があるのは底の運命の殿方ですわ~!」





そういうとビシッっと聞こえそうな勢いでアーリィを指さした。

この時点で嫌な予感が的中したのを確信して思わず頭を抱えたくなる。

というのもこういった貴族の自由恋愛による暴走は今までもいくつか例があったのだ。そして面倒なことに貴族から平民への求婚は立場上断れないことがのだった。






「運命とおっしゃられても僕はあなたの名前も知りませんよ」





頭を抱えそうな私とは対照的に冷静に答えるアーリィ。彼のこういう冷静沈着なところに魅かれたのだ。






「それは申し訳ありませんでした。私ラバイカ公爵家のレーティアと申します。一目ぼれしましたので恋人になってくださいませ。」





内容はともかく、さすが貴族といったところかレーティアは美しく挨拶する。






「レーティア様申し訳ありませんが僕は婚約者がいるので恋人になることはできません。貴族のご令嬢と言っても婚約者を奪うような真似はできないはずですよね?」






アーリィの言葉に一瞬動きを止めたレーティアだったが、すぐに何かを考えるそぶりをするとそういうことなら出直しますわと告げてさっさと帰ってしまった。

ただ、出直すということはあきらめたわけでは無いというわけで、これから起こるであろう面倒ごとに今度こそ私は頭を抱えた。





「なんて面倒くさい!」

「まあまあ、でもこっちだって対策はあるでしょう?」





叫ぶ私にそういって笑いかけるアーリィ。

【王国恋愛法】が出来て150年もたっているのだ今回のことだって別に初めてではない。法律が出来た当初はレーティアのようなわがままで無理やり婚姻させられた平民は多かったが今はそうではない。





「ええもちろん、幸か不幸か相手は<あの>ラバイカ公爵家だしね。面倒だけど何とかなるわ」







私はほんの少しだけ悪い笑顔を浮かべる。






(人の恋路を邪魔する奴はなんとやら…ね)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今宵、薔薇の園で

天海月
恋愛
早世した母の代わりに妹たちの世話に励み、婚期を逃しかけていた伯爵家の長女・シャーロットは、これが最後のチャンスだと思い、唐突に持ち込まれた気の進まない婚約話を承諾する。 しかし、一か月も経たないうちに、その話は先方からの一方的な申し出によって破談になってしまう。 彼女は藁にもすがる思いで、幼馴染の公爵アルバート・グレアムに相談を持ち掛けるが、新たな婚約者候補として紹介されたのは彼の弟のキースだった。 キースは長年、シャーロットに思いを寄せていたが、遠慮して距離を縮めることが出来ないでいた。 そんな弟を見かねた兄が一計を図ったのだった。 彼女はキースのことを弟のようにしか思っていなかったが、次第に彼の情熱に絆されていく・・・。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

【完結】処刑後転生した悪女は、狼男と山奥でスローライフを満喫するようです。〜皇帝陛下、今更愛に気づいてももう遅い〜

二位関りをん
恋愛
ナターシャは皇太子の妃だったが、数々の悪逆な行為が皇帝と皇太子にバレて火あぶりの刑となった。 処刑後、農民の娘に転生した彼女は山の中をさまよっていると、狼男のリークと出会う。 口数は少ないが親切なリークとのほのぼのスローライフを満喫するナターシャだったが、ナターシャへかつての皇太子で今は皇帝に即位したキムの魔の手が迫り来る… ※表紙はaiartで生成したものを使用しています。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

義母の秘密、ばらしてしまいます!

四季
恋愛
私の母は、私がまだ小さい頃に、病気によって亡くなってしまった。 それによって落ち込んでいた父の前に現れた一人の女性は、父を励まし、いつしか親しくなっていて。気づけば彼女は、私の義母になっていた。 けれど、彼女には、秘密があって……?

さあ 離婚しましょう、はじめましょう

美希みなみ
恋愛
約束の日、私は大好きな人と離婚した。 そして始まった新しい関係。 離婚……しましたよね? なのに、どうしてそんなに私を気にかけてくれるの? 会社の同僚四人の恋物語です。

告白さえできずに失恋したので、酒場でやけ酒しています。目が覚めたら、なぜか夜会の前夜に戻っていました。

石河 翠
恋愛
ほんのり想いを寄せていたイケメン文官に、告白する間もなく失恋した主人公。その夜、彼女は親友の魔導士にくだを巻きながら、酒場でやけ酒をしていた。見事に酔いつぶれる彼女。 いつもならば二日酔いとともに目が覚めるはずが、不思議なほど爽やかな気持ちで起き上がる。なんと彼女は、失恋する前の日の晩に戻ってきていたのだ。 前回の失敗をすべて回避すれば、好きなひとと付き合うこともできるはず。そう考えて動き始める彼女だったが……。 ちょっとがさつだけれどまっすぐで優しいヒロインと、そんな彼女のことを一途に思っていた魔導士の恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

婚約者が私と婚約破棄する計画を立てたので、失踪することにしました

天宮有
恋愛
 婚約者のエドガーが、私ルクルとの婚約を破棄しようと計画を立てていた。  それを事前にユアンから聞いていた私は、失踪することでエドガーの計画を潰すことに成功する。  ユアンに住んで欲しいと言われた私は、ユアンの屋敷の地下室で快適な日々を送っていた。  その間に――私が失踪したことで、様々な問題が発生しているようだ。

処理中です...