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秘密基地
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「兄様」
「んー?どうしたナターシャ?」
えー、現在なぜか森の中におります。
「どこに行くつもりでしょうか?」
兄様ことアールベルトに抱き抱えられたまま城内で馬車に乗せられ、あれよあれよと城下町を馬車で爆走すること暫し、馬車から騎馬に乗せ変えられて、現在なぜか森の中を移動しています。
「うん?最終的にはレイスへ行くつもりだよ」
ナタリアを自分の前に座らせてゆっくりと山道を進んでいく。
「兄様、レイスは反対方向ですよね」
ナタリアの記憶が間違っていなければ、この先の山を越えるとレイナス王国と言う名前の国があるはずだ。
国自体は小さいが、とても豊かな国だと言う話を聞いたことがある。
「真っ直ぐにレイスへ帰れば直ぐに追い付かれてしまうからね。それじゃお仕置きにならないだろう?」
誰に?とは聞くまい。兄様が来ていると知っていればナタリアだって逃げなかった、と思う。
「ところでずっと付いてくるあの大きな狼は?」
馬が警戒を示さない程度の距離を取りながら付いてくるレオンハルトに視線を流す。
流し目良いですね、絵になります。色っぽいですよ。
「レオンハルトですよ。私の家族です!!」
にっこりと笑みを浮かべて断言します。ゼインもレオンハルトも大鷹のオルソードも大切な家族です。
「そうか、レオンハルト殿」
アールベルト兄様が声を掛けるとレオンハルトがゆっくりと近づいてきた。
「ナターシャを守ってくれていたのだろう。兄として礼をしたい。ありがとう」
レオンハルトはアールベルトの瞳をじっと見詰め、ふとそらすとどこかへ行ってしまった。
「ナターシャ、嫌われてしまったんだろうか?」
「違うと思うよ」
レオンハルトは人の本心を見抜く。アールベルトに少しでも害意があればすぐにでもナタリアを連れてカイルの元へ戻っていただろう。それをしなかった。
「兄様がついていれば多少離れても大丈夫だと判断したんだと思う」
「そうか、それは光栄だな」
「うん、誇っていいと思う」
えへへ、と笑うとやさしく頭を撫でられた。
「今日はこの先にある民家に泊まるから」
「民家?」
こんな山奥に民家があるとは信じられない。まぁ、ナタリアの家も似たようなものか。山奥にあるからなぁ、あの村。
「うちの密偵達が使ってる拠点だ。宿に泊まれば足がつくからな、ほらあれだ」
アールベルトが指差した先に有ったのは民家と言うよりも山小屋だった。
木材をそのまま積み上げて作ったのだろう。廃屋と言っても過言出はない出で立ち。扉を開けると本当に物置になっていた。鉈や斤、猟に使われる網や弓矢などが壁に掛けられている。一部屋しかないこの小屋では頑張っても五人が横になるのが精一杯だろう。
「兄様、無理でしょうこれは」
「さぁおいで?」
伸ばされた手を掴むとアールベルトは迷うことなく小屋のなかで唯一備え付けられたベットに向かっていく。
人一人が寝れれば良い大きさのベットに先に入っていた追従が手を掛けて壁に向かって床板を持ち上げると、それまで見えなかった扉が現れた。
「アールベルト陛下、ナターシャ様御待ちしておりました」
床に現れた扉を開けると、地下へ通路が延ばされているようだ。
通路で待ち構えていた人物はアールベルトに手を引かれて入ってきたナタリアを見つけると嬉しそうに出迎えてくれた。
「おひさしぶりです。その節はお世話になりました。ハロルド様」
マーシャル王宮で刺客から守ってくれたハロルド・レクサンドールが出迎えてくれたのだ。
「やはりナターシャ様だったのですね。良くお戻りになられました」
感極まって涙声になりつつありますよ?
「ハロルド、泣くのは無事にレイスへ宝を持ち帰ってからにしろ」
「わかっておりますよ、年々涙腺が弛くなるので仕方ありません」
ハロルドの案内でゆっくりと地下へと進んでいく。ところどころを木を組んだ柱で支えられているためそれなりの広さがある。
「良く見つからずにこんな穴掘ったね?」
「我が国は発掘採掘が得意な者が多いからな」
通路の突き当たりに設置された扉を潜るとそれなりの広さがある空間にでた。広さでいって民家ひとつ分はあるだろう。
「ナターシャ様!」
「姫様!」
部屋に居た数名がナタリアを見付けて走り寄ってくる。
「皆、念願の我が妹を見付け出す事が出来た礼を言う。ありがとう」
「うう、陛下良かったですなぁ〰」
「じいさん泣くな、こっちまで泣けてくるじゃねぇか」
感極まって泣き出した老人の背中を撫でながら壮年の男が慰める。
「この者たちはやってくる密偵達の賄いをしているんだよ、そしてずっとお前の身を案じ情報を集めてきたんだ」
そうだったのか。長い間自分の安否を気遣ってくれていたのだ。
「あの、ありがとうございました」
深々頭を下げる。ただただ感謝しか浮かばない。
「頭を上げてくだせぇ、姫の帰還はレイスの民全ての彼岸ですじゃ」
「今日は姫の為に今できる飛びっきりの食事を用意します」
「あぁ、頼む」
「お任せ下さい!!」
用意された食事と酒でささやかな宴が催され楽しい夜が過ぎていった。
「んー?どうしたナターシャ?」
えー、現在なぜか森の中におります。
「どこに行くつもりでしょうか?」
兄様ことアールベルトに抱き抱えられたまま城内で馬車に乗せられ、あれよあれよと城下町を馬車で爆走すること暫し、馬車から騎馬に乗せ変えられて、現在なぜか森の中を移動しています。
「うん?最終的にはレイスへ行くつもりだよ」
ナタリアを自分の前に座らせてゆっくりと山道を進んでいく。
「兄様、レイスは反対方向ですよね」
ナタリアの記憶が間違っていなければ、この先の山を越えるとレイナス王国と言う名前の国があるはずだ。
国自体は小さいが、とても豊かな国だと言う話を聞いたことがある。
「真っ直ぐにレイスへ帰れば直ぐに追い付かれてしまうからね。それじゃお仕置きにならないだろう?」
誰に?とは聞くまい。兄様が来ていると知っていればナタリアだって逃げなかった、と思う。
「ところでずっと付いてくるあの大きな狼は?」
馬が警戒を示さない程度の距離を取りながら付いてくるレオンハルトに視線を流す。
流し目良いですね、絵になります。色っぽいですよ。
「レオンハルトですよ。私の家族です!!」
にっこりと笑みを浮かべて断言します。ゼインもレオンハルトも大鷹のオルソードも大切な家族です。
「そうか、レオンハルト殿」
アールベルト兄様が声を掛けるとレオンハルトがゆっくりと近づいてきた。
「ナターシャを守ってくれていたのだろう。兄として礼をしたい。ありがとう」
レオンハルトはアールベルトの瞳をじっと見詰め、ふとそらすとどこかへ行ってしまった。
「ナターシャ、嫌われてしまったんだろうか?」
「違うと思うよ」
レオンハルトは人の本心を見抜く。アールベルトに少しでも害意があればすぐにでもナタリアを連れてカイルの元へ戻っていただろう。それをしなかった。
「兄様がついていれば多少離れても大丈夫だと判断したんだと思う」
「そうか、それは光栄だな」
「うん、誇っていいと思う」
えへへ、と笑うとやさしく頭を撫でられた。
「今日はこの先にある民家に泊まるから」
「民家?」
こんな山奥に民家があるとは信じられない。まぁ、ナタリアの家も似たようなものか。山奥にあるからなぁ、あの村。
「うちの密偵達が使ってる拠点だ。宿に泊まれば足がつくからな、ほらあれだ」
アールベルトが指差した先に有ったのは民家と言うよりも山小屋だった。
木材をそのまま積み上げて作ったのだろう。廃屋と言っても過言出はない出で立ち。扉を開けると本当に物置になっていた。鉈や斤、猟に使われる網や弓矢などが壁に掛けられている。一部屋しかないこの小屋では頑張っても五人が横になるのが精一杯だろう。
「兄様、無理でしょうこれは」
「さぁおいで?」
伸ばされた手を掴むとアールベルトは迷うことなく小屋のなかで唯一備え付けられたベットに向かっていく。
人一人が寝れれば良い大きさのベットに先に入っていた追従が手を掛けて壁に向かって床板を持ち上げると、それまで見えなかった扉が現れた。
「アールベルト陛下、ナターシャ様御待ちしておりました」
床に現れた扉を開けると、地下へ通路が延ばされているようだ。
通路で待ち構えていた人物はアールベルトに手を引かれて入ってきたナタリアを見つけると嬉しそうに出迎えてくれた。
「おひさしぶりです。その節はお世話になりました。ハロルド様」
マーシャル王宮で刺客から守ってくれたハロルド・レクサンドールが出迎えてくれたのだ。
「やはりナターシャ様だったのですね。良くお戻りになられました」
感極まって涙声になりつつありますよ?
「ハロルド、泣くのは無事にレイスへ宝を持ち帰ってからにしろ」
「わかっておりますよ、年々涙腺が弛くなるので仕方ありません」
ハロルドの案内でゆっくりと地下へと進んでいく。ところどころを木を組んだ柱で支えられているためそれなりの広さがある。
「良く見つからずにこんな穴掘ったね?」
「我が国は発掘採掘が得意な者が多いからな」
通路の突き当たりに設置された扉を潜るとそれなりの広さがある空間にでた。広さでいって民家ひとつ分はあるだろう。
「ナターシャ様!」
「姫様!」
部屋に居た数名がナタリアを見付けて走り寄ってくる。
「皆、念願の我が妹を見付け出す事が出来た礼を言う。ありがとう」
「うう、陛下良かったですなぁ〰」
「じいさん泣くな、こっちまで泣けてくるじゃねぇか」
感極まって泣き出した老人の背中を撫でながら壮年の男が慰める。
「この者たちはやってくる密偵達の賄いをしているんだよ、そしてずっとお前の身を案じ情報を集めてきたんだ」
そうだったのか。長い間自分の安否を気遣ってくれていたのだ。
「あの、ありがとうございました」
深々頭を下げる。ただただ感謝しか浮かばない。
「頭を上げてくだせぇ、姫の帰還はレイスの民全ての彼岸ですじゃ」
「今日は姫の為に今できる飛びっきりの食事を用意します」
「あぁ、頼む」
「お任せ下さい!!」
用意された食事と酒でささやかな宴が催され楽しい夜が過ぎていった。
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