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初めての口づけは……
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う~ん、どうしよう。
潤んだ瞳で睨み見上げてくるアンジェリカが可愛くて困る。
「シオルが本当の名前なんだ」
「なんで嘘付いたの!」
「ちょっといろいろあって命を狙われていたんだ。 アンジェリカに助けてもらった怪我も暗殺者から逃げるときに負った傷だったんだ……、アンジェリカやトーマスさんを私の事情に巻き込みたくなくて偽名を使いました。 ごめん」
素直に頭を下げれば、アンジェリカは両手で拳を作り私のコメカミに当ててグリグリと力を加え始めた。
頭を両側から圧迫され、更にツボでもあるんじゃないかと思えるほどね激痛が走る。
「アンジェリカ、痛い痛い! 痛いって!」
「ばっかじゃないの! 素人の私が見たって刃物でついた傷くらいわかるわ! 行商人なんて定住しない商売を何年続けてきたと思ってるの! レ、シオルがなにか厄介事に巻き込まれてる事なんて拾ったときから覚悟してるし、巻き込まれたくなかったら拾わずに放置してるわ!」
尚も追撃の手を緩めないアンジェリカの両手を掴んで引き剥がすとまたボロボロと大粒の涙を流している。
「ねぇアンジェリカ、泣きやんでよ」
「うるさい! シオルには関係ない!」
関係ないと言われて頭に血が登った私は、気が付けばアンジェリカの唇を奪っていた。
「ちょ、うぐっ! シオ」
何か言おうと口を開いたアンジェリカの唇を角度を変えて強引に再び塞ぐ。
前世は恋愛経験なんてほとんどない喪女だった。
喪女で経験がなくても、毎晩絶倫な両親のやり取りや愛の行為を強制でライブ観察してきた私を舐めんなよ!
舌を絡ませアンジェリカを貪れば、なけなしの抵抗はなくなり、アンジェリカは私の腕のなかで脱力し浅い呼吸を繰り返している。
「関係ないなんて言わないでよ……」
ギュッと私より小さな身体を抱きしめれば、小さな声がバカと告げた。
「バカですよ! すっかりアンジェリカに嵌ったバカですけどなにか?」
半ばヤケになって告げれば服の胸元をグイッと引っ張られアンジェリカの顔が近づき、柔らかな唇が私の唇に重なった。
「これでお互い様ね」
してやったりという顔をしたアンジェリカに急激に顔やら全身が煮え滾るように熱くなる。
絶対真っ赤になってるよね今!
「そっ、それよりもこんな時間に一人で宿を飛び出すなんて危ないよ? アンジェリカらしくないよね、どうしたの?」
強引に話を逸して聞けば、アンジェリカの視線が彷徨った。
「アンジェリカ?」
アンジェリカのぷにぷにした触り心地が良いほっぺたを両手で挟み、強引に視線を合わせると、観念したのかボソボソと話し出す。
「父さんが再婚するって言い出したんだもん、私にお母さんが出来るんだって……私のお母さんは死んじゃったお母さんだけなのに!」
唸りながらアンジェリカは次々と心の中を吐露して行く。
なんでもこの間会った女性と再婚したいと言ったトーマスさんの下腹部に八つ当たりして宿を飛び出してきたらしい。
その話を聞いて股間がヒュンとした。
女だった時にはわからなかったけどあれはやってはいけない技だ。
今頃トーマスさん、宿で泡を吹いて悶絶してるんじゃないか?
「だから私も独り立ちしてやるの!」
よっぽど腹に据えかねているのかまたは強がりか、アンジェリカを抱き締めて耳元に囁く。
「ならアンジェリカは私と一緒に来る?」
「えっ、どこに?」
「私の産まれた国へ」
突然の誘いに狼狽えているのはわかるけど、アンジェリカと離れたくない。
「独り立ちすれば危険も多い。 トーマスさんとはもう会えなくなってしまうかもしれないし、祖国から迎えが来てしまった私はアンジェリカと一緒に行けない。 でもアンジェリカをひとりで行かせるなんて絶対に出来ない……」
アンジェリカを大切だと気がつく前なら別れられたかもしれない。
私が差し出した手に伸ばされかけた手は次の言葉でピタリと止まってしまった。
「今はまだ言えないけど私は護るべきものを沢山背負ってる、私と一緒に来てもアンジェリカは沢山苦労すると思う。 トーマスさんとも会えなくなってしまうかもしれないそれでも……私と一緒に来る?」
潤んだ瞳で睨み見上げてくるアンジェリカが可愛くて困る。
「シオルが本当の名前なんだ」
「なんで嘘付いたの!」
「ちょっといろいろあって命を狙われていたんだ。 アンジェリカに助けてもらった怪我も暗殺者から逃げるときに負った傷だったんだ……、アンジェリカやトーマスさんを私の事情に巻き込みたくなくて偽名を使いました。 ごめん」
素直に頭を下げれば、アンジェリカは両手で拳を作り私のコメカミに当ててグリグリと力を加え始めた。
頭を両側から圧迫され、更にツボでもあるんじゃないかと思えるほどね激痛が走る。
「アンジェリカ、痛い痛い! 痛いって!」
「ばっかじゃないの! 素人の私が見たって刃物でついた傷くらいわかるわ! 行商人なんて定住しない商売を何年続けてきたと思ってるの! レ、シオルがなにか厄介事に巻き込まれてる事なんて拾ったときから覚悟してるし、巻き込まれたくなかったら拾わずに放置してるわ!」
尚も追撃の手を緩めないアンジェリカの両手を掴んで引き剥がすとまたボロボロと大粒の涙を流している。
「ねぇアンジェリカ、泣きやんでよ」
「うるさい! シオルには関係ない!」
関係ないと言われて頭に血が登った私は、気が付けばアンジェリカの唇を奪っていた。
「ちょ、うぐっ! シオ」
何か言おうと口を開いたアンジェリカの唇を角度を変えて強引に再び塞ぐ。
前世は恋愛経験なんてほとんどない喪女だった。
喪女で経験がなくても、毎晩絶倫な両親のやり取りや愛の行為を強制でライブ観察してきた私を舐めんなよ!
舌を絡ませアンジェリカを貪れば、なけなしの抵抗はなくなり、アンジェリカは私の腕のなかで脱力し浅い呼吸を繰り返している。
「関係ないなんて言わないでよ……」
ギュッと私より小さな身体を抱きしめれば、小さな声がバカと告げた。
「バカですよ! すっかりアンジェリカに嵌ったバカですけどなにか?」
半ばヤケになって告げれば服の胸元をグイッと引っ張られアンジェリカの顔が近づき、柔らかな唇が私の唇に重なった。
「これでお互い様ね」
してやったりという顔をしたアンジェリカに急激に顔やら全身が煮え滾るように熱くなる。
絶対真っ赤になってるよね今!
「そっ、それよりもこんな時間に一人で宿を飛び出すなんて危ないよ? アンジェリカらしくないよね、どうしたの?」
強引に話を逸して聞けば、アンジェリカの視線が彷徨った。
「アンジェリカ?」
アンジェリカのぷにぷにした触り心地が良いほっぺたを両手で挟み、強引に視線を合わせると、観念したのかボソボソと話し出す。
「父さんが再婚するって言い出したんだもん、私にお母さんが出来るんだって……私のお母さんは死んじゃったお母さんだけなのに!」
唸りながらアンジェリカは次々と心の中を吐露して行く。
なんでもこの間会った女性と再婚したいと言ったトーマスさんの下腹部に八つ当たりして宿を飛び出してきたらしい。
その話を聞いて股間がヒュンとした。
女だった時にはわからなかったけどあれはやってはいけない技だ。
今頃トーマスさん、宿で泡を吹いて悶絶してるんじゃないか?
「だから私も独り立ちしてやるの!」
よっぽど腹に据えかねているのかまたは強がりか、アンジェリカを抱き締めて耳元に囁く。
「ならアンジェリカは私と一緒に来る?」
「えっ、どこに?」
「私の産まれた国へ」
突然の誘いに狼狽えているのはわかるけど、アンジェリカと離れたくない。
「独り立ちすれば危険も多い。 トーマスさんとはもう会えなくなってしまうかもしれないし、祖国から迎えが来てしまった私はアンジェリカと一緒に行けない。 でもアンジェリカをひとりで行かせるなんて絶対に出来ない……」
アンジェリカを大切だと気がつく前なら別れられたかもしれない。
私が差し出した手に伸ばされかけた手は次の言葉でピタリと止まってしまった。
「今はまだ言えないけど私は護るべきものを沢山背負ってる、私と一緒に来てもアンジェリカは沢山苦労すると思う。 トーマスさんとも会えなくなってしまうかもしれないそれでも……私と一緒に来る?」
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