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ファンタジー生物
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私は素早く周囲に生き物がいないかを確認してシルバを鞘に戻すと、背中でもぞもぞしているもと卵をくるんだ制服を地面に下ろす。
下ろす間も、ピギャーピギャーと暴れる謎の生物を地面に押さえつける。
「うるさい!今出してやるから暴れんな」
くるくると裾をもち勢い良く制服をはずしていくと、ピギャーと言う声と共に卵の殻と小さな塊が転がり出た。
辺りが薄暗いので正確な色までは判別出来ないものの、暫く地下をさまよった事で、わずかな明かりでも姿かたちが見れるようになっていた。
蜥蜴を思わせる顔、小さな蝙蝠のような薄い皮膜の翼、四本足で爬虫類のような鱗が体にびっしりと張り付いているコロコロした丸みのある胴体。
大きな愛嬌あるつぶらな瞳がこちらをじっと見上げてくる。
あー、この生き物がこの世界に居たのね。そっかぁ、魔法や不思議動物が存在世界なんだとおもっていたけれど、異世界に転生したわけで、今はまだ知られていない人間の住みかとは違う未踏の地には不思議動物が溢れているのかもしれない。
現に私の目の前に一匹いるし。さっきの大蛇も素晴らしい迫力だった。地上に出てこないことを祈ろう、うん。
卵から孵った生き物は私の足元にとてとてとたどたどしくやってくると、まるで猫のように私の足に身体を擦り付けてくる。
思わず抱き上げた身体は体積のわりに驚くほどに軽く、愛剣シルバの方が重い。
なるほど、どんな身体構造なのかわからないけれど、これだけ軽ければ背中の小さな翼でも空を飛べるかもしれない。
「ピギャ!」
細かい牙を見せて一声鳴いた生き物のこちらの世界での種としての名称はわからないけど、前世ではドラゴンと呼ばれていたはずだ。
しかも東洋の蛇のような長い龍ではなく、西洋の竜に似ている。
「あははっ、くすぐったいって!こら!」
小さな舌で私の顔をなめるドラゴンをしかりつけると自力で私の身体をよじ登り首の後ろに長い尻尾を回すようにして居座った。
子竜の体温で首もとが暖かい。どうやら爬虫類のように変温動物ではないのかもしれない。
「はぁ、拾った生き物は捨てらんないしなぁ。お前私と一緒に来る?」
ドラゴンの喉元を撫でる。細かい鱗がつるつるだ。
「ピギャ」
まるで私の言葉がわかっているかのようにしっかりと鳴いた。
「そうか、私はシオルと言うんだ。よろしくな……え~と、名前は……無いよな。う~ん」
バサバサと汚れてしまった制服に付着した埃を払って、すっかりシワだらけになった制服に袖を通す。
ドラゴンは器用に制服をよけてまだ制服を着ていない反対の肩へ移動すると、もう片方の袖を通すころには、着終わった方の肩に移動を済ませていた。
すっかりリラックスモードのドラゴンに名前がないことを思い出したのは良いものの、いざ名前を!と考えたところで浮かんでくる名前はポチ、タマ、ミケ、シロ……うわぁ、ダメだれこれ。
「と、とりあえず地上へ戻ってからにしような?」
「ピギャ?」
コテンと首をかしげるドラゴンに萌えながら、私と新たな同行者はゆっくりと暗い通路を突き進んだ。
ときおり感じる大蛇の気配を避けながら私達が無事に地上へ出た頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。
下ろす間も、ピギャーピギャーと暴れる謎の生物を地面に押さえつける。
「うるさい!今出してやるから暴れんな」
くるくると裾をもち勢い良く制服をはずしていくと、ピギャーと言う声と共に卵の殻と小さな塊が転がり出た。
辺りが薄暗いので正確な色までは判別出来ないものの、暫く地下をさまよった事で、わずかな明かりでも姿かたちが見れるようになっていた。
蜥蜴を思わせる顔、小さな蝙蝠のような薄い皮膜の翼、四本足で爬虫類のような鱗が体にびっしりと張り付いているコロコロした丸みのある胴体。
大きな愛嬌あるつぶらな瞳がこちらをじっと見上げてくる。
あー、この生き物がこの世界に居たのね。そっかぁ、魔法や不思議動物が存在世界なんだとおもっていたけれど、異世界に転生したわけで、今はまだ知られていない人間の住みかとは違う未踏の地には不思議動物が溢れているのかもしれない。
現に私の目の前に一匹いるし。さっきの大蛇も素晴らしい迫力だった。地上に出てこないことを祈ろう、うん。
卵から孵った生き物は私の足元にとてとてとたどたどしくやってくると、まるで猫のように私の足に身体を擦り付けてくる。
思わず抱き上げた身体は体積のわりに驚くほどに軽く、愛剣シルバの方が重い。
なるほど、どんな身体構造なのかわからないけれど、これだけ軽ければ背中の小さな翼でも空を飛べるかもしれない。
「ピギャ!」
細かい牙を見せて一声鳴いた生き物のこちらの世界での種としての名称はわからないけど、前世ではドラゴンと呼ばれていたはずだ。
しかも東洋の蛇のような長い龍ではなく、西洋の竜に似ている。
「あははっ、くすぐったいって!こら!」
小さな舌で私の顔をなめるドラゴンをしかりつけると自力で私の身体をよじ登り首の後ろに長い尻尾を回すようにして居座った。
子竜の体温で首もとが暖かい。どうやら爬虫類のように変温動物ではないのかもしれない。
「はぁ、拾った生き物は捨てらんないしなぁ。お前私と一緒に来る?」
ドラゴンの喉元を撫でる。細かい鱗がつるつるだ。
「ピギャ」
まるで私の言葉がわかっているかのようにしっかりと鳴いた。
「そうか、私はシオルと言うんだ。よろしくな……え~と、名前は……無いよな。う~ん」
バサバサと汚れてしまった制服に付着した埃を払って、すっかりシワだらけになった制服に袖を通す。
ドラゴンは器用に制服をよけてまだ制服を着ていない反対の肩へ移動すると、もう片方の袖を通すころには、着終わった方の肩に移動を済ませていた。
すっかりリラックスモードのドラゴンに名前がないことを思い出したのは良いものの、いざ名前を!と考えたところで浮かんでくる名前はポチ、タマ、ミケ、シロ……うわぁ、ダメだれこれ。
「と、とりあえず地上へ戻ってからにしような?」
「ピギャ?」
コテンと首をかしげるドラゴンに萌えながら、私と新たな同行者はゆっくりと暗い通路を突き進んだ。
ときおり感じる大蛇の気配を避けながら私達が無事に地上へ出た頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。
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