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第6章 過去の思い出

72話 初配信

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事務所から家に帰って来た俺は、いつも通り家事を済ませると、先程園野さんに説明を受けた通りに、パソコンで色々と設定して、その日は1日九重ホムラのアバターをいじって遊んだ。

それから俺達はお互いにわからない事を、ディスコードで教えあったりしていると、あっという間に時間が過ぎ俺たちの初配信をやる時間になっていた。

俺達は前もって初配信の順番をどうするか話し合っており、その結果俺達は例のジャンケン大会の順番で、初配信を行う事が決定していた。

そして今俺は、軍神さんから初配信のバトンを渡されて、人生初の配信を始める事になった。



「皆んな初めまして、俺はユメノミライ学園生徒会副会長の九重ホムラだよろしく」

俺は緊張を表に出さない様にと、少し声を作ってそう答えた。

俺はこれで大丈夫だったのか不安になり、コメント欄を見ると、そこには数は少ないが俺に返事を返してくれていた。

コメント
:初めまして
:もしかして緊張してる?
:頑張って!

俺はそのコメントを見て、自分の緊張がリスナーにまで伝わっていることの恥ずかしさと、応援のコメントの嬉しさで心の中がめちゃくちゃになった。

だがこんなんじゃダメだ。

俺は個人的に遊びでvtuberをやっているわけではなく、小さくても企業に勤めているのだ。

そう思い気合を入れるために俺は、思いっきり自分の頬をパンパンと叩き、気合を入れるために雄叫びを上げた。

「うぉっしゃ!頑張るぞ!」

今が配信中だと言う事を忘れて

コメント
:草
:頑張れ~
:がんばって!
:応援してるぞ

そうして俺の初配信は少しグダリながらもスタートを切った。

ちなみにこの配信を見ている人数は、多分裏で見ているであろう園野さん達社員さんの数を引いて32人だ。

初めの星野さんの時は、初めは社員さんしか見ていなかったが、そこからみんなでパスを繋いできたおかげで、俺の頃にはこんなにも多くのリスナーを獲得する事に成功していた。

とは言ったものの俺達はユメノミライ以外にもある、vtuber事務所は初動がもっと多いので、そこと比べると少ないが、俺はその辺りは正直しょうがないと思っている。

何たって他の企業はしっかりと宣伝を色んな場所に乗せて、そこからしっかり集客しているのに比べてうちは、もう本当に金がなさ過ぎてほとんど宣伝が出来ていないのだ。

そら初動が少ないのは当たり前だ。

だから俺は考えた。
運営が宣伝出来ないならリスナーに宣伝してもらおうと



「それじゃあ俺のファンネームはホムラビトって事でよろしくな」

コメント
:よろしく
:よろしく

「んじゃそろそろ配信終了の時間だから、その前に俺が用意して来た動画でも見てもらおうかな」

コメント
:へーどんなの?
:しょうがない見てやるか
:楽しみ

「それじゃあ動画再生まで、3.2.1どうぞ!」

そう宣言と共に、俺は配信内で用意していた動画を再生した。

動画が再生されると、そこにはギターを持った九重ホムラの姿があった。

それも二次元では無く三次元に……

コメント
:ファ!
:おいおいおい
:草
:初配信から飛ばしすぎだろw
:マジか……

今までコメントをせずにただ見ていただけの、リスナーもまさかの事態に驚きコメントを打ち込んできた。

そう何は隠そうこの動画に映っている九重ホムラは、俺が九重ホムラにコスプレした姿である。

あ、もちろん顔は隠してるぞ九重ホムラのお面で

そう俺は初配信早々でまだ新しいvtuber界隈でも、タブーとしている生身の人間を配信または動画に載せる行動を、vtuber本人である俺がコスプレをして思っクソ破ったのであった。

勿論そんな暴挙にコメント欄は困惑、そんな事はお構い無しにと動画内の俺は、いきなり自作の曲を演奏そして歌い始めた。

そしてそんなカオスな状況を見たリスナーの1人が、ツイッターにこの新人vtuber頭おかしいと、この動画のURL付きで投稿し、そこからどんどんと新しいリスナーが俺の配信を見にきた。

だがまだまだだ、この動画の本領はここからだ。

今まで1つの視点からの動画だったのが、別の視点に変わったりその途中途中に、俺がカッコつけたポーズを取ったり、飛んだり跳ねたり踊ったりとやりたい放題で、この動画はまさに

コメント
:MVじゃんw
:クソワロタ
:結構出来がいいのが腹立つw
:www
:草

そうコメント欄でも言われている通り、この動画は俺お手製の結構金の掛かったMVもどきだった。

因みにこの動画撮影には、園野さん達率いるチーム運営と、星野さん率いるチームユメノミライに、その他俺が雇った人達が色々と協力して出来た一作である。

という訳でしっかりとこの動画にプロが噛んであるという事で、ある程度のクオリティは保証されているため、思っクソvtuber界隈のタブーを何度も全力で踏み抜いているのにも関わらず、この動画を見たリスナーは俺の事を叩くのでは無く、一緒になって盛り上がってくれた。

その結果俺の初配信が終了する頃には、同接数が500人を超えており、登録者もまさかの1000人を突破していた。

「皆んな!見てくれてありがとう。後日さっきの動画も公開するからそっちも是非見てくれよな。それじゃあ乙ホムでした!」

コメント
:乙ホム
:面白かった!
:また変な動画楽しみにしてるぞ
:乙ホム!!
:チャンネル登録しました!
:面白かったです
:これからも頑張ってね

そうして俺の初配信は盛り上がりに盛り上がって、無事終了した。

その後俺からの導火線を伝って、他のメンバーの初配信も再生されて、ユメノミライは他のvtuber事務所を追い抜く勢いで、vtuber界隈にその名前が響き渡った。
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