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第一五章 フカくて暗くて黒いヤミ

フカくて暗くて黒いヤミ(10)◆

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「――アキト!」

 事件から数日が経ち、姉の行方は依然として掴めなかった。穂乃夏の遺族には本殿から直々に説明があり、遺族は酷く苦しんで明人を恨んだ。

 全ては自分のせい――
 責められて当然である。いっそのこと遺族の特権で処刑して欲しい。そんな物騒なことを考える割には、自殺を図れないことが自分でも不思議だった。
 毎晩摂取した食事を吐き、自分でも分かるほど体がやつれていき、気持ちの整理も出来そうになかった。

 日に日に弱っていく明人を見かねた母が、少しでも気を紛らわせようと半強制的に登校させた。父も母も、依子の件で忙しく対応に追われているはずで、明人も無下に断ることができなかった。

「アキト! 体調は平気なの?!」

 登校したところで、明人を見掛けては皆ざわついて近づこうとしない。その中で、茜音だけは例外だった。

「アキト!」

「あかね……」

「ここだと話しづらいよね、移動しよ」

 学校の昇降口では流石に目立つので、茜音は明人の手を引いて人気の少ないトイレの前まで移動した。

「アキト、逃げよ?」

 茜音に掴まれ、久しぶりに触れた人肌は、依子と体を重ね合わせたときの温もりを思い出させ、明人は勃起していた。

「種人とか、植人とかさ、もうどうでもいいよね。期待されてるのは結局お姉ちゃんだけだし、私はただの置物、居なくても何ら問題ないみたいでさ」

 茜音なりに気を遣ってくれていたのだろう。だが、明人の頭の中は穂乃夏と依子のことで一杯で、いまいち話に身が入らなかった。

「もうさ、全部捨てて逃げよ? 一緒に――」

 学校のチャイムが鳴り、明人は上の空で近くのスピーカーを眺める。

「――2人とも! 何してるの?! 授業、始まっちゃうよ」

「天音……」

 天音が急に割り込んで、茜音は苦い顔をした。天音は、慌てた様子で明人と茜音を教室に返すよう声を張った。

「じゃあ、考えといて……」

 茜音は涙を流し、それを腕で覆ってその場を立ち去った。天音も複雑な面持ちで茜音と一緒に戻る。1人残された明人も、2人に遅れてトボトボと教室に戻っていった。




 ***




 体育の授業では、みんなでバスケに励んだ。普段は一線で活躍する明人だが、今日ばかりはコートを歩くだけで役立たず、誰もそれを指摘しなかった。

「……先生、仕舞っておきます」

「あ、ああ。悪いな」

 授業後、明人はバスケットボールがたくさん積まれたキャスター付きの籠を指差した。これを体育館裏の倉庫にまで運ぶ――授業中全員に気を遣わせた、せめてもの償いだった。
 それに、いい加減1人になりたかった。

 周りが教室に戻る中、明人は重いカートを倉庫まで押して行った。


「――アキくん」

 ちょうど体育館の外に出たところで、天音から声が掛かった。

「私も手伝う」

 明人の反対側に立ち、天音はカートを引いて一緒に運んでくれる。心無しか重い籠が軽くなった気がする。

「さっきね、茜音との話を聞いてて、私もこのままじゃダメだって思って」

 カートを倉庫の前につけ、またもや重い倉庫の扉を開ける。扉は金属が擦れ合う不快な音を鳴らしてゆっくりと開いた。

「茜音には悪いことしたかもしれないけど、私には、アキくんと茜音が居なくなっちゃうなんてとても耐えられない」

 倉庫の奥にまでカートを運び、天音は積まれたマットの上にお尻を掛けてひと息付いた。
 汗ばんだ体操着が肌に張り付き、天音の胸元を強調する。明人は倉庫を後にしようと扉に手をかけた。

「アキくん、大変だったよね? 依子さん――それに米野さんのこと……」

 少しだけ開けたところで、明人は扉に手を掛けたまま固まった。

「本当に、大変だと思う。私にはアキくんの気持ちなんて分かってあげられないけど、アキくんが大変なのは分かる」

「はぁ、はぁ……ごくっ――」

 途端に汗が噴き出し、息切れが止まらない。生唾を飲んで落ち着かせるが、頭がボーっと温かくなり、体温が一気に上昇する。併せて、股下に込められる力も強くなり、股間が体温とともに膨らんでいく。

「だから、私にできることがあるなら何でも言って欲しい」

「はぁ、はぁ……」

「アキくんの支えになりたい。だから、アキくんの気持ちを教えてほしいの」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…………」

「時間は掛かるかもしれないけど、きっと学校を卒業する頃には――」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁはぁ、はぁ――」




 血液がギュルギュルと脳内を巡る。
 股間がはち切れそうなほど膨らんで、思考は完全に停止する。

 網膜に浮かぶのは穂乃夏の裸体
 手の平に残るのは依子の乳房を触った感触

 抗えない性欲が、扉に掛けた手に力を込めさせる。




 ――ギギギ……っ、ガシャン!


「……アキ、くん?」

 明人は、体育倉庫の扉を強く閉め切った。閉める勢いが過ぎ、扉の建付けがズレて固まってしまう。
 振り返った先には天音の体――
 倉庫内は、通気窓から差し込む日差しだけでどうも薄暗い。天音はどんどん顔を曇らせて不安な表情に変わる。
 明人は、そこに穂乃夏の面影を重ねる。 

「はぁ、はぁ……ほの、か……」

「アキくん、どうしちゃったの」

 対する明人は、紅潮した顔色で、焦点を合わせないまま天音に振り返り近づいていた。天音は怯えた様子で後退るが、後ろはマットがびっしり積まれていて一歩も下がれない。

「アキくん、怖いよ? なにす――あっ……」

 天音の両手首を片手で掴んで、体をマットに押し倒す。天音は反射的に手を引き離そうとするが、明人は決して許さずに力強くマットへと押し付ける。

「アキくん? アキくんやめて? 痛い、痛いよ――んやっ……」

 天音の両腕を押さえたまま、乳房を揉みしだいて顔を埋める。天音は激しく抵抗して体をよじらせるが、明人はしつこく乳房を責めて、そのまま体操着を無理矢理に剥いでいく。

「アキくんっ! やめっ、いや……やめてっ!」

「はぁ、はぁ……こっちも――」

「――っ?! だめっ! やめて、いやっ!」

 ついでに下の体操着も脱がしていく。
 天音は両足をジタバタして抵抗するので、今度は勢いを付け、体操着を破るようにして剥いだ。

「だ、めっ……やめ、て……っ」

 天音は今まで以上に抵抗して股を強く閉じる。足を何度もバタつかせて、足先が何度も明人の腹部に突き刺さるが、明人は一切動じない。
 一切怯むことなく天音の両足を片腕だけでこじ開けて股の間に顔を埋める。

「いやだ、みないでっ……やだよぉ、アキくんぅ……」

 天音は抵抗を続けるが、羞恥心で気が紛れて力も緩んでしまう。その間に明人は天音の下着を喰い千切って膣を露わにさせる。
 天音は恐怖心と羞恥心が限界に達し、明人に掴まれた腕で顔を覆って涙を流す。

「はぁ、はぁ……ジュルジュル――」

「あ、あうっ……」

 明人は舌を挿し込んで無理やり膣を広げ、唾液を存分に注いでいく。唾液には『毒』も含まれているが、亜御堂の血には一切効かない。

「もう、やめっ……っ?!」

 天音の膣は緊張したままで、ただ唾液で湿っただけだ。それでも明人は、顔の代わりに今度は腰を両足の間に挟ませた。
 天音は、顔を覆う両腕から恐る恐る下半身を覗き込む。ガクガクと震え、怯えきった目線の先には、明人の肥大化した肉棒が――

「や、めっ……いや……あぅっ」

 明人は、まるで開こうとしない天音の膣に肉棒をあてがい、肉をめくりながら押し進めていく。

「だめっ、アキくん゛っ! いやっ、いやあっ゛!」

 天音は必死に抵抗を続け、明人の腹部を繰り返し蹴るが、明人は一向に止まる様子を見せない。
 唾液でクチュクチュと音を鳴らし、少しずつ肉を捲り、ようやく閉ざされた入口に到達する。

「だ、めっ……アキくん、おねがい……やめ、て――あう゛っ゛!」

 そして、そのまま容赦なく肉棒を奥に挿し込んだ。「ミチミチ」と音を響かせて、天音の膣内なかを強引に広げていく。

「いだっ、あ゛、いあ゛っ……あきぐんっ、やめ゛っ……あう゛っ、い゛っ……」

 激しい痛みに堪え、天音の全身が緊張して余計に痛みが増す。足を震わせ、腰を浮かせ、歯を喰い縛って何とか痛みを堪える。
 膣内なかからは、天音の鮮血が滲み出て天音の膣を伝っていく。

「や゛め゛っ……あう゛っ!」

 その姿が、理性を失った明人をさらに興奮させる。天音が痛がる様子には構うことなく腰を振り続ける。

「痛い゛っ、痛いよっ…アキくん゛っ……」

「はぁ、はぁ……」

 絶え間無く続く痛みに、天音は腕の下で涙を流し続ける。涙が喉に詰まり、息苦しさまで覚える。

「もう゛っ。やめ゛っ……」

「はぁ、はぁ、はぁ……う゛っ――」

 そして、満足したところで大量の精液を放出する。唾液も乾き切った膣内なかに、ドクドクと精液を注いでいく。

「――くはっ」

 そして、ある程度を出したところで勢いよく肉棒を抜いた。
 肉棒が反り返って抜けた途端に、天音の膣内なかからは血液と精液が混じって溢れ出てくる。

 明人は、力が抜けたよう地面へと落ちた。
 両手を後ろについて、痛々しい天音の膣を眺める。

「――いたい、いたいよアキくんぅ……うっ、うっ、いたいよぉ……」

 嗚咽を漏らしながら泣き続ける天音を前に、明人は徐々に意識を取り戻していく。

「あ、ま、ね……」

「アキくん、いたいよぉ……」

 意識が戻ったところで、体育倉庫の外が騒がしくなり始めた。誰かの声が聞こえ、やがて扉がドンドン叩かれる。

「――アキト! おねえちゃん! そこにいるの?! どうしちゃったの?」

 外にいる茜音は、異常事態に気づいて倉庫の扉に手を掛ける。扉は建付けがズレてうまく開いてくれない。

「あか、ね、だめ……」

 天音の声は届かず、茜音は力を振り絞って扉を横にずらした。そして、目の間に広がる光景に大きく目を見開いて衝撃を受ける。

「おね、えちゃ、ん……?」

 目の前の惨劇に、茜音は立ち尽くすだけ――
 明人は、再び思考が止まっていた。
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