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第〇三章 熱狂するヒト

熱狂するヒト(03)◆

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「おれが、おれがまもるんだ……」

「いって! おいお前、ちゃんと前見て――」

 宗太は、歩きながらスマートフォンに釘付けだった。
 つまづこうが、人にぶつかろうが、画面から目を離さない。

「……んだよ、あいつ」

 ぶつかられた相手も、呆れたように去っていく。
 独り言もそうだが、顔中汗が噴き出し、見開いた瞳孔どうこうにはスマートフォンの画面が反射する。とても正常な健康状態には見えなかった。

 スマートフォンには町角ゆあんの新作ミュージックビデオが流れる。サビが終わればシークを操作し、再びサビの始まりに戻る。
 そのまま家の近くのコンビニに入る。

 入ってすぐ、インターネットで課金するためのギフトカードを数枚さらう。他は何も手に取らず、会計へと直行する。

「レジ袋入りますか?」

 イヤホンから大音量のアイドル声が漏れる。

「……あの、レジ袋!」

「あ、いらないです」

 店員の顔も見ずキャッシュトレーに金を置く。
 店員も呆れ顔で対応する。
 会計を済ませたら、ギフトカードを雑に取り上げサッサとコンビニを出て行く。

 それからもスマートフォンから目線を離さず、映像を切らすことなく歩き続けて家に到着する。
 今日はライブ配信の日だった。
 とっとと宿題やらを済ませ、備えなくてはならない。夕飯を摂る時間はないかもしれない。

 玄関の扉を開けて、何も発さず自分の部屋へと向かう。

「ちょっと宗太!」

 扉が開く音を聞きつけ、宗太の母が慌てて玄関まで出てくる。
 いつもだったら「ただいま」の一言を欠かさない宗太が、母の呼びかけにも応じず階段を上る。母はすぐ後ろを追いかけた。

「どうしたの! 朝から様子が変よ!」

 何も言わず、画面から目を離さず、自分の部屋のドアノブに手を掛ける。母はたまらず宗太の肩を掴んだ。

「いい加減にしなさい!」

 イヤホンを取り上げる。
 同時に、宗太は目を大きく見開いて怒り狂った。

「なにすんだよ!!」

 母からイヤホンを取り返し、部屋の扉を勢いよく開けて、勢いよく閉める。
 扉の前に、母は1人取り残された。

「宗太?! ねえ宗太!」

 扉の内側から鍵を閉める。
 母が扉を叩く。
 宗太にはもう何も聞こえない。

「ゆあん……おれが、まもるから――」

 ゆあんのミュージックビデオが永遠と繰り返される。宗太は部屋から出ず、イヤホンを外さず、明日の学校の準備までを終わらす。
 あっという間にライブ配信の時間がやってきた。

『やほー あなたの町角にはだれが? ゆんゆんです! 今日もよろしくー』

 画面越しに手を振る。以前より、何だか大人っぽく見える。
 開始直後でも配信は多くの視聴者と大量のコメントで溢れかえる。1人1人のコメントが読まれることはまずありえない。

「ゆあん――おれだよ。会いに来たよ」

 決して恋愛感情ではない。一人のか弱い少女を守りたい純粋な気持ちに他ならない。
 あらかじめスマートフォンに登録しておいたギフトカードを使い、お金に今の気持ちを乗せてゆあんにぶつける。

『わ~ ソンTさんさっそくありがと~ あ、マジメかちょ~さーんいらっしゃ~い』

 思いのほか反応が良くない。他の視聴者のせいでゆあんの気が散っている。

「わかる? おれだよ、ゆあん。気づいて――」

 さっき買った残りのお金も全てつぎ込む。所持金が正真正銘ゼロになる。

『ソンTさんすごーい。え待ってマジメかちょ~さんもさっそくぅー、みんな飛ばし過ぎ!』

 また邪魔される。お金にモノを言わせて、少しでもゆあんの気持ちを引こうとしている。
 そんなの無駄な行為なのに――

 宗太は、内心不安になる。
 自分のことを忘れてしまったのではないか。あるいはただの夢だったか。

 そんな筈はない。確かにゆあんがいた。守ってあげなければいけなかった。

『えーと、ゆんゆんの初めてはどんな風に責められたいですか――って、も~シモネタNGですよ~』

 おかしい、いつもだったら完全スルーする下ネタに反応している。
 宗太は、画面に釘付けになる。

『――まあでもー 優しく、されたいかなあ。なんて!』

 照れ笑いで誤魔化すゆあん――
 コメントが歓喜で溢れかえる。
 宗太の目は、照れるゆあんの口元から離れなかった。
 豊潤で、つややかな唇から――


 やっぱりあれは夢なんかじゃない。

 気づいてくれ、ゆあん――




 ――ガチャッ

 突如、部屋の扉が開く。宗太は、驚いて振り向いた。

「……きちゃった」

「ゆ、ゆあん?! どうしてここに――」

 今日のライブ配信と同じ衣装で、ゆあんが目の前にいる。確かに・・・そこにいる。

 ゆあんは、ゆっくりと近寄ってくる。

「ゆあん、おれ――」

「うん。分かってるよ……」

 ゆあんは、ゆっくりと宗太のふところに顔をうずめた。
 宗太もゆあんの背中にそっと手を置く。

「気づいているよ。宗太さんのこと」

「ゆあん……」

 ゆあんが顔を上げる。上目遣いで宗太を見つめる。
 宗太も見つめ返した。頭の中がとろけそうだった。

「ゆあん……おれが、守るから」

「うん。やさしく、して――」

 今回は、宗太からゆあんの口に攻め入った。

「――ん、んっ…んちゅ……」

「ゆあん、舌だして」

「んあっ…はひっ……」

 ゆあんの舌と絡み合う。

「んあっ、れろ、あっ…じゅる……」

 絡み合う舌から溢れた唾液が垂れ落ちる。
 舌を絡ませながら、ゆあんの胸のふくらみに手を掛ける。服の上からでも柔らかさが伝わる。

「んあっ! んっ ほ、ほこは…ら、らめっ……」

 服の上からにも関わらず、宗太が手を動かす度にビクンと体を震わす。慣れていないのだろう。

 ゆっくり、ゆっくりと責めてあげなくては――

 手を乳房ちぶさの先に移動し、服の上から責め続ける。

「んっ…」

 服の上から、少し強めに掴んでみる。

「んあっ! らめっ!」

 堪らず衣装に手を掛ける。下から捲っていくと、一寸の隙も無いツルツル肌のお腹が表れる。そのまま上にまくると、どうしても胸元でつっかえてしまう。

「んっ、あっ…んやっ!」

 無理やり上に捲ると、ブルンと豊満で真白い乳房が現れる。下着ブラジャーに収まりきらず、綺麗な淡いピンク色の乳輪がはみ出ている。
 ゆあんは顔を両手で覆っているが、頬が真っ赤なのがバレバレだ。

「どうしたの?」

「やっ、は、はずかしい……」

「かわいいよ」

「そんなっ――んああっ!」

 下着をずらし、ピョコッと出た乳首に思い切り吸い付く。ときどき舐めて転がしては、ときどき軽く噛むのを繰り返す。

「んあああっ、だめ…だめだよぉっ!」

 体をウネり宗太の口から逃げようとするが、逃がさない。しっかりとほぐさないといけない。

「あっ! ああっ、んんああっ…だめだよお、そんなところっ…はずかしいよお!」

 今度は乳房を攻めながら、衣装のスカートをめくり、股の近くに手を忍ばせる。

「んんん…っ!」

 指が太ももに触れるだけで、ゆあんの体はビクビクと震える。
 優しく触れながら、徐々に上へと登る。

 そして、下着の上からゆあんの恥部を指で舐める。

「んあああっ! だめっ、なんか…わたし、へんだよぉ……」

 何度も上下にこする。ゆあんの緊張した体が徐々にほぐれてくる。
 宗太は満を持して下着の中に手を入れた。

「んやあっ! んあっ!」

 小さな突起に指が触れれば、ゆあんは激しく体をのけ反らす。
 宗太は最後の事前作業に入ろうと、体をゆあんの足元にもっていく。

「はあ、はあ……そう、た…さん……?」

 下着を脱がし、顔をゆあんの股の間に埋める。
 スカートを上に捲れば、毛の生えていないまっさらな丘が部屋の光に照らされる。全体が乳首と同じ淡いピンク色で、ヒクヒクと上下に動いている。中から小さな突起がポコッと顔を出していた。

「そうたさんっ! は、はずかしい……んあ゛っっっ!」

 宗太は、その突起にしゃぶりつく。
 突起だけではない。周りも内側も全体を舐めまわし、激しい音を鳴らしながら腟内なかに舌を入れる。

「これっ、ん…すご、いっ――あっ!」

 ゆあんの下半身に力が入ってくるのが感じられる。
 宗太は舌の動きを緩めない。

「ら、らめっ…なんか、あっ…きちゃうっ……おかしくっ、なっちゃう――んああっ!!」

 ゆあんの太ももに顔を思いきり挟まれる。お尻にも力が入っていて、条件反射で体がのけ反っているようだった。

「んんっ…そう、た…さん……」

 とろけそうな顔で宗太を見つめる。
 準備万端――

 宗太は自身も下半身を脱ぎ、自慢の肉棒モノあらわにする。

「すごい……」

 ゆあんは、とろけそうな目で宗太の肉棒を見つめる。
 宗太は肉棒を、ゆあんの股に擦り付ける。

「んっんっ……」

「ゆあん……いくよ」

「んっ…うん……きて――」

 ゆっくりと肉棒を、ゆあんの丘に食い込ませる。
 その侵入を拒むようなキツさだった。ぐぐぐっと肉棒にも力が入る。

「い゛っ…んっ……」

「もう少し――」

「うんっ……いあ゛っ――」

 ブチブチと何かを破り、肉棒が奥まで入る。
 肉棒を周りからギュッと包み込み、ゆあんの火照った体温が直接伝わってくる。


 ゆあんと確かに繋がっていた。


「へいき?」

「うっ…んっ、そうた…さん……」

「うごくよ」

「うんっ――んあ゛っ!」

 腰を動かし、肉棒を出し入れする。動くたびに、ゆあんの内側がまとわりついてくる。

「いっ、あっ…そうた、さん…すこし、んっ…ゆっくりっ……」

「ごめん、がまんできない」

 慣れてもらうために今のスピードが一番いいと判断した――いや、それは建前だ。
 スピードを落とすことなんてできない。

 ゆあんが直接伝わってくる。
 ゆあんが自分に重なる。

 幸せが全身を包みこみ、宗太はまともな判断力を失っていた。

「んあっ、あっ、あっ……」

 慣れてきたのか、痛みに快感を覚えてきたのか、ゆあんがなまめかしい声を発する。

「どう?」

「あっ、あっんっ…すこし、んっ…なれて、んっ、きたかもっ……」

 宗太の興奮が増す。合せて、腰の動きも早くなる。

「んあ゛っ! あっ、ああ゛っ…んあああっ!」

 明らかにゆあんも興奮していた。その勢いで体制を変える。

「んあっ、ふあっ?!」

 宗太が後ろに寝ころび、ゆあんが上にくる状態になる。

「んっ、やっ…はず、かしい……」

「うごいてみて」

 ゆあんは顔を真っ赤にしながらも、そっと腰を動かす。
 自分で動かしたのに、途端にゆあんはビクンと体を震わせる。

「んあっ、な、んに…これ……」

 あまりの感覚に戸惑っていたため、宗太も腰を振って手伝ってあげる。

「だっ、だめっ……いま、はっ、んあああっ! らめっ!」」

 ゆあんのはみ出た乳房が大きく揺れる。
 ゆあんの腰遣いも激しさを増し、くちゅくちゅと絡み合う音が鳴る。

「んん゛っ! すごいっ、んあっ! へ、へんだよおっ…また、きちゃうよぉっ!」

 宗太も負けじと腰を動かした。

「んああ゛っ! らめえっ! ゆあんっ、おかしくなっちゃうよおっ!」

「ゆあんっ、もう、だめ――」

「あああ゛っ! ゆあんもだめえっ! ゆあんへんになっちゃってるよお…もうだめえっ!」

「いくよっ」

「きてぇっ! そうたさん゛っ…いっぱいきてぇえっ!」

 宗太の下半身に力が入る。
 ゆあんの下半身も、全てを吸い取ろうと締りが強くなる。

 ゆあんは天井を向きながら、口を開けていた。
 膣内なかから溢れた精液が肉棒を伝う。

 少し体を動かした拍子でツルンと肉棒が抜けると、出きっていなかった精液が部屋中に飛び散り、ゆあんの顔や衣装――胸元にも飛び散る。

 宗太は息を落ち着かせるのに長い時間を要した。
 息が落ち着いてくると、スマートフォンからゆあんの声がする。ライブ配信のお別れの挨拶だった。

 壁に飾ってあるゆあんの等身大ポスター、顔と胸元に精液が飛び散っていた。


 まだ心拍数が高い。経験のない量の精液。
 汗も体中から噴き出ている。

 暑い。あつい。

 頭が痛い――


 部屋の電気も消さず、ライブ配信も流したまま、宗太は目を閉じる。
 部屋の扉は、鍵が閉まったままだった――
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