篠辺のお狐様

実戦練習の再戦、犬枇杷

　実戦練習の再戦、三人目は犬枇杷。
前回は、的を小さくする為に子犬になったが、柚子の苦無を12本中４本の掠り傷。
　杏の幻影対策で、現在地を把握する為に遠吠えをしたが、当然こちらの位置も知ら
れ、怒涛の12手が繰り出された。何とか全て躱しながら耐え忍んだ。この時、嗅覚が
遮られなかったので、方向を見失う事はなかった。
　鴉山椒の羽根刀10枚中2枚が掠り、走り抜けようと焦った時に、弓矢2射中1射が
右の後ろ足に命中した。
　ここまでで毒の攻撃がなかったので、最後の猿豆の攻撃に毒が使われていると考え
毒の匂いから居場所を突き止めたが、上手く躱せず12針中5針が命中していた。
　毒が回り切らないうちに、テントへ戻れたが制限時間内ではなかった。

　今回、木通や銀木犀を見る限り、毒を使った攻撃はなさそうだったが、傷を見ても
分かるほどに激しい攻撃だったと推測出来た。

　前回同様に、子犬姿でテントを飛び出した直後に、風を切るような音と共に弓矢が
地面に突き刺さった。鴉山椒の攻撃だと分かった。
　だが前回とは違い、羽根刀が飛んで来る事はなかった。
前回の事を踏まえて、鴉山椒は弓矢のみの攻撃に変えたようだ。羽根刀の方が一度に
複数枚飛ばせるので、当たる確率は上がるが、獣の姿の時は体毛があるので、必然的
に掠り傷が多くなる。
　弓矢は、羽根刀に比べ早い攻撃とは言えないが、当たった時の威力は大きい。
前回、子犬の動きなら弓矢で狙い難いと考えたが、命中した。恐らく鴉山椒は弓矢の
腕を上げて対策を取ってきただろう。
　結果は、12射中3射命中。右肩、左耳、お尻と広範囲でくらった。

　次のエリアに入っても直ぐには攻撃されなかった。
油断せずに少しでも距離を稼ごうと、足を止めずに走り続けると、両手に小柄を構え
た猿豆が居た。
　飛び道具でなかった事に驚きはしたが、小柄ならばこちらは超大型犬で対峙した。
速さ、身軽さ、判断力、どれ一つ敵うものはないが、この姿には体重があり、脚力や
踏ん張りも利く、全速力で走り抜けながら小柄を刺されないようにして、いざという
時は体当たりや前足で払い除ける事にした。
　結果は、12本中3本。額、右前足が切り傷。お尻に刺し傷となった。

　次のエリアは絶対、柚子だと踏み入れる前に分かった。
以前、篠辺の依頼で怪異と対峙した時、幻影の中に居たことがある。柚子の香が充満
している訳ではないが、わずかでも嗅いだ事があれば忘れない。
　柚子の幻影は、バリエーションがあるので断定は出来ないが、剣なら超大型犬の姿
で挑むつもりだ。
　踏み入った途端、複数の柚子の囲まれ、分身の幻影だと理解した。
超大型犬の姿を捉とらえると、袴はかま姿の柚子たちは薙刀なぎなたを手に、其々それぞれが四方八方から狙いを定めて、切り込んで来た。
　袴姿で薙刀を持つ柚子は、夕霧と稽古している時によく見かけた姿だった。
槍の方が一撃で深手を負わせられるが、主に女性が扱う事が多い薙刀は刃が大きく、
振り回して切り刻むのも、突き刺す事も出来るので敢えて、薙刀にしたのだろう。
　囲まれてからの交戦だったので、かなり不利だが尾や体を使い、吹き飛ばす事で
幻影を消し、その隙すきに急ぎ子犬に戻った。
　だが、それに合わせて柚子は、薙刀を苦無に替えて攻め立てた。
結果は、薙刀8手中3手が切り傷。苦無4本中1本が腹を掠った。

　最後は杏のエリア。
超大型犬で体当たりしなくても、逃げ切れる。姿が大きければ影も大きくなるので、
リスクも増える。子犬のまま駆け抜ける事にした。
　それでも、杏の短刀がピンポイントで振り下ろされて、12手中2手が掠った。
何とか凌しのぎ切ってテントに飛び込み、制限時間内に戻る事が出来た。
　
　昨日より傷の数で言えば多いが、対策や戦い方のコツを掴んだ気がする。
今後、武器の習得を目指してみようと思う。