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木通の甘え
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あやつらが揃って、御嶽へ旅立つのを見送った。
二泊三日、少しでも羽を伸ばして帰って来れれば良いがのぉ…。
留守の間は、式神達が日常の事を熟しておった。
朝に行っている外の巡回を、猿豆と犬枇杷。そして木通。
境内の巡回を、杏と鬼縛り。そして銀木犀。
次年度を見越して、式神達も仕事を移管出来るように、外の巡回、境内の巡回、
小さな祠近くの水脈、風穴などの見回り、篠辺へ来てからの依頼内容によっては、
銀木犀と木通が協力して行う必要も出てくる。故に、実践的な練習もしておった。
「外の巡回は、まず、範囲を正確に覚える事。次に、小さな変化を見逃さない事。
最後に、出来るだけ短時間で戻れるようにしていく事。これが基本だ。」
猿豆は、木通に告げた。
「外巡回の覚え方としては、隅々まで確実に、見逃さず正確に、着実に最短時間。」
猿豆に、同じように告げられた事がある犬枇杷は、最初は〝見逃さず正確に〟が
難しかった事を思い出していた。
「取り敢えず、木通。今回で範囲だけは覚えたか?」
猿豆が木通に声を掛けるが、全く返事が返ってこない…。
「はあぁ。はっきり言わせて貰うわよ!…あのね、式神っていう共通点はあるけど、私はヒト型なの。四足歩行なんて出来ないのぉ。正直…途中から…アンタ達のケツ、見失わないように追い掛けるだけで、精一杯だったわよ!」
猿豆は、怒気を吐き出すように深いため息をつきながら、天を仰いだ。
「やっと気付いたって感じ⁈…ホント、野性味あふれる走りだったわぁ。…今だからモフモフでフリフリのお尻も、キュートだったって保存出来るけど…。もうチョット私の事も考えてよぉ。」
あぁ…猿豆さんの米噛みに青筋が…怒ってらっしゃいますよ。…ボクには効果音の雷鳴が聞こえる…。
「……木通。昼にもう一回、外巡回へ行くから…その時にボクがもう一度、おしぇ」
「いや。覚えるまで何度でもオレが指導しよう。…基本的に一日4回ぐらいの外巡回だが、何度やっても問題はないからな。今日中に覚えれば良しとしよう。」
「はぁぁ?何度もやらせるの⁈…冗談でしょ。私は獣じゃないの!出来ないから。」
…言い訳はダメです。猿豆さんは、仕事の指示に妥協はしないし、冗談も言わない。
「木通、甘えんな。オレは左京さんと初めて外巡回行った時、このペースだった。
その時、柚子も一緒だったが一度で覚えた。付いて来れないという事もなかった。
ちなみに、杏に外巡回を指導したのもオレだが、杏も二度目などなかった。…姿など
言い訳だ。オレらは篠辺で、左京さんと夕霧さんの姿を見て来た。此処での仕事で、
式神が出来ないと諦める事は、許されない。もしオレが諦めれば、左京さんの足を
引っ張る事になる。依頼を熟せないだけじゃなく、怪我をするかも知れない。篠辺の
式神に、次はない。」
二泊三日、少しでも羽を伸ばして帰って来れれば良いがのぉ…。
留守の間は、式神達が日常の事を熟しておった。
朝に行っている外の巡回を、猿豆と犬枇杷。そして木通。
境内の巡回を、杏と鬼縛り。そして銀木犀。
次年度を見越して、式神達も仕事を移管出来るように、外の巡回、境内の巡回、
小さな祠近くの水脈、風穴などの見回り、篠辺へ来てからの依頼内容によっては、
銀木犀と木通が協力して行う必要も出てくる。故に、実践的な練習もしておった。
「外の巡回は、まず、範囲を正確に覚える事。次に、小さな変化を見逃さない事。
最後に、出来るだけ短時間で戻れるようにしていく事。これが基本だ。」
猿豆は、木通に告げた。
「外巡回の覚え方としては、隅々まで確実に、見逃さず正確に、着実に最短時間。」
猿豆に、同じように告げられた事がある犬枇杷は、最初は〝見逃さず正確に〟が
難しかった事を思い出していた。
「取り敢えず、木通。今回で範囲だけは覚えたか?」
猿豆が木通に声を掛けるが、全く返事が返ってこない…。
「はあぁ。はっきり言わせて貰うわよ!…あのね、式神っていう共通点はあるけど、私はヒト型なの。四足歩行なんて出来ないのぉ。正直…途中から…アンタ達のケツ、見失わないように追い掛けるだけで、精一杯だったわよ!」
猿豆は、怒気を吐き出すように深いため息をつきながら、天を仰いだ。
「やっと気付いたって感じ⁈…ホント、野性味あふれる走りだったわぁ。…今だからモフモフでフリフリのお尻も、キュートだったって保存出来るけど…。もうチョット私の事も考えてよぉ。」
あぁ…猿豆さんの米噛みに青筋が…怒ってらっしゃいますよ。…ボクには効果音の雷鳴が聞こえる…。
「……木通。昼にもう一回、外巡回へ行くから…その時にボクがもう一度、おしぇ」
「いや。覚えるまで何度でもオレが指導しよう。…基本的に一日4回ぐらいの外巡回だが、何度やっても問題はないからな。今日中に覚えれば良しとしよう。」
「はぁぁ?何度もやらせるの⁈…冗談でしょ。私は獣じゃないの!出来ないから。」
…言い訳はダメです。猿豆さんは、仕事の指示に妥協はしないし、冗談も言わない。
「木通、甘えんな。オレは左京さんと初めて外巡回行った時、このペースだった。
その時、柚子も一緒だったが一度で覚えた。付いて来れないという事もなかった。
ちなみに、杏に外巡回を指導したのもオレだが、杏も二度目などなかった。…姿など
言い訳だ。オレらは篠辺で、左京さんと夕霧さんの姿を見て来た。此処での仕事で、
式神が出来ないと諦める事は、許されない。もしオレが諦めれば、左京さんの足を
引っ張る事になる。依頼を熟せないだけじゃなく、怪我をするかも知れない。篠辺の
式神に、次はない。」
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