篠辺のお狐様

梁瀬

文字の大きさ
上 下
138 / 180

やっと年末休み 宿の予約⁈

しおりを挟む
 狐と犬は、拝殿に残った左京と夕霧に、今回の件について話した。
「そういう事だったのですね。…ですが以前から、出掛ける必要も、出掛けたい場所もないとお伝えしておりましたのに…。出掛けないのは、可笑しいことですか?」
【左京、この狐は多くの神主共を見て来たが、歳を重ねておる者なら億劫おっくうで出掛ける事もなくなるが、若い神主ほど休日をほっしておったし、出掛けられぬ事を嘆いておる姿を良く目にして来た故、今回ならば、良い機会なのではないかと思うたのじゃ。】
「ありがとうございます。留守にするとなりますと、此処の事や両主祭神様の事を
何も出来ませんので、ご不自由な思いをなされるのではありませんか?」
〖夕霧も心配性だな。此処の事など、これだけ式神達が居るのだから任せてしまえばいい。特別な事がなければ、式神達も慣れているから問題ないだろう。〗
 お狐様も大神様も、年末休暇中に出掛けさせる事は決定しているみたいだ…。

「あの…出掛ける事は決まっている…のですか?」
夕霧は、一応確認してみた。
【あぁ。行ってこい!】
〖今度いつ、このような時間が取れるか分からないぞ。〗
そう言われては、断れそうにないよね…。

 だからといって伏見に行っても…それに急過ぎて宿など取れないだろう。
「あの…場所は決めさせて貰っても宜しいでしょうか?…今から伏見の近くで、宿を探すのは困難でしょうから…。」
【贅沢を言わぬ二人ぐらい、倉稲に言えば、伝手つてがあろう。】
ぅん…どうせ行くなら、一般的な宿が良いかな…。だって、倉稲様の伝手ってなると新たな出会いがありそうで…。
【なんじゃ、行きたい場所があるのか?】
「今、私一人の考えなだけで、夕霧さんに相談していないのですが…。私達も御嶽に行かせては頂けませんか?」
「……なるほど。そうですね!次年度からは、そちらでお世話になるのですから、
そのような機会を頂けたら嬉しいです。…でも、急なので宿は難しいでしょうか?」

〖あそこなら御師おし(神職)の営む宿坊があるので、恐らくは大丈夫だろう。右京達と同じ宿坊にするか?〗
「それなら同じ二部屋の予約で、狭くても4人行けますね!」
そういって、左京は右京の元に向かった。
「お気遣いありがとうございます。私と姉は、家族旅行も行った事ありませんし、
二人での旅行もした事がなかったので、凄く嬉しいです。って言っても、肝心の宿坊が取れたらの話…ですけどね。」
 夕霧は、はにかむように笑った。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

だからって、言えるわけないだろ

フドワーリ 野土香
ライト文芸
〈あらすじ〉 谷口夏芽(28歳)は、大学からの親友美佳の結婚式の招待状を受け取っていた。 夏芽は今でもよく大学の頃を思い出す。なぜなら、その当時夏芽だけにしか見えない男の子がいたからだ。 大学生になって出会ったのは、同じ大学で共に学ぶはずだった男の子、橘翔だった。 翔は入学直前に交通事故でこの世を去ってしまった。 夏芽と翔は特別知り合いでもなく無関係なのに、なぜだか夏芽だけに翔が見えてしまう。 成仏できない理由はやり残した後悔が原因ではないのか、と夏芽は翔のやり残したことを手伝おうとする。 果たして翔は成仏できたのか。大人になった夏芽が大学時代を振り返るのはなぜか。 現在と過去が交差する、恋と友情のちょっと不思議な青春ファンタジー。 〈主要登場人物〉 谷口夏芽…一番の親友桃香を事故で亡くして以来、夏芽は親しい友達を作ろうとしなかった。不器用でなかなか素直になれない性格。 橘翔…大学入学を目前に、親友真一と羽目を外しすぎてしまいバイク事故に遭う。真一は助かり、翔だけがこの世を去ってしまう。 美佳…夏芽とは大学の頃からの友達。イケメン好きで大学の頃はころころ彼氏が変わっていた。 真一…翔の親友。事故で目を負傷し、ドナー登録していた翔から眼球を譲られる。翔を失ったショックから、大学では地味に過ごしていた。 桃香…夏芽の幼い頃からの親友。すべてが完璧で、夏芽はずっと桃香に嫉妬していた。中学のとき、信号無視の車とぶつかりこの世を去る。

真冬じゃなくても君のとなりに

きどじゆん
ライト文芸
十二月二十四日のお昼、私は彼の家に久しぶりに訪れた。 今日まで来られなかったのは、準備のため。 そして今日、ようやく準備が整った。 大丈夫、ケーキの配達も手配した。お料理の材料もよし、調理の腕も磨いてきた。 暖房で部屋を暖かくしておいて、冷たい外を歩いてきた彼をお出迎えしてあげよう。 そして言うんだーーおかえりなさいって。 (四話完結)

川崎マフィア 〜こちら、HAPPINESS CLUB〜

ニコラテトラ
SF
日本一治安が悪いと言われる町「川崎」。そこでは毎日のようにギャングやマフィアによる抗争が繰り広げられている。貧乏高校生「卍原 卓郎」(がんじばら たくろう)は学費のために川崎でバイトをすることになる。しかし、そのバイト先はなんとクラブ!? おまけにそのクラブにはマフィアという裏の顔があったのだ、、、 バトルコメディになる予定

砂漠にて

穏人(シズヒト)
ライト文芸
砂漠で行き倒れた男が、たまたま通りがかった青年に命を救われる。医者ではないと言いながら医療道具を持つ青年に、男はある質問をする。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

白石マリアのまったり巫女さんの日々

凪崎凪
ライト文芸
若白石八幡宮の娘白石マリアが学校いったり巫女をしたりなんでもない日常を書いた物語。 妖怪、悪霊? 出てきません! 友情、恋愛? それなりにあったりなかったり? 巫女さんは特別な職業ではありません。 これを見て皆も巫女さんになろう!(そういう話ではない) とりあえずこれをご覧になって神社や神職、巫女さんの事を知ってもらえたらうれしいです。 偶にフィンランド語講座がありますw 完結しました。

クロック・フロッグ

羽上帆樽
ライト文芸
AとBは不思議な世界に迷い込んだ。キーワードは、古書店、炒飯、船長、分離タイプ、そして、乖離タイプ。意味はないのに意味があると思い込み、意味があるのに意味はないと解釈する。ということの意味は何か?

処理中です...