篠辺のお狐様

梁瀬

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紹介と策

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「あの…、大変お聞きし辛いのですが…。大神様、こちらは倉稲様で、間違い
ありませんか?」
左京は、一番知りたかった事を聞いた。
〖確かに倉稲様だ。お姿もお声も、話し方も全くお変わりない。あの頃のままだ。〗

「倉稲様、大変失礼いたしました。神か妖かの判断が付かず、偽りの名を告げて
おりました。申し訳ありません。これより、篠辺、東雲に分かれ、紹介させて頂き
たいのですが、よろしいでしょうか?」
左京の言葉に
『おぉ!そうか。よろしく頼む。』

「先ずは篠辺から、私が神主を務める、真淵 左京と申します。巫女を務める、
真瀬 夕霧です。」
『そうか!左の神主とは、左京の名から。夕の巫女は、夕霧の名からであったか。』
「はい。私の式神を紹介します。猿豆、鴉山椒、犬枇杷と申します。」
『猿は名からで、左猿は左京から一字取ったのか。犬と犬枇杷も同じじゃな。
そして鴉山椒。獣の名故、姿も変えられるようじゃな。よろしく頼む。』
左京も、式神達も一礼した。

「私の式神を紹介します。柚子、杏、鬼縛りと申します。」
『ゆうのゆうは、夕の柚と記したのじゃな。夕霧の柚子か。鬼というのは鬼縛りで
あったか。そして杏。実のなる植物じゃな。よろしく頼む。』
夕霧も、式神達も同じように一礼した。

「次は東雲です。私が神主を務める、真淵 右京と申します。巫女を務める、
真瀬 朝霧です。」
『そうであろう!やはり双子であったか。似ておるのぉ…似過ぎてて間違えると
思うが、許してくれ。』
「私の式神を紹介します。銀木犀と申します。」
『そうか。よろしく頼む。』
右京と銀木犀も一礼した。
「私の式神を紹介します。木通と申します。」
『よろしく頼む。』
朝霧と木通も、一礼した。
 ここまで黙っていた二人は、きっかけは分からないが、倉稲様と、鏡越しにあったのだろうと推測出来た。何者か分からない間、名を知られないように偽名を使っていたが、説明が面倒だったので、黙って居ろと放置された事を理解した。

「倉稲様は、両神社の主祭神にお会いしたいと仰っておられます。私達は、身元が
確認出来て保証されれば、鏡を磨く事など造作ぞうさもない事です。」
左京は、倉稲様のお気持ちに添えるように、対策を講じた。
〖身元の確認も保証も、この狼がする。直ぐに、鏡を磨いてくれ。〗
「倉稲様にお越し頂いても、お狐様は天邪鬼ですから、予め知らせてしまうと
姿を隠すと思います。少し乱暴ですが、私達は鏡の用途を知らず、他のお品同様に
手入れをした。という事にしては如何でしょう?」
夕霧は、不自然でない理由で、鏡を出して磨いた設定を考えた。

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