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神主に告白 2
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「こんにちは。お時間少し良いですか?」
もう一人の小娘も来おったか。
「ん?…こんにちは。御祈祷ですか?」
左京は、相手を確認して言った。
その時、左京の隣に犬、小娘の隣に狐が座った。
「すみません。そういうのでは…ないんですけど、お話しっていうか…まずお名前教えて貰えますか?」
緊張したり気負ったりはしていない様子じゃが、押しが強いのぉ
〖左京の事だから気付いているだろうが、彼女の言葉で言わせてやれよ。〗
【いつもみたいに切れ味良く、バッサリ行くなよ。】
犬も狐も、左京を知っているからこその忠告だった。
「篠辺神社の神主をしております。真淵です。」
デカ過ぎる存在が二つ鎮座しているけど、今だけは何も見えないし、一切聞こえないものとした。
「少し前から、こちらで参拝させて貰っています。お気付きですか?」
何なんだ…目力も強めだけど、何より圧が強過ぎんだけど…。
「そうだったんですか、ありがとうございます。沢山の参拝者さんがいらっしゃるので、御祈祷やご依頼をお受けした方は覚えていますが…。申し訳ありません。」
〖気の強い女子だな…。〗
【一突きで終わらせるでないぞ。】
「…真淵さんは、どういう女性が好きですか?」
「そう…ですね。不器用でも気遣える優しさや、心の温かい女性が好きです。」
〖はぐらかすかと思ったが…。〗
「もしかして、お付き合いされている方が…。」
【具体的じゃったが、既におったのか?】
「いいえ。お付き合いはしていません。気持ちを伝えた事もありませんし、今後も伝えるつもりもありません。曲がり形にも、この仕事を続けている間は、どなたともお付き合いしようとは考えないと思います。大切に思えばこそ、尚更、相手を困らせたり、悩ませたりしたくありません。」
〖先走り過ぎだ。ちゃんと言いたい事を言わせてやれ。〗
【そうか…。左京らしいのぉ。】
じゃが小娘は、得心を得ておらんようじゃな…。
「それでは思いも伝わらないし、真淵さんが幸せにはなれませんよ。」
〖おぉ、肝心な事が言えてないのに、切り込んで行くな。〗
犬も、目を丸くした。
「困惑させるかも知れないなら、伝えなくて良いと思っています。それに私の幸せは、その人が穏やかに過ごせて、幸せで居られれば十分です。」
「分かりました。真淵さんの考えを聞けて良かったです。…失礼します。」
【左京に聞くだけ聴いて、言わないで帰るのか!】
「お気を付けてお帰り下さい。…さようなら。」
左京は、まるで何も無かったかのように、そそくさと姿を消す彼女の背中を、見えなくなるまで見送った。
〖言わないままで良かったのか?〗
「私の事を聞いただけですから、彼女の中では〝振られた訳ではない〟のでしょう。」
【小娘の自尊心というか、自己肯定感かのぉ。しかし、左京はもっと直接的にバッサリ切り捨てるような、はっきり諦めさせるような言い方をするじゃろうと、案じておった故、意外じゃった。】
狐の言葉に、犬も頷いていた。
「最初から自身の事を話さず、圧が強くて、正直聞くのが怖かったので、初対面の人に敢えて話さなくても良い事を話しました。」
左京は、自分が口にした事を思い出し、火照りそうな顔を背けた。
「左京さぁん。不器用でも気遣える優しさや、心の温かい人って、もしかして私ですかぁ?」
「頭の悪い猛獣はお任せください。檻に戻して来ます。」
木通の首根っこを摑まえて、鴉山椒が言った。
もう一人の小娘も来おったか。
「ん?…こんにちは。御祈祷ですか?」
左京は、相手を確認して言った。
その時、左京の隣に犬、小娘の隣に狐が座った。
「すみません。そういうのでは…ないんですけど、お話しっていうか…まずお名前教えて貰えますか?」
緊張したり気負ったりはしていない様子じゃが、押しが強いのぉ
〖左京の事だから気付いているだろうが、彼女の言葉で言わせてやれよ。〗
【いつもみたいに切れ味良く、バッサリ行くなよ。】
犬も狐も、左京を知っているからこその忠告だった。
「篠辺神社の神主をしております。真淵です。」
デカ過ぎる存在が二つ鎮座しているけど、今だけは何も見えないし、一切聞こえないものとした。
「少し前から、こちらで参拝させて貰っています。お気付きですか?」
何なんだ…目力も強めだけど、何より圧が強過ぎんだけど…。
「そうだったんですか、ありがとうございます。沢山の参拝者さんがいらっしゃるので、御祈祷やご依頼をお受けした方は覚えていますが…。申し訳ありません。」
〖気の強い女子だな…。〗
【一突きで終わらせるでないぞ。】
「…真淵さんは、どういう女性が好きですか?」
「そう…ですね。不器用でも気遣える優しさや、心の温かい女性が好きです。」
〖はぐらかすかと思ったが…。〗
「もしかして、お付き合いされている方が…。」
【具体的じゃったが、既におったのか?】
「いいえ。お付き合いはしていません。気持ちを伝えた事もありませんし、今後も伝えるつもりもありません。曲がり形にも、この仕事を続けている間は、どなたともお付き合いしようとは考えないと思います。大切に思えばこそ、尚更、相手を困らせたり、悩ませたりしたくありません。」
〖先走り過ぎだ。ちゃんと言いたい事を言わせてやれ。〗
【そうか…。左京らしいのぉ。】
じゃが小娘は、得心を得ておらんようじゃな…。
「それでは思いも伝わらないし、真淵さんが幸せにはなれませんよ。」
〖おぉ、肝心な事が言えてないのに、切り込んで行くな。〗
犬も、目を丸くした。
「困惑させるかも知れないなら、伝えなくて良いと思っています。それに私の幸せは、その人が穏やかに過ごせて、幸せで居られれば十分です。」
「分かりました。真淵さんの考えを聞けて良かったです。…失礼します。」
【左京に聞くだけ聴いて、言わないで帰るのか!】
「お気を付けてお帰り下さい。…さようなら。」
左京は、まるで何も無かったかのように、そそくさと姿を消す彼女の背中を、見えなくなるまで見送った。
〖言わないままで良かったのか?〗
「私の事を聞いただけですから、彼女の中では〝振られた訳ではない〟のでしょう。」
【小娘の自尊心というか、自己肯定感かのぉ。しかし、左京はもっと直接的にバッサリ切り捨てるような、はっきり諦めさせるような言い方をするじゃろうと、案じておった故、意外じゃった。】
狐の言葉に、犬も頷いていた。
「最初から自身の事を話さず、圧が強くて、正直聞くのが怖かったので、初対面の人に敢えて話さなくても良い事を話しました。」
左京は、自分が口にした事を思い出し、火照りそうな顔を背けた。
「左京さぁん。不器用でも気遣える優しさや、心の温かい人って、もしかして私ですかぁ?」
「頭の悪い猛獣はお任せください。檻に戻して来ます。」
木通の首根っこを摑まえて、鴉山椒が言った。
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