篠辺のお狐様

梁瀬

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要石 15 影踏み

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 午前7時過ぎ、目の前が急に明るくなり、今まで刺すような寒さを感じていた頬も、朝日を浴びると温かさに包まれた。
 大きな岩の上で寝ていた杏も、頬に太陽の陽射しが当たり目を覚ました。
「んっ…あれ?寝ちゃって…ごめんなさい。それと掛けてくれて、ありがとうございました。お狐様は戻られましたか?」
寝起きで状況が分からず、少し焦りながら言った。
「大丈夫。まだ戻って来ていないよ。それに今、朝日が此処まで届いた所だ。まだ眠いかも知れないけど杏には、早速影踏みを頼んでも良いかな?」
 杏はしっかり頷き、立ち上がった。

 薄暗い中、左京が周囲を下見した感じから、杏には、数か所の影踏みをして貰った。
予想通りの水脈の流れと、それを塞いだ大岩によって、地下に大量の水が溜まっている事が分かった。
 原因となったのは、さっきまで杏が寝ていた大岩で、崖崩れか何かで落下して、地中深く突き刺さり、水脈を塞いだようだ。

 そこで、湖の底だった地盤の柔らかい所と、大岩の周囲を出来るだけ掘り、大岩の深い部分の数か所に、火薬を詰めた物を仕込んだ。
正直、依頼内容によっては妖などに、攻撃の手段として火薬を用いる事もあるが、今回は火薬量が半端ないし、一応計算したが、どの程度の破壊力があるかは、左京自身も分からなかった。

 杏には、前もって小高い丘の上の祠の所まで上がって、待っていて貰った。
左京も、大岩と軟らかい地盤に仕掛けた爆薬の導火線を長めに準備して、出来るだけ遠くで点火出来るようにした。
 杏に合図を出してから点火し、直ぐに杏の元へ向かった。

 最初に大岩に仕掛けた爆薬が、大岩の大部分を砕いたが、わずかに火薬が少なかったようで、完全には砕く事が出来ずに残ってしまった。
次に、軟らかい地盤に仕掛けた方は、爆破後、地下に溜まった水に押し上げられるように、水柱が上がった。
 地下に溜まっていた水が動き、爆破しきれず水脈上に残っていた岩も、水圧が掛かりもろくなっていて砕け、流れが戻った。

 杏は大きな音に驚いて、左京の後ろで、両手で両耳を塞ぎ、小さい体を更に縮めて座っていた。
「ごめん。予想以上に大きい音でびっくりさせちゃったね。こっちにおいで。ほら、何とかなったみたいだ。」
左京は、その場で恐々こわごわ、立ち上がった杏を、大岩があった所が見えるように抱き上げた。
 目の前の景色が、見る見るうちに変わっていき、杏は目を丸くした。

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