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要石 6 勾玉
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〖右京、この狼の気のみを感じろ。集中力の勝負になるぞ。気を抜くなよ。〗
狼と右京は目を合わせ頷いた。
「夕ちゃん…大丈夫だよね。っていうか、私もフォロー出来るように頑張るから、無理しないでね。」
「ありがとう。朝ちゃんこそ私を心配して、取り入れた気を溜め込んだりしないでよ!」
二人で確認しながら、要石との距離を計った。
右京さんの結界が安定した所で、朝霧は要石と、夕霧は朝霧と繋がった。
それを確認して、鴉山椒は右京の結界から出た。いつでも夕霧の指示で飛べるように、結界ギリギリの所で待つ事にした。
暫くして夕霧は、ゆっくりと要石に話し掛けた。
声が返ってくる保証などなかったが、以前、朝霧と共に触れた時に声ではなく、気持ちというか考えみたいなものを感じたような気がした。
耳に言葉が届いたのではなく、頭の中に直接響くような感覚だった。
「以前、要石様に触れた時、〝温かさと孤独感〟みたいなものを感じたように思うのですが、貴方様とお話しさせて頂けませんか?」
朝霧は夕霧の話しを聞きながら、自分も同じことを感じていたので、心の中で夕霧と同じように声を掛け続けた。
「私は言葉でしか貴方様にお伝えする方法がないので、このまま一方的かも知れませんが話し続けます。要石様が動かれたという事は、何処かの地脈か水脈に異変が起こっているという事ですよね?私達に手伝わさせて貰えませんか?もし場所が分かれば、その地へ向かい、以前の様に流れを戻す事が出来るかも知れません。このままなら貴方様は更に大きく揺れ、大地震が起きてしまいます。それだけは、どうしても防ぎたいのです。お教え頂けませんか?」
朝霧も夕霧も思っていた以上に、気の流れが早く、今までの比ではない量の気に、立っているのも辛い程だった。
「どうか、お話しさせて頂けませんか?」
狼は、二人が真剣に取り組み、今にも倒れてしまいそうな姿に止めてやりたいと思うが、声を掛けられずにいた。
そして、右京も初めての結界を何とか安定させたが、いつまで保てるか正直分からなかった。
ふと狼は何かを思いつき、
〖右京。暫し此処を離れるが、大丈夫だな?〗
右京は気を乱さないように目配せした。
戻って来た狼の牙に紐が引っ掛かっていた。
〖これを使ってみろ。〗
狼は夕霧に差し出した。
「これは?」
夕霧が受け取ったのは、長い紐の付いた勾玉だった。
〖以前、此処にいた者が書物を整理した際に、要石の事が書かれた文献と一緒にあったが、宝物庫へ安置したと言っていたのを思い出した。役に立つかも知れないと閃いた。〗
早速、夕霧は首から下げて勾玉を握りしめた。
〖勾玉は魔除けとして使われたが、祭祀にも使われ念を込めたり、呪術にも用いられた。要石からの気も込められるはずだ。体内に溜め込まず、勾玉に送り込んでみろ。〗
「分かりました。やってみます。」
夕霧は体内の気を握りしめた勾玉に送り込むイメージをした。
送り込む事が出来るようになると、後は意識的に送り込まなくとも、吸い取られるような感覚になった。
「ありがとうございます。楽になりました。」
狼は一安心して、右京の元へ戻った。
狼と右京は目を合わせ頷いた。
「夕ちゃん…大丈夫だよね。っていうか、私もフォロー出来るように頑張るから、無理しないでね。」
「ありがとう。朝ちゃんこそ私を心配して、取り入れた気を溜め込んだりしないでよ!」
二人で確認しながら、要石との距離を計った。
右京さんの結界が安定した所で、朝霧は要石と、夕霧は朝霧と繋がった。
それを確認して、鴉山椒は右京の結界から出た。いつでも夕霧の指示で飛べるように、結界ギリギリの所で待つ事にした。
暫くして夕霧は、ゆっくりと要石に話し掛けた。
声が返ってくる保証などなかったが、以前、朝霧と共に触れた時に声ではなく、気持ちというか考えみたいなものを感じたような気がした。
耳に言葉が届いたのではなく、頭の中に直接響くような感覚だった。
「以前、要石様に触れた時、〝温かさと孤独感〟みたいなものを感じたように思うのですが、貴方様とお話しさせて頂けませんか?」
朝霧は夕霧の話しを聞きながら、自分も同じことを感じていたので、心の中で夕霧と同じように声を掛け続けた。
「私は言葉でしか貴方様にお伝えする方法がないので、このまま一方的かも知れませんが話し続けます。要石様が動かれたという事は、何処かの地脈か水脈に異変が起こっているという事ですよね?私達に手伝わさせて貰えませんか?もし場所が分かれば、その地へ向かい、以前の様に流れを戻す事が出来るかも知れません。このままなら貴方様は更に大きく揺れ、大地震が起きてしまいます。それだけは、どうしても防ぎたいのです。お教え頂けませんか?」
朝霧も夕霧も思っていた以上に、気の流れが早く、今までの比ではない量の気に、立っているのも辛い程だった。
「どうか、お話しさせて頂けませんか?」
狼は、二人が真剣に取り組み、今にも倒れてしまいそうな姿に止めてやりたいと思うが、声を掛けられずにいた。
そして、右京も初めての結界を何とか安定させたが、いつまで保てるか正直分からなかった。
ふと狼は何かを思いつき、
〖右京。暫し此処を離れるが、大丈夫だな?〗
右京は気を乱さないように目配せした。
戻って来た狼の牙に紐が引っ掛かっていた。
〖これを使ってみろ。〗
狼は夕霧に差し出した。
「これは?」
夕霧が受け取ったのは、長い紐の付いた勾玉だった。
〖以前、此処にいた者が書物を整理した際に、要石の事が書かれた文献と一緒にあったが、宝物庫へ安置したと言っていたのを思い出した。役に立つかも知れないと閃いた。〗
早速、夕霧は首から下げて勾玉を握りしめた。
〖勾玉は魔除けとして使われたが、祭祀にも使われ念を込めたり、呪術にも用いられた。要石からの気も込められるはずだ。体内に溜め込まず、勾玉に送り込んでみろ。〗
「分かりました。やってみます。」
夕霧は体内の気を握りしめた勾玉に送り込むイメージをした。
送り込む事が出来るようになると、後は意識的に送り込まなくとも、吸い取られるような感覚になった。
「ありがとうございます。楽になりました。」
狼は一安心して、右京の元へ戻った。
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