篠辺のお狐様

梁瀬

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要石 2 動く

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 未だ10代のあやつらなら、いくらでも興味を持ち、惹かれる事もあるだろう。
だが、あやつらは何一つ興味を示す様子がないんじゃ。
 例えば、休みらしい休みがなかったとしても
「行きたい所も、会いたい人も居ませんから。」
などと出掛ける事もせず。
「基本的に仕事着さえあれば、問題ありませんよ。」
着飾る事もせず。
 今時の絵で描かれたものや、ほぼ裸の女が載ったものでもなく、常にあやつらが読みふけっているのは、時代を経てぼろぼろになった古い文献で、中はやたらと達者な筆文字が並ぶだけのものじゃ。
 何が楽しいのか、あやつらは休日も仕事着を着て、境内や部屋で文献を読んでおる。
全て満たされておるのかと思うほど、充実して過ごしているように見えるから不思議じゃ。何とも分からん奴らじゃ。

 今回の休みは、のんびりと…と思うておったが、アレが動くかも知れぬ故、どうなるか狐にも分からんのぉ。

 12月31日、午前2時半。
横揺れの直後に、下から突き上げられるような地震。休日の深夜であったが、二人は飛び起きた。
 起きた朝霧は着替えを用意し、直ちに禊をしに向かった。
同じく夕霧も禊の準備をしながら、柚子と杏を呼び、
「柚子と杏、良く聞いてください。〝左京さんと右京さんで境内に結界を張って貰ってください。その後は要石の所へ集まってください。私と朝霧は禊の後に向かいます。〟と、柚子は左京さんに伝えてください。その後は左京さんと共に、結界の準備をしてください。杏は、右京さんに伝えた後、要石へ向かい、お狐様と大神様にも同じ事を伝えてください。お願いします。」
そう伝言を言い終えると禊をしに向かった。

 先程の地震で他の二人も、すっかり目が覚めていた。柚子が左京の部屋へ着き、夕霧の伝言を伝え始めると、慣れた手つきで仕事着に袖を通し、身支度をしながら伝言を聞いた。
 そして夕霧に左京さんと共に動くように指示を受けた事を伝えると、鴉山椒を呼び、夕霧達の手伝いをするように指示を出し、部屋を後にした。

 同じく杏が右京の元へ行き、伝言を伝え終えると、
「ありがとう。分かったよ。」
にっこりと微笑んで言った。
 そして杏が立ち去ると直ぐに準備をし、部屋を出た。

 夕霧の元に鴉山椒が着き、左京から二人の手伝いをするように指示を受けた事を伝えると、
「さすが左京さんですね。私が禊をしている事を考えて、女性の貴女に指示を出してくれたのでしょう。そして、空も飛べる身軽さと冷静な貴女が来てくれた事に感謝します。この後、どうなるかは分かりません。貴女自身の判断で動いてもらう事もあるかも知れません。その時は指示など待たず、迷わず行動してください。お願いします。」
夕霧の言葉に、鴉山椒はしっかりと頷いた。

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