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依頼と代償 Ⅴ 五つの代償 R
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神主と巫女は、すぐさま〝お祓いの儀式〟を執り行った。
男は猫の鳴き声が止むと大喜びで
「お祓い料は、明朝一番に銀行振り込みする。」
と約束した。
そして夕霧に向かって、
「前に来た時にも言ったけど、マジで今の給料の二倍。いや三倍出してもいい。
オレの秘書やってくんない!オレ、人を見る目には自信ある。美人の巫女、ホント
そそるわ。考えてみてよ。」
間髪入れず、
「あなたとは初対面ですが。」
と夕霧が男に返し、左京が
「見る目が仮にあったとしても、違いが分からないのが残念な感じですね。」
と言いながら、男の肩に手を置いて笑った。
男は意味が分からなかったが、鳴き声が止んだ事に満足して帰って行った。
明朝二時過ぎ、珍しく東雲の右京と朝霧が揃って、狐を訪ねて来た。
「厄介ごとを押し付ける形になり、申し訳ありません。」
と二人揃って頭を下げた。
「それと、あの男の事が気になりまして…。」
「私共にも、あの男のその後を、お教えください。」
二人は真っ直ぐ狐を見ていた。
狐は左京と夕霧を拝殿へ呼び、右京と朝霧も一緒に同席させた。
それぞれ東と西に分かれ、向き合うように座った。
そして東雲の二人に、あの男が篠辺に来てからの様子や態度、狐との遣り取りを
左京が話して聞かせた。
二人は黙って聞いていたが、左京が話し終えると
「ご厄介をお掛けした上に、あの男の無礼な振る舞いに、随分とご気分を悪くなされたのではありませんか?本当に申し訳ありません。」
右京がそう言うと、二人は再び、深々と頭を下げた。
しかし狐は、東雲の二人に
【久しぶりに楽しく過ごした。それに、あの男を差し出せと朝霧に言うたのは、
この狐じゃ。あの男の無礼を親でもないのに、そちらが頭を下げて謝る事などない。案ずるな。】
と、いつになく上機嫌に笑った。
「猫達の〝五つの代償〟とは、何だったのですか?」
朝霧が不安気に聞くと
【あの男は、五つのものを失う事になるんじゃ。
一つ目は、腹を切られた親子故、〝痛み〟
二つ目は、怒りや苛立ちからの八つ当たり故、〝感情〟
三つ目は、家族を失った故、〝家族〟
四つ目は、舌を切られた故、〝味覚〟
五つ目は、眼を打ち抜かれた故、〝色彩〟を失うんじゃ。】
「あの男は、その五つの代償を受け入れたんですか?」
右京は驚いた。
男は猫の鳴き声が止むと大喜びで
「お祓い料は、明朝一番に銀行振り込みする。」
と約束した。
そして夕霧に向かって、
「前に来た時にも言ったけど、マジで今の給料の二倍。いや三倍出してもいい。
オレの秘書やってくんない!オレ、人を見る目には自信ある。美人の巫女、ホント
そそるわ。考えてみてよ。」
間髪入れず、
「あなたとは初対面ですが。」
と夕霧が男に返し、左京が
「見る目が仮にあったとしても、違いが分からないのが残念な感じですね。」
と言いながら、男の肩に手を置いて笑った。
男は意味が分からなかったが、鳴き声が止んだ事に満足して帰って行った。
明朝二時過ぎ、珍しく東雲の右京と朝霧が揃って、狐を訪ねて来た。
「厄介ごとを押し付ける形になり、申し訳ありません。」
と二人揃って頭を下げた。
「それと、あの男の事が気になりまして…。」
「私共にも、あの男のその後を、お教えください。」
二人は真っ直ぐ狐を見ていた。
狐は左京と夕霧を拝殿へ呼び、右京と朝霧も一緒に同席させた。
それぞれ東と西に分かれ、向き合うように座った。
そして東雲の二人に、あの男が篠辺に来てからの様子や態度、狐との遣り取りを
左京が話して聞かせた。
二人は黙って聞いていたが、左京が話し終えると
「ご厄介をお掛けした上に、あの男の無礼な振る舞いに、随分とご気分を悪くなされたのではありませんか?本当に申し訳ありません。」
右京がそう言うと、二人は再び、深々と頭を下げた。
しかし狐は、東雲の二人に
【久しぶりに楽しく過ごした。それに、あの男を差し出せと朝霧に言うたのは、
この狐じゃ。あの男の無礼を親でもないのに、そちらが頭を下げて謝る事などない。案ずるな。】
と、いつになく上機嫌に笑った。
「猫達の〝五つの代償〟とは、何だったのですか?」
朝霧が不安気に聞くと
【あの男は、五つのものを失う事になるんじゃ。
一つ目は、腹を切られた親子故、〝痛み〟
二つ目は、怒りや苛立ちからの八つ当たり故、〝感情〟
三つ目は、家族を失った故、〝家族〟
四つ目は、舌を切られた故、〝味覚〟
五つ目は、眼を打ち抜かれた故、〝色彩〟を失うんじゃ。】
「あの男は、その五つの代償を受け入れたんですか?」
右京は驚いた。
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