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双子の七五三 8 劣勢
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「そうでしょうか?私にはリザーブしたレストランで、これからディナーを楽しまれるご夫婦に見えますけど。」
「あくまで普段着です。」
母親は、夕霧を睨み付けて言い切った。
「確かに、服のセンスは人それぞれですものね。失礼しました。でも子供を思っていたというのには疑念が残ります。電話で子供の様子を聞かなかったり、拝殿へ来ても子供の様子を見る姿はなかった事。更に、子供の足で約30分で来れるのに、車で来た貴方達は五十分も掛かっている。挙句、その格好ですよ。〝最低限の事だけ〟とか〝普段着〟なんて事は、正直どうでも良いんです。子供の事を心配してパニックになるのも、準備に手間が掛かる事も想像出来ますが、貴方達の場合は違います。明け方に出掛けた子供達を思って、上着を持って来た訳でも、毛布を持って来た訳でもなく、全て自分達の為に使った時間です。急いで車で来られるなら、髭剃りもアクセサリーもいらなかったはずです。この時期、日の出前に誰かと顔を合わせる事なんて稀ですよ。」
夕霧の言葉に、母親も口を閉ざした。
両親の様子に
「お父さんも、お母さんも悪くないの。だから苛めないで。」
「僕達が黙って神社に来たのが悪かったの。だから苛めないで。」
双子は両親の前に立ち
「ごめんなさい。」
頭を下げて謝った。
その姿に父親が
「苛められてなんていないよ。神主さんや巫女さんの方が正しいんだ。父さん達が間違っていたんだ。」
それを聞いて
「私は間違ってなんかっ」
母親が言い掛けた言葉に被せるように
「いや!子供の目から見ても、私達は劣勢だったんだよ。いくら言葉を並べて正当化しようとしても無駄なんだ。〝苛めないで〟なんて子供達に擁護されるようじゃ、親として情けないよな。見苦しい姿をさらしてしまって…すみません。」
父親が双子達の頭を撫でながら話し頭を下げると、母親は唇を噛んだ。
「頭を上げてください。私達は謝らせたかった訳ではないんです。今まで言いたい事を言わせて貰いましたが、気付いて欲しかったんです。子供の事に、もっと目を向けてあげてください。双子は常に一緒にいるので独りぼっちにはなりませんが、同じ歳の子供なんです。二人でいても大人といるような安心感はありません。もう少し目を向けて、もう少し同じ時間を過ごして貰えませんか?」
朝霧は、自分の昔を思い出しながら訴えた。
「私達の両親は離婚して、私達は別々に引き取られましたが、その後、それぞれ独りぼっちで過ごす時間が増え、親は家へ帰って来なくなり、十分な食事も取れない状態が続き、施設へ入りました。そこで後から入所してきた姉と再び、会う事が出来ました。私は食事が出来るようになった事より、独りで過ごす時間がなくなった事の方が嬉しかった。何より姉と一緒に居られる事が嬉しかったんです。」
夕霧の言葉に、父親が言葉を詰まらせた。
「あくまで普段着です。」
母親は、夕霧を睨み付けて言い切った。
「確かに、服のセンスは人それぞれですものね。失礼しました。でも子供を思っていたというのには疑念が残ります。電話で子供の様子を聞かなかったり、拝殿へ来ても子供の様子を見る姿はなかった事。更に、子供の足で約30分で来れるのに、車で来た貴方達は五十分も掛かっている。挙句、その格好ですよ。〝最低限の事だけ〟とか〝普段着〟なんて事は、正直どうでも良いんです。子供の事を心配してパニックになるのも、準備に手間が掛かる事も想像出来ますが、貴方達の場合は違います。明け方に出掛けた子供達を思って、上着を持って来た訳でも、毛布を持って来た訳でもなく、全て自分達の為に使った時間です。急いで車で来られるなら、髭剃りもアクセサリーもいらなかったはずです。この時期、日の出前に誰かと顔を合わせる事なんて稀ですよ。」
夕霧の言葉に、母親も口を閉ざした。
両親の様子に
「お父さんも、お母さんも悪くないの。だから苛めないで。」
「僕達が黙って神社に来たのが悪かったの。だから苛めないで。」
双子は両親の前に立ち
「ごめんなさい。」
頭を下げて謝った。
その姿に父親が
「苛められてなんていないよ。神主さんや巫女さんの方が正しいんだ。父さん達が間違っていたんだ。」
それを聞いて
「私は間違ってなんかっ」
母親が言い掛けた言葉に被せるように
「いや!子供の目から見ても、私達は劣勢だったんだよ。いくら言葉を並べて正当化しようとしても無駄なんだ。〝苛めないで〟なんて子供達に擁護されるようじゃ、親として情けないよな。見苦しい姿をさらしてしまって…すみません。」
父親が双子達の頭を撫でながら話し頭を下げると、母親は唇を噛んだ。
「頭を上げてください。私達は謝らせたかった訳ではないんです。今まで言いたい事を言わせて貰いましたが、気付いて欲しかったんです。子供の事に、もっと目を向けてあげてください。双子は常に一緒にいるので独りぼっちにはなりませんが、同じ歳の子供なんです。二人でいても大人といるような安心感はありません。もう少し目を向けて、もう少し同じ時間を過ごして貰えませんか?」
朝霧は、自分の昔を思い出しながら訴えた。
「私達の両親は離婚して、私達は別々に引き取られましたが、その後、それぞれ独りぼっちで過ごす時間が増え、親は家へ帰って来なくなり、十分な食事も取れない状態が続き、施設へ入りました。そこで後から入所してきた姉と再び、会う事が出来ました。私は食事が出来るようになった事より、独りで過ごす時間がなくなった事の方が嬉しかった。何より姉と一緒に居られる事が嬉しかったんです。」
夕霧の言葉に、父親が言葉を詰まらせた。
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