篠辺のお狐様

梁瀬

文字の大きさ
上 下
18 / 180

双子の七五三 8 劣勢

しおりを挟む
「そうでしょうか?私にはリザーブしたレストランで、これからディナーを楽しまれるご夫婦に見えますけど。」
「あくまで普段着です。」
母親は、夕霧を睨み付けて言い切った。

「確かに、服のセンスは人それぞれですものね。失礼しました。でも子供を思っていたというのには疑念が残ります。電話で子供の様子を聞かなかったり、拝殿へ来ても子供の様子を見る姿はなかった事。更に、子供の足で約30分で来れるのに、車で来た貴方達は五十分も掛かっている。挙句、その格好ですよ。〝最低限の事だけ〟とか〝普段着〟なんて事は、正直どうでも良いんです。子供の事を心配してパニックになるのも、準備に手間が掛かる事も想像出来ますが、貴方達の場合は違います。明け方に出掛けた子供達を思って、上着を持って来た訳でも、毛布を持って来た訳でもなく、全て自分達の為に使った時間です。急いで車で来られるなら、髭剃りもアクセサリーもいらなかったはずです。この時期、日の出前に誰かと顔を合わせる事なんて稀ですよ。」
夕霧の言葉に、母親も口を閉ざした。

両親の様子に
「お父さんも、お母さんも悪くないの。だから苛めないで。」
「僕達が黙って神社に来たのが悪かったの。だから苛めないで。」
双子は両親の前に立ち
「ごめんなさい。」
頭を下げて謝った。

 その姿に父親が
「苛められてなんていないよ。神主さんや巫女さんの方が正しいんだ。父さん達が間違っていたんだ。」
それを聞いて
「私は間違ってなんかっ」
母親が言い掛けた言葉に被せるように
「いや!子供の目から見ても、私達は劣勢だったんだよ。いくら言葉を並べて正当化しようとしても無駄なんだ。〝苛めないで〟なんて子供達に擁護されるようじゃ、親として情けないよな。見苦しい姿をさらしてしまって…すみません。」
父親が双子達の頭を撫でながら話し頭を下げると、母親は唇を噛んだ。

「頭を上げてください。私達は謝らせたかった訳ではないんです。今まで言いたい事を言わせて貰いましたが、気付いて欲しかったんです。子供の事に、もっと目を向けてあげてください。双子は常に一緒にいるので独りぼっちにはなりませんが、同じ歳の子供なんです。二人でいても大人といるような安心感はありません。もう少し目を向けて、もう少し同じ時間を過ごして貰えませんか?」
朝霧は、自分の昔を思い出しながら訴えた。

「私達の両親は離婚して、私達は別々に引き取られましたが、その後、それぞれ独りぼっちで過ごす時間が増え、親は家へ帰って来なくなり、十分な食事も取れない状態が続き、施設へ入りました。そこで後から入所してきた姉と再び、会う事が出来ました。私は食事が出来るようになった事より、独りで過ごす時間がなくなった事の方が嬉しかった。何より姉と一緒に居られる事が嬉しかったんです。」
夕霧の言葉に、父親が言葉を詰まらせた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

(完結)私の夫は死にました(全3話)

青空一夏
恋愛
夫が新しく始める事業の資金を借りに出かけた直後に行方不明となり、市井の治安が悪い裏通りで夫が乗っていた馬車が発見される。おびただしい血痕があり、盗賊に襲われたのだろうと判断された。1年後に失踪宣告がなされ死んだものと見なされたが、多数の債権者が押し寄せる。 私は莫大な借金を背負い、給料が高いガラス工房の仕事についた。それでも返し切れず夜中は定食屋で調理補助の仕事まで始める。半年後過労で倒れた私に従兄弟が手を差し伸べてくれた。 ところがある日、夫とそっくりな男を見かけてしまい・・・・・・ R15ざまぁ。因果応報。ゆるふわ設定ご都合主義です。全3話。お話しの長さに偏りがあるかもしれません。

お兄ちゃんは今日からいもうと!

沼米 さくら
ライト文芸
 大倉京介、十八歳、高卒。女子小学生始めました。  親の再婚で新しくできた妹。けれど、彼女のせいで僕は、体はそのまま、他者から「女子小学生」と認識されるようになってしまった。  トイレに行けないからおもらししちゃったり、おむつをさせられたり、友達を作ったり。  身の回りで少しずつ不可思議な出来事が巻き起こっていくなか、僕は少女に染まっていく。  果たして男に戻る日はやってくるのだろうか。  強制女児女装万歳。  毎週木曜と日曜更新です。

処理中です...