上 下
101 / 130

あなたは何者?

しおりを挟む
 聖剣が、弧を描き三日月状の光の刃が射出される。その刃は真っ直ぐとエイダに向かっていく、エイダはそれを魔法障壁で防ぐ。

「くっ!」

 たとえ魔法障壁で防いでも、衝撃波は伝わり、エイダはよろめく、体勢が崩したところをエイダはアルに狙われる。

「もらった!」

 ――まずい!

 アルはいつのまにかエイダの背後にとてつもないスピードで回り込んでおり、雷を纏った貫手を繰り出した。
 エイダは咄嗟のことで、攻撃されることを認識できるが回避が間に合わない。
 アルの貫手による一閃が、エイダの胴体を貫こうとした瞬間、アルの体は火球に飲み込まれ、吹き飛ばされていった。
 エイダが目を、火球がきた方向に向けると、アレン先生が掌をこちらに突き出していた。

「大丈夫かエイダ!」
「うん!」

 エイダはアレン先生の隣にバックステップで着地する、聖剣の一閃を放ったアイラは未だに余裕そうな笑みを浮かべている。
 エールはアイラから付かず離れずの距離を保ちいつでもアイラを守れる位置に立っていた。
 エールが守り、アイラが安全な後方から攻撃、そしてアルがトドメを刺す、隙がなく一瞬でも油断すれば、やられてしまう、そんな緊張感をアイラ達は生み出していた。
 そんな中唐突に、アレン先生がエイダに語りかける

「エイダ、なぜアイラは前回の襲撃時に、聖剣を持っていなかったと思う?」

 エイダはアイラ達に目を配りながら返した。

「さあ、わからない、もしかして何か条件があるのかな?」
「その通りじゃ、おそらくじゃが、あの聖剣、破壊剣は紛い物、何かしらの制限があるはずじゃ例えば時間とかの」

 あの、紛い物の聖剣は形を保っていられるのは時間に制限がある、そう考えれば前回の襲撃の時、聖剣を持っていなかったのも頷ける。
 あの時は、エイダの発見までにかなりの時間を要していた。

「もしそうだとしたら…」
「聖剣の形が保てなくなる瞬間、相手の戦力は激減するとみていい」

 ――正解ね、全く、年寄りの勘というやつかしら?

 アイラは心の中でそう思う。確かに模造の聖剣は威力も本物とは劣る、おまけに時間が過ぎれは大気に霧散していくという代物だ。



「エイダその瞬間を狙うぞ!」
「わかった!」

 アレン先生の言葉に応えるエイダ、それを見て、全く敵ながら、的確な作戦を練ってくるものだとアイラは感心した。

「厄介ね、全く…」

 アイラは聖剣を構え直す。

「アル!体は再生できたの?」

 アレン先生の魔法によりその体を紅蓮の炎で焼かれた、吹き飛ばされたアルが、アイラのとなりに光の翼の羽ばたきとともに舞い降りた。

「問題ない」

 アルは、まるで何事もなかったかのように再び、構えの姿勢をとる。
 先に仕掛けたのはエイダ達だった、エイダは風の魔法と火の魔法を組み合わせ、巨大な火炎を作り出した。
 火炎の旋風がアイラ達を襲う。
 しかし、エールが水晶の盾を使い、再び防いだ。火炎は水晶の盾に当たると同時に二股に分かれ、アイラ達の両隣を過ぎていく。

 防げたものの、アイラ達の目の前には炎の渦が広がり視界を防いだ、すると炎の渦の中から魔法障壁を纏った、女が飛び出してきた。
 アレン先生だ、アレン先生はまさか接近してくると思っておらず混乱しているアイラ達の懐に、まんまと入り込み、こう唱えた。

「想像の土よ!我が思いに応え、怨敵を貫け!」

 地面から岩の槍とでもいうべきか、円錐の状の岩の突起が複数、生成される。その円錐はアイラ達3人向かって伸びていった、アルは上空に避け、アイラは剣で防ぎ、エールは水晶の盾を使って凌ぐ。

「魔術師のくせに接近戦とは生意気な!」

 アルが空中に浮かび叫んだ瞬間、何者かが背後にいることを感じた。
 後ろを振り向くと、そこには黄金の両翼を広げたエイダがいた。

「ごめん…!!」

 エイダは思い切り、その両翼で、アルを殴打する。地面に落とされる瞬間アルは気づいた、火炎が途切れていることに。

 ――奇襲のタイミングをここまで綺麗に合わせてくるとは!

 アルは床に激突、床は砕け、アルは口から空気を吐き出し、そのまま意識が遠のいていった。

「アル!」

 アイラがアルの名を呼ぶ、だが、返事はない、アイラは目の前の魔女を殺すことが優先だと考え、聖剣に力を込め振り下ろした。
 閃光がアレン先生の体を包み、かき消した。

 ――やった…!

 閃光はそのまま一直線に、柱が連なる場所まで飛んでいきそこで爆発した。
 アイラは内心、歓喜する。だがアイラの視界の端に光を感じた。その方向に目を向ける。
 そこには、光でかき消したはずの魔女が立っていた。

「デルタ・レイ!」

 アイラは驚く暇はなかった、属性複合魔法が放たれる。
 エールが素早く反応し、アレン先生の魔法を水晶の盾で防ぐ。

 ――分身の魔法!

 アイラはすぐに理解した、あの時、屠った魔女は恐らく本体ではなく分身だったのだろう、考えてみれば妙な話だったのだ魔術師が接近してくるなど。
 そして何よりも聖剣を無駄撃ちに終わったのはアイラにとって、痛手だ。
 その証拠に聖剣は風に舞う砂のように、頭身が綻んだいき、消えてしまった、そう限界がきたのだ。
 エールは未だにに光線を防いでいる。空になった手を見つめてアイラは叫ぶ。

「でもまだよ!」

 アイラは背中の羽を羽ばたかせ、エールの盾の陰から出た。アイラは地面すれすれを飛行しながら地面に手をかざす、すると地面がえぐれ変形し無数の石柱となってアレン先生に向かって伸びていった。
 アレン先生は光線を出す傍ら、片手で魔法障壁を展開しその石柱を防いだ。
 だが、アイラの猛攻は止まらない、すぐさま石柱の上をなぞるようにアイラは飛行しアレン先生の頭上に行くと懐に手を伸ばし短剣を取り出した。

 ――これで!

 短剣をアレン先生に向け、突き刺そうとしたその時。

「アレン先生!」

 エイダはアレン先生が危機を陥ってると気づき無意識に、あの光の翼の羽からなる、光の剣を生成していた。
 エイダは無数に生成した光の剣を射出する。

 アイラの防御は間に合わなかった、アレン先生に意識を取られすぎていたのだ。無数の剣にアイラは貫かれ、そして腕をちぎり飛ばされた。

 悲鳴も上げられずにアイラは落下していく

「そんな!」

 代わりに悲鳴のような声をあげたのはエイダだった、エイダはおもわず、アイラを抱きかかえ地面に降りた。
 アレン先生は光線を照射するのをやめ、エイダの方を見る。エールは息を切らしながら膝をついた。アイラが死んだその絶望をみにしみて実感したのだ。

「せめて無力化できればと…」

 エイダは思わず祈った、お願い死なないでと。
 するとエイダの手が暖かく光り輝き、アイラの傷を治していった。
 アイラは朦朧とする意識の中、気づく、自分のちぎれとんだ腕も再生していることに。

「エイダ!そのものをしっかり抱えておれ!」

 アレン先生は間に近づきすぐさま、封印の魔法をアイラに施す。

「これで2対2じゃな」

 その言葉でアイラはすぐさま覚醒し起き上がるも、封印の魔法を施されたため能力が使えないことに気づく、そして体も思うように動かない。
 エイダは、唱える。

「光の鎖よ!」

 光の鎖がアイラを縛り付け動きを封じた。

「エイダ、あなた…一体何者なの!」

 悔しさ紛れかアイラはエイダに対して、強い口調で言う。エイダはなんのことかさっぱりわからない。アイラは叫び続ける。

「切断された肉体を、再生するなんて能力、神の使者の能力では確認されていない!貴方は…一体なんなの!」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~

丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。 一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。 それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。 ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。 ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。 もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは…… これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。

婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ

あげは
ファンタジー
「私は、ユミエラとの婚約を破棄する!」 学院卒業記念パーティーで、婚約者である王太子アルフリードに突然婚約破棄された、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢。 家族にも愛されていなかったユミエラは、王太子に婚約破棄されたことで利用価値がなくなったとされ家を勘当されてしまう。 しかし、ユミエラに特に気にした様子はなく、むしろ喜んでいた。 これまでの生活に嫌気が差していたユミエラは、元孤児で転生者の侍女ミシェルだけを連れ、その日のうちに家を出て人のいない森の奥に向かい、森の中でカフェを開くらしい。 「さあ、ミシェル! 念願のスローライフよ! 張り切っていきましょう!」 王都を出るとなぜか国を守護している神獣が待ち構えていた。 どうやら国を捨てユミエラについてくるらしい。 こうしてユミエラは、転生者と神獣という何とも不思議なお供を連れ、優雅なスローライフを楽しむのであった。 一方、ユミエラを追放し、神獣にも見捨てられた王国は、愚かな王太子のせいで混乱に陥るのだった――。 なろう・カクヨムにも投稿

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!

神桜
ファンタジー
小学生の子を事故から救った華倉愛里。本当は死ぬ予定じゃなかった華倉愛里を神が転生させて、愛し子にし家族や精霊、神に愛されて楽しく過ごす話! 『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!』の番外編を『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!番外編』においています!良かったら見てください! 投稿は1日おきか、毎日更新です。不規則です!宜しくお願いします!

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

令和日本では五十代、異世界では十代、この二つの人生を生きていきます。

越路遼介
ファンタジー
篠永俊樹、五十四歳は三十年以上務めた消防士を早期退職し、日本一周の旅に出た。失敗の人生を振り返っていた彼は東尋坊で不思議な老爺と出会い、歳の離れた友人となる。老爺はその後に他界するも、俊樹に手紙を残してあった。老爺は言った。『儂はセイラシアという世界で魔王で、勇者に討たれたあと魔王の記憶を持ったまま日本に転生した』と。信じがたい思いを秘めつつ俊樹は手紙にあった通り、老爺の自宅物置の扉に合言葉と同時に開けると、そこには見たこともない大草原が広がっていた。

処理中です...