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俺たちには敵わない

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「貴様ぁ!」

 銀髪の男は叫ぶ。切り落とされた腕を抑えながら、しかし男は焦ることなく翼を光せると、切られた腕はたちまち浮かび上がり切断面へとくっついた。

「お前も治るのかよ…しかしまぁ大したもんだなこの静かな世界は。」

「なぜ入って来られる?」

 この静止した世界に入ってきた男、ドンキホーテを見据えながら、銀髪の男は構えを取る。

「んだよ?ノックでもしてから入ればよかったか?」

 ドンキホーテが言う。雲が流れ始める。どうやら静止が解けたようだ。エイダはよろめきながら立ち上がる。

「エイダ聞こえてるなら、聞いてくれ、こいつは俺たちが倒す。」

 エイダは反応を示さない、しかし意味はわかったのか、黄金の光の翼は散り、消えていく。それと同時にエイダは崩れ落ちる。

「俺たちだと?」

「そうだぜ、テメェ誰と戦ってると思ってる?」

 銀髪の男の足元に光が走る、光は複雑に変形し瞬く間に変形する、銀髪の男が静止の能力を使う間を与えることなく、その光は男を捉える檻と化した。

「結界、爆破」

 誰かの言葉が響く、ドンキホーテは瞬時にエイダのそばにテレポートし、再びエイダとともにテレポートする。二人が飛び去ったあと、光の檻は大爆発を起こした。

「思ったんじゃがのう、超高速で動くなら、こうして動きを封じてからダメージを与えればよかったんじゃな。お主の能力連続では使えんようじゃしのう。」

 声の主は見知らぬ女性だった。鮮やかな長い髪に白を基調に黒の色が入ったローブ、高い身長、年齢は非常に若く見えた。ドンキホーテはその女の近くにテレポートで飛んでくる。

「ナイスだぜ、アレン先生」

「久しぶりに本気でいかなければならない相手のようじゃのう。変身する暇を与えてくれてありがとうなドンキホーテ。」

 そうこの女性こそアレン先生の人間の姿なのだ。

「アレン先生、その姿で居られるのはどれくらいだ?」

「長くはないが短くはない、体の調子に左右されるといった感じじゃの。」

「そうかい、じゃあ、あの爆発で気でも失ってくれればいいんだが」

 そうドンキホーテは言うと、ちょうど爆煙は晴れ、中から体の半分を火傷し銀髪の男が出てきた。しかしその傷も治っていく。

「はぁー!やっぱダメか!」

 ドンキホーテはめんどくさそうに愚痴をこぼした。そして剣を抜きはなち、銀髪の男に襲いかかる。アレン先生は後ろで魔法の詠唱を始めた。

「チッ!」

 銀髪の男は忌々しそうに舌打ちし、赤い羽根を再び光らされる。雲は止まり風は泣き止む。以前ならばこの世界で呼吸の音は1つだけだったが今は違う。男にとって完成された静寂の世界は今壊されようとしていた。

「オラァァァァァァ!」

 ドンキホーテの手によって。

「やはりこの世界に入ってくるか!!」

 再びこの静止の力を駆使しても、やはりこの男は入ってくる。
 その男、ドンキホーテの剣は銀髪の男の腹に向かい一閃、横一文字に切り裂いた、切り裂いた際の衝撃で銀髪の男は吹き飛ばされ遺跡の壁に激突する。

「があ!」

 壁に変化は起こらないが、静止した世界でなければ壁は粉々に砕けていただろう。

「そうか貴様…!」

 銀髪の男が気づく。

「まさか特異点か…!」

 ドンキホーテはため息をついた。

「そうだぜー。俺のアビリティは変化しない「不変」だ「特異点」もいい呼び名だな。お前さんがいくら時を止めようと俺が「不変」の力を使えば、俺はお前の能力をはねのけることができる。」

 ドンキホーテは傷を再生をしている男に近づきながら話す。男はおそらく衝撃で内臓などにもかなりのダメージが入っているのだろう、まだ傷が治りきっていないようだ。

「なぁ俺がなんで能力を明かしたかわかるか?お前さんと俺たちじゃ勝負になんねぇっていってんだ。降参しな。命まではとらねぇからよ。」

 銀髪の男は笑う。高らかに、笑う。馬鹿馬鹿しいと、何を言うのかとでも、言いたげに笑う。

「断る…!」

 男は口の中で溜まっていた血を吐き出した。それはドンキホーテの提案に対する。否定の意味と、ドンキホーテの目を潰す目的を持って吐き出された血だった。
 雲は再び流れ出す。しかし構うものか。静止された時間でなくとも今ドンキホーテの目は潰されている。銀髪の男は瞬時にドンキホーテの後ろに回り手刀を繰り出す。首に手刀が叩き込まれる。その瞬間だった。

「デルタ・レイ」

 そう誰かの声が聞こえたその時、白銀の閃光が男の体を包み込んだ。光はそのまま男を流し、ドンキホーテの右の方向に、男を連れて着弾する。巨大な爆発と轟音が響き渡った。遺跡にクレーターができるほどの威力だ。

「相変わらず、先生のデルタ・レイはやべえ威力だな。」

「全く、世話のかかるやつじゃの!」

 先ほどの白銀の光線を放った、アレン先生は腰を近く垣のようになっている遺跡の物に腰を下ろした。
 ドンキホーテを血に濡れた目を拭きながら光が着弾した箇所に顔を向ける。

「いったじゃねぇかよ、俺たちにはかなわねぇって。」
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