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再出発

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  「では改めて、この2人を交えてもう…一度確認しますね。」

   エイダを診ていた、まだ若い女医のエリーは説明をし直す。

「エイダさん貴方は心臓を刺されたの、覚えてらっしゃる?」

「は、はい。」

「記憶の連続性を確認と…では今の段階で気分の悪いところはあるかしら。」

「無いです。」

  エリーは手元にあるメモ帳の様なものに、エイダの状況を書き込んでいく。全て書き終えた後。エリーはドンキホーテの方へ向き直ると。

「ねぇ、この子本当に心臓を貫かれたの?何から何まで健康そのものよ。」

「ああ、不思議だよな。」

「不思議なんてものじゃ無いわ、かなりの出血もしてるはずなのにたった1日でここまですぐに回復してるなんて。」

「あの…」

  エイダは気まずそうにエリーに声をかけた。

  「私の怪我って誰が直してくれたんですか?」

 それを聞くとエリーは、エイダを見て納得した様に「自覚無しね」と呟く。そして話を続けた。

「エイダさんよく聞いて。私は黒い羊の一員です。それ故にドンキホーテから一部始終は聞いています。貴方の特性のことも。」

「私の特性?」

 エリーは一呼吸起きこう言った。

「貴方は不老不死の可能性があります。エイダ・マカロさん。」

 エイダはその言葉の意味を理解するのに時間がかかった。不老不死、死を超えたもの、死なないものそれが自分だというのか。あまりに夢のような話だ。エイダはそう感じた。

「詳しくはドンキホーテの方がわかるでしょうね。」

  エリーはそうドンキホーテに促す。すると「わかった」と彼はエイダに自分の見たことを包み隠さず教えた。心臓の傷のこと、それが瞬く間に塞がったこと。そして何よりそうなることを、敵が知っていたことを。
  エイダはただ黙って聞いていた。ただその情報を飲み込むだけの時間が欲しかったのだ。やがてエイダは1つのことを思い出す。

「そういえば、また男の子に会いました。夢で、3回目だねって。」

  アレン先生は「そうか!」と肉球を叩く。

「ずっと不思議でだったんじゃ。不死のエネルギーは一体どこから来るのかと。つまり再生するためのエネルギーはどこから発生してるのかとな!見たところ、魔力を消費してるようには見えん、エイダはいま疲れておるか?」

「ううん、全然。大丈夫。」

「やはりそうじゃ、例の少年からエネルギーをもらっておるようじゃな。」

  アレン先生はそう納得した。
  エリーも頷く。

「私もさっき少し触診をさせてもらったけど。異常なんかは無かったわ。アレン先生の説が有力なようね。」

 ドンキホーテは遅れて言う。

  「つまり、不死自体もエイダの神の使者の力ってことでいいのか?」

「そう言うことになるの」

  「じゃあ男の子の力が尽きちゃったら、私どうなるのかな?」

 エイダはそう疑問を投げかけた。エリーはアレン先生の方を向き「どうなの先生」と聞く。この手の質問は魔法などに詳しいアレン先生がうってつけだ。

「そうじゃの。その少年は聞く限り神の一種の様じゃし、半永久的なエネルギーを、持っておるのではないかの?じゃから尽きると言うことはないじゃろう。仮に尽きてしまっても、加護が消えるだけとワシは見ておる。死にはせんじゃろう。なにぶん神の使者は最近になって出てきた概念じゃからのう。ワシもドンキホーテの娯楽小説の、話を聞くまで知らんかったからこれくらいのことしか言えんな。」

  「そっか、考えてくれてありがとう先生。」

  エイダは考える。神の使者の力は結局は誰も詳しいことはわからない、だからこそ知りたいと。この神の使者の力は自分の出生の秘密に直に関わってくる様な。そんな気がエイダにはしていた。
  「さてと」とエリーは呟いた。

「エイダさんも起きたところだしご飯にしましょうか!」


  美味しい、食欲がなかったのにいざ食べてみるとスプーンが進んでしまう。ここの病院食が美味しいせいもあるだろう。エイダはあっという間に用意された食事を食べてしまった。ベットの上での食事というのもなかなか珍しく新鮮な体験だった。

「美味しかった?」

 エリーが顔を綻ばせ尋ねる。とても優しい表情だ。いつもこのように患者のことを気にかけて対応しているのだろう。

「はい!」

  エイダは直ぐにそう答える。実際に料理は美味であったためお世辞などではなかった。「よかった」とエリーは言うと、持っていた籠から畳まれた服を出した。

「これ貴方の冒険用の服、使用人に縫ってもらったわ。」

「わぁ、ありがとうございます。」

 エイダの服は敗れたところ完全に直され、購入時の時と遜色ない状態になっていた。
  
「そういえば確認していなかったわね。」
  
  エリーは再びエイダに尋ねる。

「貴方、立てて?1人で着替えはできる?」

「大丈夫です!」

 エイダは、ベットからすぐに起き上がり、自分の健康さをアピールする。

「それぐらいなら大丈夫そうね。退院しても平気そう!貴方多分、うちの病院で今まで、1番早い退院だわ。」

  エリーが冗談言うと、思わずエイダも顔を綻ばせた。そしてエリーは話を続ける。

「ドンキホーテが話があるそうよ。準備ができたら行ってあげて?あの人、案外心配性だから。」

  ドンキホーテの居場所を教えてもらうとエイダはエリーに今までの礼を言い。彼のいる客室へと向かう。
  客室のドアをノックすると「エリーか?」と言う声とともにドンキホーテごドアの隙間から顔を出した。
  するとドンキホーテはエイダの顔を見るなり目を皿のように大きくし、

「エイダ!立って大丈夫なのか!?」

 と驚いた。エイダは頷く。

「うん、もう大丈夫。退院してもいいって言われたよ。」

  そう言った。「そうなのか。」ドンキホーテはそう呟くとエイダを部屋の中に入れた。

「アレン先生思ったより早く行けそうだ。」

「何?もうまったりとできないのか?」

「ああ、エイダが今日中に退院することになったようだぜ。」

「そうかではもう行くかの。」

  アレン先生は伸びをすると起き上がる。

「心配かけて、ごめんなさい。」

  エイダはそう言って謝った。

「何を言うのじゃ!エイダが元気そうでワシら心底嬉しぞー、生徒が元気なのことは先生にとって嬉しいことじゃからな。」

「俺も同じ気持ちだぜ。先生の生徒仲間としてな。」

  「さてと」とドンキホーテは話しを続ける。

「エイダが寝ている間な、ボスから連絡があった。俺たちの乗った観光用飛空挺がぶち壊れたのを報告したところ。予定を変更するそうでな。」

  ドンキホーテは地図を広げた。

「ここの遺跡、カルエ遺跡で落ち合うらしい。」
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