26 / 31
出会い編!
終わり
しおりを挟む
「レーデンス!」
ドンキホーテはそう叫んだ。
「待たせたな、ドンキホーテ」
レーデンスは、そう言って剣をデイル博士に向かって構える。
「クッ!」
デイル博士はよろめき、腰をつく、そしてレーデンスを睨みつけるその眼差しはまるで裏切り者を見るようなものだった。
親に理解されなかった、子供のようなそんな雰囲気を纏いながら博士は叫ぶ!
「何故だ!」
その言葉尻に、なぜわかってくれない、と付きそうな語調でデイル博士は続ける。
「彼は人間だ!」
「ええ、人間です、博士」
「裏切るぞ、必ず! 断言する! 君は後悔する!」
博士は、訴え続けた、人の醜さを人の非道さを、それはオークであるレーデンスは痛いほどわかっていた、しかしそれでもいい続ける。
「博士、私は人間を信じようと思います」
「何故だ……! 君と私は同じはずだ!」
「私は、英雄に憧れを抱いています、何故か、その理由を思い出したのです」
「なに……?」
レーデンスは思い出す、かつてレーデンスがオークの国ゲルガンドにいた時の話だ、レーデンスは幼い頃、一人、森の中に迷ったことがあると言う。
理由は、病気の母のために薬草を取りに行こうとしたためだ。母のために兄弟の反対を振り切って、一人で行ったレーデンスは森の中で、しかし魔物と出会ってしまう。
それは巨大なオークをも丸呑みにする四作歩行にクモのような複眼をもつ危険な魔物だ。
絶体絶命のその時、一閃、光がレーデンスの目の前を通り過ぎた。
魔物の頭は胴体と別れを告げる。
そしてレーデンスは光が通り過ぎた方向を見るとそこにいたのは、人間だった。青いマントを纏い、白い鎧を着こなすその人は、幼いレーデンスには英雄に映った。
そうレーデンスは人に助けられたのだ、幼いレーデンスを助けたその人はなんと薬草を探す手伝いまでも名乗り出た。
その人の優しさはレーデンスが普段、オーク達から聞かされている人間のイメージとはかけ離れていた。
人間とは嘘をつき、ほかの種族を騙す狡猾な化け物だと教えられてきたレーデンスにとってこの初めて会う人間はまるで逆の存在に見えた。
英雄、その言葉にふさわしい人
幼いレーデンスはそう強く思った。その人をオークのみんなに紹介したいと彼は強く思ったが、その人は断った。
「私達、人間はオークに嫌われているからね」
この一言が、今のレーデンスを形作ったと言っても過言ではない。
この時レーデンスは思ったいつかこの人のことを招き入れることができる、オークの世界を作ろうと。
そしてその人は結局レーデンスに名を告げることもなく、去っていってしまう。
――そうだ、あの人やドンキホーテがいたからこそ私は、レーデンスで居られるのだ
「私は、かつて人間に助けられ、英雄を目指しました英雄リメリルのように人とオークをつなぐ架け橋になれればと、そう決意をしていました」
「ですが」と、レーデンスは続けた。
「貴方の言う通り、オーク差別は根深い、オークと人間の戦いは遥か昔に終わったというのに今でも、オークを恐れる人はいる、それは確かです。
そして実際にそのせいで私は、様々な差別を受けてきました、そしてその差別のせいで私は夢を忘れかけていた」
「ならば……!」
デイル博士は手を差し伸べるように言葉を紡ごうとしたが、「でも」とレーデンスに遮られる。
「その夢を思い出させてくれたのも、ここにいる人間のドンキホーテです。人間は醜いものだけがいるわけではない、貴方も本当はわかっているはずだ、貴方の母君だって人間だったでしょう。善良な心は当たり前のようにあるのです人間にも」
デイル博士は黙ってしまう。そしてフッと消え入りそうな顔で笑った。そして何か憑き物が落ちたように宣言した。
「私の……負けです、どの道、私はもう逃げられない」
デイル博士は、紫色の石をレーデンスに渡す。
「命令してくださいその石に向かって、攻撃をやめろと、そうすればリヴァイアサンは止まります」
「もう、いいのですか……?」
レーデンスの言葉にデイル博士は再び笑った。
「貴方と同じです、思い出したんですよ……世界はクソです、しかし同時に世界は母のような素晴らしい人も生み出す。
そのことを……思い出しただけです」
レーデンスはその言葉を聴くとこれで全てが終わったのだと実感した。そして紫色の石に語りかける。
「リヴァイアサン、戦いをやめろ、お前も誰も傷つけることなく平和に暮らせ」
王都エポロ、謎の大蛇に襲われる、その大蛇は夕日とともにエポロに襲いかかろうと迫り、第13騎士団がそれを防いだ。
長く続くかと思われたその攻防は、月が出る頃、突如として止んだ。幸いにも王都被害はなかった。
大蛇は姿を唐突に騎士団と王都エポロに背を向け土魔法と思われる魔法でで穴を掘り消えていったのだ。その後しばらくして二人の冒険者が事件の首謀者と名乗っている考古学者を連れてきた。
その考古学者は全てを話し罪を受け入れると述べ、騎士団に連行されていった。その時、二人の冒険者のうち一人の少年が犯人に対してこう言ったという。
「博士! なんであんたが人を憎んでいるのか俺には分からなかった! でもよ! いつかアンタに認められるような人間に俺はなるぜ!
人間っていい奴なんだなって思えるような人間に! ……英雄に!」
その言葉を聞くと博士と呼ばれた考古学者は、笑みを浮かべこう返した。
「ええ、是非なってください、ただ、一つだけ、貴方のその優しさがいつか貴方自身を苦しめないよう、私は祈っています」
そうして犯人である、考古学者は牢に入れられ、その数日後にギロチンにかけられた。
ドンキホーテはそう叫んだ。
「待たせたな、ドンキホーテ」
レーデンスは、そう言って剣をデイル博士に向かって構える。
「クッ!」
デイル博士はよろめき、腰をつく、そしてレーデンスを睨みつけるその眼差しはまるで裏切り者を見るようなものだった。
親に理解されなかった、子供のようなそんな雰囲気を纏いながら博士は叫ぶ!
「何故だ!」
その言葉尻に、なぜわかってくれない、と付きそうな語調でデイル博士は続ける。
「彼は人間だ!」
「ええ、人間です、博士」
「裏切るぞ、必ず! 断言する! 君は後悔する!」
博士は、訴え続けた、人の醜さを人の非道さを、それはオークであるレーデンスは痛いほどわかっていた、しかしそれでもいい続ける。
「博士、私は人間を信じようと思います」
「何故だ……! 君と私は同じはずだ!」
「私は、英雄に憧れを抱いています、何故か、その理由を思い出したのです」
「なに……?」
レーデンスは思い出す、かつてレーデンスがオークの国ゲルガンドにいた時の話だ、レーデンスは幼い頃、一人、森の中に迷ったことがあると言う。
理由は、病気の母のために薬草を取りに行こうとしたためだ。母のために兄弟の反対を振り切って、一人で行ったレーデンスは森の中で、しかし魔物と出会ってしまう。
それは巨大なオークをも丸呑みにする四作歩行にクモのような複眼をもつ危険な魔物だ。
絶体絶命のその時、一閃、光がレーデンスの目の前を通り過ぎた。
魔物の頭は胴体と別れを告げる。
そしてレーデンスは光が通り過ぎた方向を見るとそこにいたのは、人間だった。青いマントを纏い、白い鎧を着こなすその人は、幼いレーデンスには英雄に映った。
そうレーデンスは人に助けられたのだ、幼いレーデンスを助けたその人はなんと薬草を探す手伝いまでも名乗り出た。
その人の優しさはレーデンスが普段、オーク達から聞かされている人間のイメージとはかけ離れていた。
人間とは嘘をつき、ほかの種族を騙す狡猾な化け物だと教えられてきたレーデンスにとってこの初めて会う人間はまるで逆の存在に見えた。
英雄、その言葉にふさわしい人
幼いレーデンスはそう強く思った。その人をオークのみんなに紹介したいと彼は強く思ったが、その人は断った。
「私達、人間はオークに嫌われているからね」
この一言が、今のレーデンスを形作ったと言っても過言ではない。
この時レーデンスは思ったいつかこの人のことを招き入れることができる、オークの世界を作ろうと。
そしてその人は結局レーデンスに名を告げることもなく、去っていってしまう。
――そうだ、あの人やドンキホーテがいたからこそ私は、レーデンスで居られるのだ
「私は、かつて人間に助けられ、英雄を目指しました英雄リメリルのように人とオークをつなぐ架け橋になれればと、そう決意をしていました」
「ですが」と、レーデンスは続けた。
「貴方の言う通り、オーク差別は根深い、オークと人間の戦いは遥か昔に終わったというのに今でも、オークを恐れる人はいる、それは確かです。
そして実際にそのせいで私は、様々な差別を受けてきました、そしてその差別のせいで私は夢を忘れかけていた」
「ならば……!」
デイル博士は手を差し伸べるように言葉を紡ごうとしたが、「でも」とレーデンスに遮られる。
「その夢を思い出させてくれたのも、ここにいる人間のドンキホーテです。人間は醜いものだけがいるわけではない、貴方も本当はわかっているはずだ、貴方の母君だって人間だったでしょう。善良な心は当たり前のようにあるのです人間にも」
デイル博士は黙ってしまう。そしてフッと消え入りそうな顔で笑った。そして何か憑き物が落ちたように宣言した。
「私の……負けです、どの道、私はもう逃げられない」
デイル博士は、紫色の石をレーデンスに渡す。
「命令してくださいその石に向かって、攻撃をやめろと、そうすればリヴァイアサンは止まります」
「もう、いいのですか……?」
レーデンスの言葉にデイル博士は再び笑った。
「貴方と同じです、思い出したんですよ……世界はクソです、しかし同時に世界は母のような素晴らしい人も生み出す。
そのことを……思い出しただけです」
レーデンスはその言葉を聴くとこれで全てが終わったのだと実感した。そして紫色の石に語りかける。
「リヴァイアサン、戦いをやめろ、お前も誰も傷つけることなく平和に暮らせ」
王都エポロ、謎の大蛇に襲われる、その大蛇は夕日とともにエポロに襲いかかろうと迫り、第13騎士団がそれを防いだ。
長く続くかと思われたその攻防は、月が出る頃、突如として止んだ。幸いにも王都被害はなかった。
大蛇は姿を唐突に騎士団と王都エポロに背を向け土魔法と思われる魔法でで穴を掘り消えていったのだ。その後しばらくして二人の冒険者が事件の首謀者と名乗っている考古学者を連れてきた。
その考古学者は全てを話し罪を受け入れると述べ、騎士団に連行されていった。その時、二人の冒険者のうち一人の少年が犯人に対してこう言ったという。
「博士! なんであんたが人を憎んでいるのか俺には分からなかった! でもよ! いつかアンタに認められるような人間に俺はなるぜ!
人間っていい奴なんだなって思えるような人間に! ……英雄に!」
その言葉を聞くと博士と呼ばれた考古学者は、笑みを浮かべこう返した。
「ええ、是非なってください、ただ、一つだけ、貴方のその優しさがいつか貴方自身を苦しめないよう、私は祈っています」
そうして犯人である、考古学者は牢に入れられ、その数日後にギロチンにかけられた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
機龍世紀3rdC:暗黒時代~黒髪の騎狼猟兵
武無由乃
ファンタジー
家の神社の裏にある禁足地に勝手に踏み込んでしまった小学生アストは、女子高生の姉カナデと共に異世界サイクレストへと飛ばされる。その世界にある三つの大陸のうちの一つソーディアン大陸で目覚めたアスト達は、突如謎の騎士の襲撃を受ける。その襲撃から命からがら逃げだしたアスト達だったが、その逃避行の間に姉カナデとはぐれ、ただ一人黒の部族と呼ばれる人々に助けられる。
そして……。
それから八年の後、逞しい戦士に成長したアストは、姉を探し出すためにソーディアン大陸を巡る旅に出る。
共に育った黒の部族の妹リディアと共に……。
神が食い殺された大陸を巡る、異邦人アストによる冒険物語。
※ 本作品は、本編が『Chapter 〇』と『World Building 〇』というページによって構成されています。『World Building 〇』は世界設定を解説しているだけですので、もしストーリーだけ楽しみたい方は『World Building 〇』のページを飛ばして読んでください(ただし『World Building 0 ソーディアン大陸』は読んでいること前提でストーリーが進みます)。
※ 『同時掲載』小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、ノベルアッププラス、ノベリズム、ノベルバ、Nolaノベル
※ 一部の投稿サイトには世界・地方地図が掲載されています。
クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。
異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。
そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。
異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。
龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。
現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
最悪から始まった新たな生活。運命は時に悪戯をするようだ。
久遠 れんり
ファンタジー
男主人公。
勤務中体調が悪くなり、家へと帰る。
すると同棲相手の彼女は、知らない男達と。
全員追い出した後、頭痛はひどくなり意識を失うように眠りに落ちる。
目を覚ますとそこは、異世界のような現実が始まっていた。
そこから始まる出会いと、変わっていく人々の生活。
そんな、よくある話。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。
夢草 蝶
恋愛
侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。
そのため、当然婚約者もいない。
なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。
差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。
すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる