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想いが通じ合ってから*

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 自己紹介と挨拶を終えた僕たちは、颯真さんの「早く二人きりになりたいんじゃないの?」という言葉に二人して顔を赤くさせて「ピュア」と感激された。

「史弥さん、大変申し上げにくいんだけど」

「何か?」

「たまにでいいから聡真くんにこっちへ来てもらいたいんです。見ての通り娘が懐いておりまして」

「そのようですね。聡真もここが気に入ったようなので、話し合おうと思っているところでして」

「そうですか。分かりました」

 圭悟さんの帰りを待っていたら遅くなるよと言われて、お世話になった河村家を後にした。帰路の道中、史弥さんはずっと僕の手を繋いでくれていた。少し照れくさかったけど嬉しかった。

「あれ、どこに行くの?」

 家とは違う線に乗り換えようとする史弥さんに疑問を投げかけると「あそこには帰りにくいだろう?」と言われた。確かに帰りにくい。

「俺の家に行こうと思っているんだけど」

「史弥さんの?」

「もう1つ借りてるところ」

「そうなんだね」

 知らない駅で降りて、人混みを避けながら歩いていくと、10階建てくらいのマンションの前で立ち止まり中へ入った。

「ここ、俺の親が所有してるマンションなんだよ」

「へー、そうだったんだ」

 エレベーターで最上階へと向かう。

「どうぞ、入って」

「お邪魔します」

「聡真の家でもあるから」

「そっか。うわ」

 靴を脱いで上がるとギュッと抱きしめられた。鼓動が高鳴っていく。

「よかった」

「史弥さん?」

「どこにも行かないでほしい」

「うん、分かってる」

 顔を上げると優しく口づけられた。啄むようなものだったのが、舌を絡める激しいキスに変わって、彼の手が僕の体をなぞり始めた。

「待って……シャワー」

「無理だよ、もう待てない」

 情欲に染まる彼の瞳に見つめられて、僕の感情も昂っていく。そのまま寝室へ連れて行かれて、ベッドの上に上がりながら服を脱いでいった。

「史弥さん」

「ん?」

「嫌じゃない?僕とするの」

「嫌なわけないだろ?もうこんなになってる」

 僕の手を取って彼の股間に触れさせた。彼のものが硬くなっているのが分かる。

「でも……」

「嫌じゃないよ。ごめん、聡真は嫌だった?怖い?」

 嫌じゃない。史弥さんに触れてほしい。でも、本当に嫌じゃないのか不安になる。

「聡真を抱きたい。いい?」

 真っ直ぐに僕の目を見つめながらそう問いかけられて頷いた。初めてじゃないのにとても緊張する。深い口づけを交わしながらゆっくりと体に触れる彼の手の熱を感じる。唇を離した彼は、そのまま首筋に舌を這わせて、全身に隈なく口づけを落とした。どこに触れられても気持ちよくて、何度も吐息を漏らす。敏感な乳首に触れられて、軽くイッてしまった。

「んんっ……」

「聡真、声聞かせて。このフロアには誰もいないから大丈夫だよ」

「あぁ……んぅ……っ」

「我慢しなくていいって言ってるのに……」

「恥ずかしい……」

「そっか」

 ローションを指にまとわせて、ゆっくりと中に差し入れられた。

「あっっ、まって」

「恥ずかしいとか思う余裕なくなるくらいイかせてあげる」

「ああっ、ダメ……やだ」

 何度も僕の体を抱いてきた彼は、僕がどうすれば感じるのか全部知ってる。そして、その快感から逃れるすべはなくて、大きな波が僕を襲う。

「ああぁっ……っ!」

 盛大に達しても、彼はずっと楽しそうに僕を責め続けた。だんだんと指じゃ物足りなくなってきたのに、彼は挿れてくれない。僕が強請るまでずっと焦らすのだ。

「史弥……さ……挿れて」

「いいよ」

 体が打ち震え、自分で足を開いてもう一度「挿れて?」と強請る。彼のものが当たった。

「かわいいね、聡真は。とてもかわくて、こんなにも愛しいと思う存在は他にないよ」

「ふあっ……」

「愛してる」

 愛の言葉を囁きながら彼が入ってきた。全身の細胞が泡立つ。ゆっくりとした律動に合わせるように腰を動かす。グチュグチュと鳴る卑猥な音に興奮が募っていく。途中でゴムを付け替えた彼に、何度も体位を変えながらイかされて、ようやく彼が僕の中で果てた。彼は行為の最中に僕の名前を呼んでたくさん愛を囁いてくれた。それがすごく嬉しくて幸福感でいっぱいになった。

「史弥さんって」

「何?」

 僕を包み込むように抱きしめる彼に「いっぱい愛してるって言ってくれるんだね」と言ってみた。

「ごめん、嫌だった?」

「すごく嬉しかった」

「もう隠さなくてもいいんだって思ったら伝えたくなって。両思いだって分かってから初めてだったからとても浮かれてる」

「これからも言ってほしい。愛されてるって実感できてすごく幸せだから」

「うん、何回でも言うから。ウザがられても言うから」

「ウザいなんて思うわけないよ。大好きだもん」

「かわいすぎ」

 こんなにも満たされたこと、今までなかった気がする。

「聡真」

「ん?」

「もうちょっと頑張れる?」

「ちょっとなら」

「ありがとう」

 ちょっと……で終わるはずなんてなく、最後は疲れ果てて気絶するように意識を失った。
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