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暴走する想い*

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 最近彼は忙しくて帰りが遅い。一緒にご飯を食べることもできないし、僕が寝落ちして会えないなんてこともある。

 仕事を終えて、今日の夕飯はどうしようかと考えているとインターホンが鳴った。画面を見ると由弥くんが映っていた。解錠して、しばらくするとまたインターホンが鳴り、扉を開けて出迎える。

「珍しいね。どうしたの?」

「会いたくなって」

「そうなんだ?入って」

「お邪魔します」

 史弥さんは今日も遅いし、鉢合わせることはないかな。

「夜ご飯何にしようか考えていたとこなんだ」

「カップラーメン?」

「違うよー。作ろうとしていたの」

「作る?」

「うん、軽くだけど。史弥さんが作ってくれるから、僕もやってみようと思ってさ、勉強中なんだ」

「聡くんが作ったもの、兄貴は食べたことあるの?」

「うん、あるよ。毎回うまく出来てるかドキドキしちゃうんだけど、史弥さん優しいからいつも褒めてくれるんだよね」

「そう」

「最近忙しいみたいで帰りが遅いから一緒に食べられないんだけどね」

「俺が作ってたら、聡くん作ってくれてた?」

「どうしたの?」

「本当に好きなんだね、兄貴のこと」

「えっ、まぁ……好き」

 自分で言っておいて恥ずかしくなってしまった。

「なんで?」

「え?」
 
「前までそんなんじゃなかったのに」

「由弥くん?」

 近づいて来た彼に両腕を掴まれた。射抜くような鋭い視線。怖い……。振りほどこうともがく僕をあざ笑うかのようにさらに力をこめられた。

「痛いよ、由弥くん。離して」

「嫌だよ」

「由弥くん?」 

「渡したくない。兄貴には」

「何言ってるの?」

 突然彼の顔が近づいてあっという間に唇を塞がれた。抵抗しても離してもらえなくて、ほんの僅かに開いた唇の隙間から舌を割り入れられて絡め取られた。どうして、こんな事?ようやく離された彼の瞳は僕を食べようとするかのようにギラギラとしていて、恐怖で足が竦む。腕を掴んでいた力が緩んだかと思うと、そのまま後ろに押されて倒れ込んでしまった。

「痛っ……」

「ごめんね。優しくするから」

「は?」

 彼が僕の上に覆いかぶさるような姿勢をとった。

「待って、冗談だよね?」

「そんなわけないじゃん」

「やだ、離して」

「離すわけないでしょ?今からするんだから」

「嘘でしょ?」

「ずーっとこうしたかった」

「やめてよ」

「やめない。優しくしてあげたいから抵抗しないで?」

 そう言う彼の手が僕の服の中に侵入してきて、乳首を弄り始めた。由弥くんのもの硬くなってる。このままじゃダメだ。

「由弥くん、お願い。こんな事しないで」

「だから、やめないって」

「由弥くん」

「このまま突っ込まれたいの?」

 声の低さにゾッとする。逃げなきゃいけないと頭ではそう思うのに金縛りにあったかのように体が動かない。そんな僕の態度に気を良くした彼はズボンに手をかけて、パンツ毎引きずり下ろした。

「好きだよ、聡くん。誰よりも君のことが好きだ」

 僕のことが好き?

「由弥くんの好きな人って……」

「聡くん、君だよ」

「ごめ……ぼく……」

「いいよ、もう。これから僕のものになればいいから」

「や……やめて」

 お尻の穴にグッと指を挿れられて、ゆっくりと刺激し始めた。

「すんなり入った……。どういう事?一人でしてた?」

「ヤダ……やめて」

「まさか兄貴とやってんの?」

「……」

 言葉に詰まって目を伏せた。

「へぇ、そうなんだ。やる事はやってるんだね」

「あぁっ……やめてよ」

「残酷だね。兄貴も」

「僕がお願いしたから……。史弥さんのこと……悪く言わないで」

「あはは、健気だね。愛されてないのにさ」

「分かってるよ、そんな事……あぁッ」

 感じたくないのに、反応してしまう自分の体が心底嫌になる。グチュグチュと抜き差しされるたびに中が疼き出す。嫌だ、嫌だ。史弥さん以外の人としたくない。必死に体を動かして抵抗しようと藻掻くのに、全く抜け出す事ができない。

「かわいそうな聡くん」

 涙が零れ落ちた。それでも、彼の動きは止まらない。寧ろ興奮しているように感じる。指を抜かれて、すかさず彼のものが入ってきた。徐ろに彼がスマホを掲げた。

「ヤダ……ヤダ……やめて……うぁっ……ああっ」

「体は正反対の反応してるよ?すっごい締め付けてきて、最高に気持ちいいんだけど」

 ガンガン突き動かされて泣きながら矯声を上げた。嫌だと思うのに、快感を拾って腰が動く。

「やめてやめてって言いながら感じてる聡くん、超可愛い。あれ、今イッた?また締まった。好きだよ、大好き」

 甘い言葉を囁かれて脳が痺れる。ずっと史弥さんに言ってほしかった言葉。永遠に聞くことができない言葉。涙が溢れて止まらない。激しく腰を打ち付けられて、由弥くんがイったのが分かった。もう、史弥さんには抱いてもらえない。

「聡くん可愛かったな。よく撮れてる」

 スマホを見る由弥くんに血の気が引く。

「消して!」

「嫌だよ。兄貴にこれ送られたくなかったら、言う事聞いてね?」

「お願い、消して」

「言う事を聞いてくれたらね?」

「どうしたらいい?」

「簡単だよ。また抱かせてくれたらいいだけ」

「そんな……」

「大好きな聡くんを抱きたいって思うのは当然でしょう?」

「おかしいよ、由弥くん」

「聡くんがそうさせてるんだよ?これからも、よろしくね?聡くん」

 にっこり微笑む彼が悪魔のように見えた。友達のような存在だと心の底から思っていたのに。

「じゃあ、今日は帰るね。兄貴に会いたくないし」

 服を整えて立ち上がった彼は「また明日」と言い残して出ていった。震える体を抱きしめて、このままではいけないと床をきれいに拭いた。そのままシャワーを浴びて、何度も体を洗った。それでも彼に付けられた跡が残った体は元に戻らなくて、また泣いてしまった。泣きながら布団に潜り込んで、眠気がやってくるのをひたすら待った。

「ただいま」

 玄関の扉が開いて、史弥さんの声が聞こえた。その声を聞いてまた涙が出てきた。もう二度と彼に触れてもらえない。こんな自分を彼に見せることはできない。どうしてこんな事になってしまったんだろう。泣いていてもどうしようもないと分かっているのに、溢れ出す涙を止めることができなかった。
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