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第18稿

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「もちろんですよ。だけど。インストロメンタルでもない限り、ボーカルは絶対必要ですし、世界的ロックバンドでボーカル抜きってありえないし、偉大なボーカリストがいて偉大なギタリストが並び立つんですよ。だからこそお願いします。俺の横で歌って下さいよ。俺、あなたの声に惚れました。一緒に偉大な男になりましょう」
彼はTV番組の告白タイムみたいに右手を俺の前に差し出し、頭を下げた。
「ごめんなさい」
俺は告白タイムで、申し訳なさそうにしながらもドライに男を袖にする女の子のように、冷静で静かな口調でそう言った。
彼は顔を上げ、
「マジか?もったいないよ。大事な物だって引き出しや押入れにしまって置くだけじゃ、ただの物体に過ぎない。それをいかに使うかが重要であって。言えばさ、要は使ってナンボで、そこに価値がある。その価値をあんたは持ってんだよ。何でなん、何でここで止めるんだよ。もったいねえよ、そんなの……」
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