俺、バンドは続けるっしょ。

日向の翼

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第6稿

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サトシは俺の肩に手を置いて、小さな声で“お前と会えて良かった”と言ってその場を去って行った。もう二度とあいつと会えない気がした。サトシ……。誰だって生きて行くのは簡単なことじゃない。特に大人になってからは尚更だ。見えない敵がウヨウヨいるから。魑魅魍魎は跋扈してる。それでも俺ら人間って生き物は、最悪な状況に直面したとしても、その都度、自分がベストと思う道を自ら選択しなくてはならないんだ。
 一晩寝ても、何か釈然としない気持ちが残っていたので、朝一でサトシに電話する。ツーツーずっと留守電のまま出そうにない。次はメール。返事を待ってると、携帯がなる。メールだ。
“お前はどうするか俺には見当もつかないけど、俺は次の夢を見つける。とりあえず、俺も実家に帰るつもりだ。今まで楽しかった。ありがとう。昨日の夜のことは忘れない。昨日言ったことは俺の本心だ。じゃあ、元気で。これが俺の最後の言葉だ。もう連絡しないでくれ。頼む。俺もしないから”
このメールを読んで俺は、率直にあいつらしいなと思った。見た目は派手なのに、根は生真面目というか、本とに素晴らしくバカ正直な奴。俺、そういうの嫌いじゃないから、恨む気にもなれない。俺は隣が薄壁一枚のボロアパートだから、声を殺す為に枕に顔を埋め一人すすり泣いた。夢の終焉。みんないい奴ばかりだった。でも今日で俺はまた一人ぼっち。俺だって本当はそんなに強くない。心はいつ折れてもおかしくない。もう本当は折れていて、気付いてないだけかもしれない。俺ってマジ鈍感だし。でもそんな自分の弱さを認められれば、他人も許せるようになるかもしれない。分かったよ。サトシ……
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